キーマンインタビュー
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MILLION CLUB 上海紐約克服装銷售有限公司
総経理 佐藤 康幸氏
中国発の世界ブランドを作る
上海発のオーダーメイドスーツショップ「ミリオンクラブ」。在住邦人の愛用者も多い同店の歩みと、今年始まった新しい展開について、新総経理の佐藤氏に伺った
時を越えて受け継がれる品質本位
弊社・株式会社ダイドーリミテッドは、毛織物・既製服の製造販売、「ニューヨーカー」を主力ブランドとするアパレル、そして、複合商業施設を運営する企業であります。
ダイドーリミテッドの基礎は、1879年に一人の女性が手織り機で作った生地の販売から始まりました。営業方針は、品質本位。その並々ならぬこだわりが評判となり、当時、他社製品と比べて一反あたり5銭ほど高値で取引されたと言います。その後、徐々に販路を全国へと拡げ、1964年には、東京オリンピックの開会式で日本選手団が着用する公式ユニフォームとして生地が採用されるまでに。さらに同年、株式会社ニューヨーカーを設立し、本格的に既製服事業にも進出を果たしました。
大きな飛躍は93年、オーストラリアに1600万平米の「ダイドー牧場」を開設したことです。最高級の羊毛が収穫できる牧場を自ら経営することで、紡績から繊布、染色整理、縫製、小売まで、一貫して自社管理するクオリティーメーカーとしての体制が確立しました。言わば、牧場から売り場までが“一本の糸”で繋がった状態。これを実現しているメーカーは、現在でも1、2社しかないと言えます。また、ダイドー牧場で産出される素材は、オーストラリアの品評会でも上位に列される上質なもの。創業時からのコンセプトである「品質本位」は、時を越え、国を越えても、弊社の根幹として脈々と受け継がれています。
中国・上海との関わりは工場から
93年の牧場開設と同じ頃、一方で中国との関わりが始まりました。同年12月、日中合弁により「上海毛紡織時装有限公司(現・独資の大同利美特(上海)有限公司)」を設立し、96年には上海郊外の松江に、羊毛から毛織物・既製服までを手掛ける大規模な一環製造工場を開業しました。日本各地に点在していた生産拠点を一箇所に集約し、国外へ移管するという一大事業。それはつまり、ダイドーのDNAを移管するということです。当然のことながら、並大抵の苦労ではありませんでした。機械の設置から、色のブレの細かな調整まで、40~50人もの日本の技術者が中国に常駐し、品質の安定に尽力。その結果、中国でも日本と同じクオリティーを実現することに成功したのです。工場設立から13年目となる2003年には「上海ニューヨーカー服装販売有限公司」を設立し、既製服ブランド「ダイドー・バイ・ニューヨーカー」の小売事業を中国でスタート。そして2010年、まさに満を持して「ミリオンクラブ」の第1号店が、上海にオープンしました。
ミリオンクラブは、技術の結集!
ミリオンクラブの誕生は、我々のマニュファクチャラー(製造会社)としての技術の結集と言えます。自社牧場で生産した原料を用いて自らの工場で紡織・織布・染色整理した生地を、お客様のご要望をお聞きし縫製、世界でたった一着に仕立てる。創業当時より培ってきた技術を総動員し、すべての工程が“一本の糸”で美しく繋がった業態だからこそ叶う高品質です。実は、ミリオンクラブの経営は、1号店のオープン時から昨年末まで「工場管轄」としていました。それは、どういった柄や風合いの製品が好まれるのか、工場という“作り手”の立場で、直接肌で感じたかったから。工場発の“ものづくりブランド”として成長した4年間は、マニュファクチャラーの腕が試される有意義な期間でした。
そして今年1月より、次なるステージが始まりました。ミリオンクラブを「工場管轄」から、新たに「販売会社管轄」とし、よりお客様に近い目線で経営していくことを決意。私自身も、この新展開に合わせた形で総経理に就任しましたが、弊社ならではの「製販一体体制」を強みに、積極的に中国全土へ展開していくことをミッションと捉えています。その足がかりとして、今年5月に、中国では上海以外で初となる蘇州店をオープン。今後は展開スピードを上げながらも、質とサービスのクオリティーを第一に考える「品質本位」を変わらぬスピリットとし、真摯に歩んでいく覚悟です。
お客様との“長い糸”を大切に紡ぐ
ミリオンクラブのスーツの特徴は、「末永くお付き合いしていただける一着」。一見すると高価と思われがちですが、長年着ても型崩れしない上質なスーツは、結果的に値段以上の役割を果たします。フィロソフィーは「The Best Quality For You」。お客様の中で、品質でもサービスでも一番のブランドに。またワードローブの中でも、一番のお気に入りであり続けたい。ミリオンクラブのスーツを末永く愛し着てくださることは、自社牧場から始まる“長い糸”が、紡がれ、繋がっていく様に似ています。お客様とのご縁という“糸”を一層大切にしながら販路を拡げ、中国発信の世界ブランドを作ること、それが私たちの目標です。
ミリオンクラブは現在、環球店・紅坊店・松江店・新世界大丸店の上海市内4店舗のほか、日本にも八重洲店など2店舗を構える。「日本展開は言わば“逆輸入”。目標とする“中国発信の世界ブランド”に少し近づいた」と話す
PROFILE
MILLION CLUB ミリオンクラブ
上海紐約克服装銷售有限公司 董事総経理
佐藤 康幸氏
1969年東京都生まれ。1993年「ものづくりの会社で働きたい」との思いから、株式会社ダイドーリミテッドに入社。婦人服の百貨店営業などを経て、2013年より「Puppy」ブランドの手芸糸販売・貿易業務を手掛ける大同利美特商貿(上海)有限公司の董事総経理を務める。2015年
より上海紐約克服装銷售有限公司の董事総経理も兼務。ミリオンクラブのショップ運営のほか、既製服ブランド「DAIDOH by NewYorker」を中国全土で展開
佐藤さんを知る3つのキーワード
まずは、気持ちで勝つこと!
ラグビーと野球をこよなく愛する佐藤さんの座右の銘は、高校ラグビーの名将・伏見工の山口良治元監督の言葉。「信じれば何事も実現できる。信じることの大切さを教えてくれた言葉。迷った時点で負け、ぶれずに信じることができれば、その時点で8割の勝利。気持ちで負けないようにしています」
幼少の頃からの不思議な縁
ダイドーリミテッドが手がける手編糸Puppy(パピー)。実は佐藤さんが幼少の頃、お母様がこの毛糸でセーターを編んでくれていたことが入社後に発覚。「少し高いけれど、品質を重視して子どものために選んだと聞き、感銘を受けました」
地元、東京・王子への熱き愛
生まれも育ちも、東京都北区の王子。「目立たない街だと思われがちですが、京都の伏見稲荷と並ぶとされる王子稲荷神社のほか、徳川吉宗によって植えられた飛鳥山の桜、日本で最初の洋紙工場など、注目スポット多数!」と、地元自慢は止まらない
上海纽约克服装销售有限公司
世紀大道100号上海環球金融中心2階(ミリオンクラブ環球店)
6877-6628
10:00~21:00
www.newyorker.co.jp
詳細は
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