キーマンインタビュー
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ブラザーチャイナ 兄弟(中国)商業有限公司
董事長 加藤 和利氏
地域に根ざした製品で勝負
2005年から、ちょうど10年という節目の年を迎えたブラザーチャイナ。今や日本以上の売上を誇るアジア地域で、顧客に選ばれ続けるための、同社ならではの秘策とは?
全体売上の約8割が、日本国外!
1908年にミシンの修理業として創業したブラザーグループですが、現在は家庭用ミシン事業は全体売上の7%程度。工業用ミシン・産業機器分野は約14%で、さらに、意外だと思われるかもしれませんが、通信カラオケなどのネットワーク・アンド・コンテンツ事業も約7%の売上を有し、日本国内で圧倒的なシェアを得ています。しかしやはり、全体売上の約70%という高い比率を占めているのが、「プリンティング・アンド・ソリューションズ」と呼ばれる、プリンターや複合機などの情報通信機器。そしてさらに、総売上のうち、日本国外の売上比率が約8割を占めるという点にも、ブラザーらしいグローバルマインドが顕著に表れています。創業当初より「輸入産業を、輸出産業に」を念頭に、修理業から部品製造、製品へと事業の変遷を経ながら、常に輸出を視野に入れてきた企業であり、海外進出も、1954年にアメリカに販売会社を設立した時からスタートしていますので、すでに60年以上の歴史を持っています。アメリカでは、経済成長期のSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)ブームも重なり、「ファックス1台で起業ができる」として、弊社の商品が非常に重宝されました。またヨーロッパでも、オリジナルブランドのレーザープリンターなど地域密着型の商材を武器に、長い期間を通じてディーラーの信頼を勝ち得てきたことで、欧米地域での知名度やシェアは、今でも高い水準を誇っています。
中国との関わりはミシン工場から
中国本土との関わりは1993年、世界の工場として注目を浴びていたこの地に、家庭用ミシンの生産拠点を据えるべく進出したことから始まります。台湾で製造した部品を香港経由で移送し、広東省・珠海の工場で加工するなどの工程を取っていました。それに少し遅れる形で商品販売にも乗り出しましたが、当時は駐在員事務所を通した活動に留まり、まだ本格的ではありませんでした。2004年、外資系企業に対する緩和策として、卸売法人の設立申請が可能となったことを受け、翌05年に「兄弟(中国)商業有限公司(ブラザーチャイナ)」を設立。念願であった中国市場へのアプローチを正式に開始。成長を遂げる中国における購買力の高まりを目の当たりにしながら、今年でちょうど10周年を迎えました。
固い信頼を積み重ねてきた10年間
競合も多い中国の情報通信機器分野において、いかにブラザーらしいビジネスモデルを定着させ成長していくか。この10年の取り組みとして特徴的なのが「ディーラー網の強化」です。我々の商品は〝説明型の商品〞で、例えば量販店に商品だけが置かれていたとしても、その魅力は伝わりません。機能の説明はもちろん、他商品との比較まで、詳しく説明できる〝人〞が必要。そこで重要となるのが、信頼できるディーラーの存在です。ブラザーチャイナでは、ひとつの省にひとつの一次代理店を置き、各省の代理店スタッフが、ブラザー社員と同じレベルの知識と情熱で、お客様や二次代理店に直接商品を売り込む「省代理制度」を採用。これは、人と人との関係性を大切にする中国人ならではの「信頼できる人の勧めで購買に動く」という、クチコミによる販売促進の応用型。つまり、ディーラーとお客様、そして弊社とディーラーとの信頼が正しく築かれているからこそ、成り立つモデルでもあるのです。この点において、現・総経理の尹(イン)の存在は大きいです。彼は中国人でありながら、ブラザー本社入社23年、わずか数名で中国に駐在員事務所を立ち上げた当初からのメンバーで、以来、彼を中心とし、弊社は中国人社会での関係作りに長年尽力してきました。10年間の積み重ねは、他が真似できない強固なもの。この信頼関係を糧に、今後も中国全土に販売網をしっかりと根付かせていきます。
中国人による、中国向けの商品を
中国での商品開発については、現状、細かい仕様の調整程度。弊社が欧米で展開しているように、現地向けの商品を1から作る段階には至っていません。今後、巨大な中国市場へのアプローチをより強化するためには「中国人による、中国向けの商品の開発」が急務。単発ではなく、次に受け継ぐプロセスを構築し、他国のスタッフからも信頼されるようなチームを作る必要があります。中国は、全拠点の中で最も従業員数が多い国です。この豊富な人材の中で、長期的なビジョンで企画開発ができる優秀なチームを育成すること、それこそが次の10年に向けた課題。そのためにも、販売会社として培ってきたマネジメント能力を活かしながら「省代理制度」を進化させ、よりお客様の要望に耳を傾けた、地域密着型の商品の開発を目指します。企画から販売までグループの力を結集し、もう一段階上へ、そして売上を最大化していく。次に向けた挑戦は、まだ始まったばかりです。
7年におよぶ欧州での海外経験を持ち、また、日本本社時代にはコーポレートコミュニケーション部部長を務めた加藤氏は、人材教育の経験も豊富。現在、社員との双方向コミュニケーションを目指し、一人ひとりと1対1の懇談会を設けるなど手腕を発揮している
PROFILE
ブラザーチャイナ
兄弟(中国)商業有限公司 董事長
加藤 和利氏
1963年愛知県生まれ。名古屋大学経済学部卒業後、85年にブラザー工業株式会社入社。計画管理、事業企画、営業企画などを担当後、98年よりBrother International Europe Ltd.欧州統括会社へ出向。99年にBrother Holding(Europe)Ltd.取締役就任。その後、日本本社にてコーポレートコミュニケーション部部長などを経て、2014年4月に兄弟(中国)商業有限公司董事長として上海へ
加藤さんを知る3つのキーワード
長い間大切にしている言葉
社会人になってから読んだ相田みつをの詩集の中で、ひと際感銘を受けたフレーズ。以降、立場や気持ちの変化はあっても、この言葉は変わらず大切にしている。「人への感謝を忘れなければ、あとは自分次第。自分が幸せだと胸を張れるかどうかが判断基準」
CSR活動に積極的に参加
環境スローガン「Brother Earth」のもと環境・CSR活動として取り組む「内モンゴル砂漠化防止プロジェクト」。加藤氏も昨年・今年と現地を訪れ、植樹や井戸の掘削に参加。最近はディーラーやビジネスパートナーも参加するなど活動が広がりを見せている
10周年記念式典に登壇
設立10周年を記念し、8月18日に上海で盛大に執り行われた式典。当日は小池利和代表取締役社長(写真右)も駆けつけ、ブラザーチャイナに対し、記念品の贈呈などを行なった。加藤氏は日本語と中国語を織り交ぜたスピーチを披露し歓声を受けた
婁山関路533号
金虹橋国際中心Ⅱ座20階
3133-2101
www.brother.cn
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