キーマンインタビュー
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在上海日本国総領事館
総領事・磯俣 秋男氏
一つ一つ具体的な形で
協力・交流支援を推進
今年1月に上海に着任された磯俣総領事。北京での留学や勤務経験もお持ちで、この度は18年ぶりの中国での勤務とのこと。上海と周辺4省を管轄される総領事としての意気込みを伺った。
18年ぶりとなる中国での勤務
私が外務省へ入省したのが1985年で、1986年から2年間、外務省派遣の研修で北京大学の歴史学部へ留学しました。もともと中国に強い関心があったわけではありませんでしたが、中国で学ぶ中で中国に対する関心もどんどん強くなっていきました。その後、さらにアメリカで1年間研修し、日本へ戻って10年間ほど勤務をし、それから1999年から2年間、北京にある日本大使館で勤務をしました。その後は中国で勤務する機会がなかったのですが、今回18年ぶりに中国での勤務となりました。
在留邦人の安全確保と日本企業支援
総領事館の非常に重要な仕事として、在留邦人の安全確保、管轄区域で活動されている日本企業の支援が挙げられます。治安や安全に関わる様々な情報を総領事館のホームページにて掲載しているほか、在留届を提出頂いている方にはEメールを通じて随時情報を提供しています。それから「在留邦人安全対策マニュアル」というものを制作し、こちらも総領事館でお配りしていますのでご活用ください。特に安全確保の観点から在留届の重要性について強調させて頂きたいのですが、日本のパスポートを持っておられる方で国外に3カ月以上滞在する際は、在留届を現地の大使館や総領事館に提出して頂くことが法律により定められています。これは非常に重要なものでして、何か大きな事件や事故があった場合に、総領事館から在留邦人の方へご連絡をして安否の確認をさせて頂くことがありますが、在留届をご提出頂けていないと連絡の取りようがありません。そういった意味でも是非ともご提出頂けるようお願いをしたいと思います。総領事館、あるいは外務省のホームページからオンラインにて提出できますので、引越しやご帰国の際の変更届・帰国届と併せまして、是非ともご協力頂けますと助かります。
また、日本企業の支援に関しましては、食品やお酒を含む日本の産品・製品、技術、サービスなどのPR活動の支援をしたり、日本企業がビジネス展開上、何かお困りの具体的な問題がありましたら、お話を伺った上で、関係当局に我々の方から改善の要望を伝えることもしています。最近では例えば、都市計画の新たな策定や変更に伴って工場の移転を求められたり、環境規制の強化ということで一定期間減産するようになどといった急な指示が現地の当局からあった場合に、それに対する企業の要望をお伝えするといったケースも増えています。個別に当局に伝える場合もあれば、私が地方へ出張して、地方の指導者と会見をする際に伝えるということもあります。そうした企業の方々の相談に対して、支援活動の提供をさせて頂いた件数は昨年度には640件ほどに上ります。
ビジネス環境全般を改善するための取り組みの一つとして、上海日本商工クラブとJETRO事務所、総領事館の3つの組織が一緒になって、提言をとりまとめたものを建議書という形で上海市当局に提出するという活動も行っています。そうしたことも含め、総領事館としては出来る限り日本企業が華東地域でビジネスを展開しやすい環境を作ることで日本からの投資を促進し、日中の経済交流を一層支援していきたいと思っています。
昨今は日中関係が全般的に非常に良い状況となってきています。つい最近でも、4月初めには日中イノベーション協力対話が北京にて日中政府間で行われたほか、4月中旬には日中ハイレベル経済対話という会議も行われ、日本から外務大臣含めて6名の閣僚が北京を訪れて、中国側のカウンターパートの大臣と経済対話を行っています。そういった色々な前向きな動きがある中でさらに日中経済交流が発展していくということを強く望んでいますし、総領事館としても具体的な協力事業を支援するということを是非とも行っていきたいと思っています。
また、今年1月から、中国の大学生向けのビザをを含め、更なるビザ緩和の措置を導入しています。昨年は838万人もの中国人が日本を訪れましたが、中国人の日本訪問に対しても引き続き支援していきます。また、今年は日中青少年交流推進年でもありますが、日本からもより多くの方に中国へ来て頂きたいと思っています。日本から修学旅行などで中国へ来られる学生さんに対し、例えば総領事館にお越し頂いて中国や上海の事情を簡単に説明させて頂くということもできますので、総領事館としてもお手伝いをさせて頂きたいと思っています。
協力や交流が重要だと口で語るのは簡単ですが、それを実際に一つ一つ具体的な形で進めていきたいと思っています。例えば、3月には、上海の交通大学と日本総領事館が共催で「イノベーションと共創」というテーマでシンポジウムを開催しまして、日本や中国のイノベーション関連の企業にも参加頂き、具体的な議論をしました。そのような企業同士のネットワーキング作りにご協力させて頂くことも可能です。それから文化面では、2月に「DISH//」という日本の若手ダンスロックバンドの方々が上海へ来られた際に、総領事館主催で中国の若者とのワークショップを開催しました。それから3月に「コブクロ」のお二人が来られた時には、日本語を勉強している中国人の学生を中心に総領事館の講堂に招待し、お二人との交流とミニコンサートを開催させて頂き、大変反響がありました。今後もあらゆる機会を捉えて、交流や協力を進めていきたいと思っています。
18年ぶりに中国へ赴任し、町がとても綺麗になったと感じています。それから聞いてはいましたが実際に体験してみて非常に驚いているのがモバイルペイメントです。携帯電話を通じてありとあらゆる支払いを行えるというのは非常に新しい体験です。
PROFILE
在上海日本国総領事館
総領事磯俣 秋男氏1962年愛知県名古屋市生まれ。1985年東京外国語大学卒業。同年外務省入省。1989年〜1999年 外務本省においてアジア局、条約局等で勤務。1999年〜2001年まで在中国日本大使館で勤務。その後、外務省沖縄事務所副所長、内閣法制局参事官を務めた他、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部、在インド日本大使館、在カナダ日本大使館等で勤務。
多くの本を所有しているため、今や家では、電子書籍以外は、処分した冊数に応じた新規購入しか認められていません。司馬遼太郎の歴史小説や随筆も愛読書で、最近は「空海の風景」を読みました。
趣味はダイビング
インドでのヨガ体験
インド在勤中にヨガを習っていました。身体と心の調和と統一を図るところは、かつて中国で習った太極拳とも相通ずるところがあり、時間に余裕ができれば、太極拳や気功を再度練習したいと思っています。
在上海日本国総領事館
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