キーマンインタビュー
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上海菱華倉儲服務有限公司
董事・総経理 山下 康明 氏 2024年6月号
経験とノウハウを活用し
世界をつなぐ物流サービス
誕生から今年で137年を迎えた三菱倉庫株式会社。1996年に「上海菱華倉儲服務有限公司」を設立して以降、日系企業を中心に物流面をサポートしてきた。同社サービスの中核のひとつである「工場内物流サービス」を中心に、董事総経理である山下氏にお話を伺った。
中国・東南アジアを中心に事業拡大
「三菱倉庫株式会社」の前身企業が誕生したのは1887年、明治20年のことです。この時代の日本は、近代化を進めるべく西洋の文化や技術や制度を取り入れることに注力し、洋食や洋服の普及、義務教育が始まるなど、現在の私たちに大きな影響を与えています。また、世界への貿易が開かれたことで、倉庫事業や港湾運送事業が盛んになり、それに乗じて弊社の事業も徐々に拡大していきました。倉庫、港湾運送、国際輸送、不動産の事業領域をグローバルに拡大し、社会とお客様への貢献を通じて、価値創造の歴史を紡いできました。現在は、IT武装の先端倉庫業をコアとするロジスティクス事業をワールドワイドに展開、調達・生産・販売の物流サービスをワンストップで提供する総合物流業者としてお客様の事業成長に貢献しています。
海外には現在、世界21カ国に拠点を有します。三菱倉庫グループ全体として今後も海外事業を更に発展させることに注力する方針であり、世界規模で物流ネットワークを構築し、お客様のサプライチェーンマネジメントの最適化に貢献することを目指しています。
特に東南アジアの市場が秘める可能性に着目し、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、シンガポールなどのASEAN諸国をターゲットに事業展開し、着実に経済成長を遂げているこの東南アジアにおいて事業基盤を強化する方針です。また、中国についても、経済規模や人口の多さはやはり魅力的であり、東南アジアと同等以上に、中国も重要な海外拠点と捉えています。
すでに物流拠点を構築している華東(上海)、華北(北京)、華南(広州)、内陸(成都、武漢)を核として、中国国内の物流ネットワークを拡大し、より多くのお客様のサプライチェーン構築のお手伝いをしたいと考えています。
拡大する「工場内物流サービス」
中国現地法人「上海菱華倉儲服務有限公司」は1996年4月に設立されました。日系企業様の中国ビジネス参入に伴う国内外サプライチェーンをお支えすべく中国に進出し、現在もお取引しているお客様の多くは日系企業様です。
保管・配送の物流サービスでは、中国全土で約30万㎡超の倉庫を有し、お客様の貨物をお預かりしています。常温倉庫や、精密機械、半導体、医薬品などの商品を温度管理下でお取扱いする定温倉庫もあります。さらに、倉庫から出庫される商品が市場に流通するまでに、ラベリング、説明書の同梱、詰め替え、組み立て、梱包作業など多種多様な流通加工サービスも行っています。最近では、自動搬送ロボット、仕分けロボットなどの先端技術と現場ノウハウを融合し、倉庫内作業の省力化、効率化を進めています。
あらゆる業種にもいえることですが、中国は世界中から企業が集まる、競争が激しい市場です。弊社のような日系物流企業が中国の物流企業と競争するためには、価格面だけでは太刀打ちできません。いかに価格以外の面でもお客様の企業価値向上に貢献することができるかが鍵だと感じています。
そのような環境下、中国国内の自社倉庫における保管・配送物流サービスに留まらず、「工場内物流サービス」も積極的に手掛けており、今では中核サービスのひとつとなっています。この「工場内物流サービス」では、作業者、物流機器をお客様工場に持ち込んで工場内の物流運営を一手に任せていただいています。物流の専門性がより求められるようになった昨今、工場内で行う調達から製造販売の物流をアウトソーシングして、人やお金をコアビジネスに有効活用したいと望まれるお客様が近年ますます増加しており、様々な分野の工場様に活用いただいています。任される以上は、物流のプロフェッショナルとしての責任を伴いますが、弊社が137年の歴史のなかで得た物流の経験とノウハウを活かして、作業品質の向上や物流の効率化に努めており、物流会社としての腕の見せどころだと考えています。「工場内物流サービス」は、上海以外の中国各地でも拡大しており、今後も注力する所存です。
また、同じ三菱倉庫グループ会社で国際輸送事業を手掛ける「上海菱運国際貨運有限公司」と協同して、国内・海外のロジスティクスを一体的に支援できる総合物流業者としてサービスを提供しています。
課題を克服し、さらなるサービスを提供
先述したように、現在は日系企業様と多くお取引していますが、国籍問わず、より多くのお客様の物流課題解決のお手伝いもできるようにならなければと考えています。そのための自社の成長とそこへの道筋を作ることが今後の課題です。スピーディーに、広範囲にお客様ニーズにお応えしていくためには、すべて自社リソースで賄うことには限界があります。最近、三菱倉庫では、日本、アメリカ、EU、東南アジアなどにおいて現地企業パートナーとの資本業務提携によるサービス力強化を進めています。これによりお客様のサプライチェーン全体を担える体制構築に取り組んでいます。中国でも同様に、積極的なパートナーシップの拡大が有効だと考えています。こうした課題を克服しながら、これからも中国においてより多くのお客様の物流課題解決に貢献し、お客様から選ばれ続ける企業となることを目指していきます。
中国に来て4年目を迎えました。これまで中国人スタッフの協力なくしては公私ともにうまく行かなかったと実感しております。これからも社内の合言葉“加油菱華”の下、団結して前に進みたいと思います
地下鉄2号線張江高科駅近くにある本社倉庫。1996年設立以来、定温庫の設置など機能を拡充して来ました。今後も、太陽光発電・EVトラックの導入など環境対応にも注力して更なる進化を目指します
PROFILE
プロフィールYasuaki Yamashita
1975年生まれ、千葉県千葉市出身。早稲田大学商学部を卒業後、三菱倉庫株式会社へ1998年に入社。倉庫管理、運送子会社配属などを経て国内で多くの経験を積んだ後、2021年1月より中国現地法人厦門支店へ。2024年より上海へ赴任し、現在に至る。
厦門滞在時はソフトボールチーム「ピンクドルフィンズ」に在籍。平均年齢は50代以上で私でも若手の部類に入るぐらいでしたが、皆さんパワフルで元気な方ばかりで、逆に活力を与えてもらっておりました。
ルアー(疑似餌)を使用した釣りが趣味のひとつです。中国人釣り愛好者の間でも、釣具は日本メーカー製品が評判で淘宝などで購入できます。中国で集めた日本メーカーのルアーを駆使して淡水魚(ティラピアやナマズなど)を釣っています。