今号では、香港でパートタイム社員を雇用する際に注意すべき事項をご案内します。

通称「418」（継続的契約）か否か

　まずは雇用期間と労働時間の確認が必要です。通称「418」と呼ばれる「継続的契約＝Continuous Contract」として雇用する場合には、フルタイム・パートタイム・アルバイトなど呼称の如何を問わず、雇用期間の長さに応じて雇用条例（日本の労働基準法に相当）で規定されている各種法定権利を付与する必要があるためです。「継続的契約」とは、連続して4週間以上、かつ、1週間に18時間以上の労働を行う労働者との雇用契約を指します。

雇用条例に基づき付与する法定権利

　パートタイム社員として雇用する場合でも、前述の「継続的契約」の条件を満たす労働者に付与すべき法定権利には次のようなものがあります。

⑴休息日（７日ごとに少なくとも1日）／
勤続4週以上の労働者に対して付与。

⑵産前産後休暇／休暇の開始日直前に、勤続4週以上である場合は無給の休暇を付与。勤続40週以上の場合は有給の休暇を付与。

⑶育児休暇（父親向け）：休暇の開始日以前に、勤続4週以上である場合は無給 の休暇を付与。勤続40週以上の場合は有給の休暇を付与。

⑷傷病手当／傷病日は最初の12カ月間は1カ月ごとに2日ずつ、その後は1カ月ごとに4日ずつ、最高120日まで累積。怪我や病気により連続4日以上休業することを有効な傷病休暇証明書により証明された場合に付与。

⑸年次有給休暇／勤続12カ月以上の労働者は取得可能。※なお、勤続3カ月以上で雇用契約解除時に権利日数の買上げ義務が生じます。

⑹解雇補償金／勤続2年以上の労働者が余剰人員整理を理由に解雇される場合に支給。

⑺長期服務金／勤続5年以上の労働者が余剰人員整理以外の理由で解雇される場合に支給。

　なお、継続的契約でなくても付与すべき法定権利には法定休日があります。

　法定休日／年間12日あります。ただし、継続的契約の条件を満たしていない労働者の場合、法定休日は取得できますが該当日は無給です。
　　
　会社任意で決定可能な労働条件や法定外の福利厚生については、パートタイムかフルタイムかによって条件を変えて雇用契約を締結することが一般的といえます。（例／試用期間の長さ・賃金構成・休暇日数・雇用契約解除に必要な予告期間の長さ、など）

その他条例に基づき付与する法定権利

　パートタイム社員として雇用する場合でも、次の条例にご留意ください。

　MPF（強制退職積立金）条例／満18歳以上65歳未満の労働者に対し、原則として雇用開始後60日経過するとMPF加入義務が生じます。

　労働者災害補償条例／労災保険への加入が必要です。

　最低賃金条例／2015年5月1日から時給32.5香港ドルに引き上げられています。

　その他、意外にご質問が多いのがビザステイタスについてです。香港パーマネントID保持者であれば問題ありませんが、外国籍労働者を雇用予定であれば、パートタイムか否かに関わらず、労働可能なビザステイタスか否かの確認が必須です。

　また、夏休み前になると、インターンシップ制度を通じた学生の雇用についてのご相談もいただきます。インターンシップでの学生の雇用については、学校側の規定・労働予定の業界・年齢などを確認する必要があるほか、最低賃金条例の適用免除などがあるため、個別にご相談ください。