キーマンインタビュー
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大阪国際経済振興中心上海代表処
首席代表(所長) 的場 正信 氏 2024年4月号
そして来たる大阪・関西万博
中国から大阪を盛り上げる
大阪への企業誘致や観光プロモーション、友好交流などをメインに活動している「大阪国際経済振興中心上海代表処(大阪市上海事務所)」。2024年は大阪市と上海市の友好都市提携50周年、2025年には大阪・関西万博が控えているなど、中国国内での大阪PRの全指揮を任された首席代表である的場氏に話を伺った。
コロナ前の勢いを取り戻すべく
再び上海へ駐在し指揮を執る
大阪市は1996年に上海市に事務所を開設し、2013年には、それぞれで運営していた大阪府事務所と大阪市事務所の共同運営をスタートさせました。主な業務内容は、上海市をはじめとする中国の各都市との友好交流の窓口的役割をはじめ、大阪からの企業ミッション団の受け入れや展示会・見本市への出展サポート、中国市場の開拓支援などビジネス交流の促進のほか、大阪への企業誘致や観光客誘致など、大阪経済の活性化に向けて、中国各地でプロモーションを展開しています。
上海への駐在は3年ぶり2度目で、前回は2017年3月から2020年2月まで約3年間でした。前回の駐在時は、大阪へのインバウンドが大きく伸びた時期でしたが、新型コロナの流行により中国と大阪の人的往来も途絶え、残念なことに、これまで構築したネットワークやノウハウも失われてしまいました。そしてようやくコロナが明けて、この流行の前後を知っている私に再び白羽の矢が立ち、2023年3月より上海へ駐在となりました。
今回赴任するにあたり、新型コロナにより失ったものを、流行前の水準に戻すことを第一の目標に掲げてきました。そのためにできる限りさまざまなセミナーへの出席やイベントに出展したり、ネットワークの再構築や友好交流の再開に向けて取り組んだりしてきました。2023年は落ち込んでいたインバウンドの回復に向けて、旅行会社へのセールスコールや中国各地での観光プロモーションに力を入れていたこともあり、来阪外国人客数でいえば、ほぼコロナ前の水準に戻ってきました。そのため、今後は企業誘致などのビジネス関連に軸足を移していきたいと考えています。
今年は大阪市と上海市
友好都市提携50周年
古代の大阪湾に存在した港、難波津(なにわづ)は遣隋使や遣唐使の出航地として栄え、現代でもコロナ前は関西国際空港が中国を結ぶ日本最大の空の玄関口であり、大阪は今も昔も中国とは深いつながりを持っています。
2024年は大阪市と上海市にとって特別な年です。大阪市と上海市は1974年に友好都市提携を行い、経済や文化、港湾、都市インフラなど、幅広い分野で交流を重ねてきました。これまで国同士の出来事は多々ありましたが、私たちの友好は途絶えることなく、今年50周年という大きな節目の年を迎えることができました。
上海事務所は大阪市唯一の海外事務所であり、これは私たちの強い友好関係を象徴していると言っても過言ではありません。過去の記録を見てみると、友好都市提携をするにあたっては大阪市と上海市は環境的にも文化的にも似ている点が多かったことや、昔から中国との結びつきが深かったこともあり、大阪の関係各界から友好都市提携の強い要望があったようです。
嬉しいことに、中国人の方にとって大阪は非常に人気を博している場所で、コロナ前は来阪外国人旅行者の約45%が中国からの旅行者、本市が関わった大阪に進出した中国企業の割合も全体の約4割を占め、今後も中国が大阪経済に果たす役割は大きいと考えています。
前回の駐在時にも感じましたが、中国はやはり仕事にスピード感がありますね。日本はすべて決めてから動き出し、中国は走りながら仕事を進めているイメージです。そのためかイベント当日でもスケジュールが変わることや、予告なく突然登壇を求められることがしばしば見られます。観光関係のイベントに大阪市ブースを出展した際に、突然ステージで大阪のPRをするように言われたことがあります。何の資料も用意していなかったですが、これまでに培った知識と、大阪に育ててもらったノリでなんとか切り抜けたのは、今となってはいい思い出であり、貴重な経験ですね。
2025年には大阪・関西万博が開催
さて、上海市との友好都市提携50周年を迎えた翌年には、大阪のベイエリアにある人工島、夢洲(ゆめしま)で大阪・関西万博が開催されます。テーマは『いのち輝く未来社会のデザイン』。「いのち」をテーマに掲げる万博として、世界がひとつの「場」に集う機会となります。コンセプトは「未来社会の実験場」で、万博会場を未来社会のショーケースに見立て、次世代モビリティやライフサイエンス、カーボンニュートラルなどの分野で、先進的な技術やシステムを取り入れ、未来社会の一端をお示しできればと考えています。開催期間は2025年4月13日~10月13日、184日間です。すでにチケット販売もされていますので、ぜひ大阪・関西万博へお越しください。
こうしたビックイベントが続きますが、一過性のイベントに終わらせるのではなく、これらを好機と捉え、大阪の都市魅力やビジネス環境の発信、両国との交流をさらに拡大させたいと考えています。
また、大阪の良さを伝えるのみならず、友好都市である上海の魅力も伝えていきたいです。ご存知のとおり、日本での中国の印象はあまり良いものではありません。ですが、実際に上海に来てみると、先進的で非常に住みやすい魅力的な街でした。百聞は一見に如かずであり、大阪からどんどん上海に来てもらい、自動運転タクシーやライドシェア、デリバリーなどを実際に見て、体験してほしいですね。上海に来た出張者は、みんな口を揃えて「中国のイメージが変わった」「上海が好きになった」と言って日本へ帰っていきます。こうして上海を好きになってもらえるのは、私にとっても喜ばしいことです。上海の良さを大阪に発信し、上海ファンを増やすことも大きなミッションだと思うので、今後も互いの都市の良さを伝えていきたいです。
上海で仕事をするうえで現地でのネットワークは欠かせません。これまで無事にやってこれたのも、現地スタッフをはじめ、周りの皆さんの協力があったからこそだと思っています。今後もこのネットワークを大切に、両市の交流促進のため尽力していきます!
大阪への誘客、企業誘致など、大阪へ人・モノ・投資を呼び込むため、セミナーやイベント、展示会など、あらゆる機会を捉えて中国各地でプロモーションを展開しています
PROFILE
プロフィールMasanobu Matoba
1970年生まれ、大阪府大阪市出身、同志社大学法学部卒業。1996年に大阪市入庁後、東京事務所や政策企画室報道担当などを経て、2017年3月から2020年2月まで上海事務所長として上海に駐在した。帰国後は経済戦略局国際博覧会推進室、大阪府都市魅力創造局を経て、2023年3月から再び駐在し、現職となる。
学生時代に『恐るべき空白』を読んで以来、オーストラリア大陸の陸路縦断が夢でした。昨年末から年始にかけて、長距離バスでアデレードからダーウィンまで42時間かけて縦断し、夢が実現しました。オーストラリアで見た初日の出は、一生忘れられません。
20代にホノルルマラソンしか走ったことがなかったのですが、2019年に上海駐在の記念として上海マラソンに参加しました。昨年には大阪マラソンを完走しましたが、タイムは「参加することに意義がある」程度です。
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