キーマンインタビュー
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獅王(上海)創新科技有限公司
董事・総経理奥田 靖 氏 2024年3月号
良い習慣づくりと社会活動で
中国の人々の毎日に貢献する
オーラルケア用品の分野で圧倒的なブランド力を誇る、日本屈指の生活用品メーカー「ライオン株式会社」。「獅王(上海)創新科技有限公司」は、ここ中国でスピーディーに競争優位性の高い製品を開発することを目的として、2023年5月に設立された。2024年1月に董事・総経理に就任し、立ち上げから今後の事業推進までを担う奥田氏に話を伺った。
オーラルケアで先頭を走るライオン
アジア事業拡大に伴い上海に新拠点
東京・神田から始まったライオン株式会社は、日本初の子ども向けハミガキや日本初の植物性家庭用洗濯石けんなど、多くの画期的な商品を世に出してきました。皆様よりご支持いただき、今年で創業133年目を迎えています。現在は緑のたてがみの黄色いライオンのキャラクターの会社として親しまれ、オーラルケアやビューティケア、薬品、ペット用品など、幅広い分野の生活に役立つ商品を提供し、皆様の毎日に貢献しています。
海外事業はアジアを中心に展開しており、いくつかの国においては市場ポテンシャルの高い商品を有しています。
中国では1988年に「獅王日用化工(青島)有限公司(以下、青島ライオン)」を設立して以降、ハブラシやハミガキなどの日用品を販売しています。中国のオーラルケア市場は社会発展とともに成長を続けており、グループとして中国市場への更なる展開を模索していました。ライオン株式会社の100%出資で2023年に設立した「獅王(上海)創新科技有限公司(以下、ライオン上海研究所)」は、青島ライオンの製品開発及び技術研究部門を切り出した子会社です。圧倒的なスピード感で動く中国市場に対応すべく、中国における製品開発力の強化や製品開発のスピードアップを目的としています。
立ち上げから現場指揮まで
最重要拠点での目標は高く
ライオン株式会社に入社して以来、主にハブラシの製品開発に従事しています。もしかしたら皆様が使っているライオンのハブラシは、私が携わったハブラシかもしれませんね。
上海には今年1月に着任しました。海外生活自体が初めてで、現地スタッフや上海でビジネスをされる先輩方にご教授いただきながら、ここでの生活を楽しみ、業務を円滑に進められるよう尽力して参ります。
ライオン株式会社がライオン上海研究所を設立すると決めてから、ずっと立ち上げに携わってきました。ただ、私は会社を立ち上げた経験はありませんし、関連知識も持ち合わせていませんでしたので、まず何から始めたらいいのか分からない状況からのスタートでした。また研究部門での通常業務と立ち上げ業務を両立させなくてはならず、今思い返してみても、なかなかに大変な労力を要した期間でした。他の立ち上げメンバーとの協力をはじめ、時には外部の方ともご相談をしながら、やっとのことで立ち上げに至りました。
2030年までにライオン株式会社がイメージする業績は連結売上高6,000億円水準で、この業績規模はアジアトップ10入りすることを目指しています。そのうち海外事業は約50%を達成する想定となっています。つまり、この想定の中心となるのが中国事業であり、グループとして中国での成功は、弊社の将来に必要不可欠なのです。
また、中国は世界中の企業が進出する国であり、日本以上に数多くの企業と競争を余儀なくされます。また、中国の方は新しい物を好み、移り変わりが非常に早い傾向にあります。市場調査をしている間にも、新商品が次々と市場に出てきます。こうした状況に臆することなく、成功を収めるためには他社に先駆けた競争優位性の高い製品開発が求められます。青島ライオン内部にあった部門を会社として自立させたライオン上海研究所は、より多くの情報収集や企業連携をしながら、これまで以上のスピード感で動けるようになり、現地のニーズにあった商品やサービスの開発に挑戦できます。加えて、ライオンブランドをしっかりと育て、ここでのブランドイメージの構築も着実なものにしたいと考えています。
まだ事業を推進して間もなく、多くの方とお話をしていくなかでの気づきなのですが、中国では、日本やほかの国以上に機能以外の価値として、デザインのインパクトや色使いなどの感性に訴える部分を非常に大切にしているように感じます。中国ならではの感性や文化などを知らないと設計ができない部分です。この視点を持ち合わせる現地スタッフの意見をしっかりヒアリングしながら、ものづくりをしなくてはいけないと思います。
ライオンが目指すまだ見ぬ価値の創造
ライオングループ全体で社会貢献活動に力を注いでいます。ここ数年は新型コロナの影響で活動自粛を余儀なくされていましたが、昨年から再開しています。これらは青島ライオンの取組みになりますが、例えば、上海や北京、広州などのオフィスやモール計45カ所で昼歯磨きの啓発活動をはじめ、上海市内にある歯科医院で子どもを対象とした正しい歯磨き習慣の啓発、幼稚園と保育園の計8都市280カ所で子どもを対象に正しい手洗い習慣の啓発を行いました。こうした活動は今後も継続し、より良い習慣づくりで中国の人々の毎日に貢献していきます。
日本では多くの方に広く認知されている我々ですが、中国の市場の変化は非常に早く、日本で成功したやり方を踏襲するのでは、ほかのグローバル企業や現地企業に到底太刀打ちできません。今後、中国の方に求められるものは新しい価値であり、5年後や10年後に続くような、まだ見えない価値をスピーディー に創造することです。そして、ここ中国の市場を牽引する研究集団になりたいと考えています。
2030年の売上目標は1,000億円と、緊張感のある数字ですが、その分やりがいも感じています。まだまだ始まったばかりですが、チャレンジャーとして新天地での研究に精一杯取り組む所存です。
自分のモットーは「迅速果断」です。まだまだ実行できているとは言い切れないですが、中国でビジネスをする上では、これを実現しなければいけないと考えています。覚悟をもって、素晴らしいメンバーと共に新価値創造に取り組んでいきます!
24年2月の年会では青島ライオンを含む総勢約200名が集まり、さまざまなイベントや抽選会で盛り上がりました。我々研究だけでなく、さまざまな部門の方々と交流する場になりました
PROFILE
プロフィールYasushi Okuda
1974年生まれ、大阪府出身。大阪府立大学院応用生命科学専攻、卒業後にライオン株式会社に入社。オーラルケア研究所、明石工場、グローバル開発センターと一貫してハブラシや用具開発、生産技術に従事し、グループマネージャーとして日本をはじめ、各国の製品開発を担う。2024年1月に上海へ赴任し、獅王(上海)創新科技有限公司の董事兼総経理に就任、現在に至る。
高校時代にスポーツの最高峰はアメフトと感じ、大学ではアメフト部に入部。身体の線が太くなく、身体づくりは苦労しました。途中怪我もあり挫折もありましたが、それを乗り越えたことも今の自分の礎となっています。
ユニクロの感動スーツには本当に感動しました。しなやかな伸縮性とドライ機能、セミオーダーも可能、そして何より価格に驚かされます。我々もまさにこういう感動を生活者の皆様にお届けしていきたいですね。
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