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相続⑤ 税務調査
税務調査の傾向
平成25事務年度の日本の税務当局による相続税の税務調査は、海外資産関連の案件を重点的に調べている傾向があると言えます。相続税の税務調査件数は、対前年比で2.5%ほど減少しました。しかし、海外資産を相続したと想定される調査件数については、対前年比で約4%ほど上昇しています。このことからも日本の税務当局が海外資産の申告に注目していることがうかがえます。
税務調査件数
日本の税務当局が公表した「平成25事務年度における相続税の調査の状況について」によると、平成25事務年度の相続税調査件数は、1万1909件でした。このうち申告漏れなどが発覚した件数は、9809件でした。申告漏れ課税価格は3087億円で、調査1件あたりの申告漏れ課税価格は2592万円でした。追徴税額については、539億円で、重加算税を賦課されたケースは、1061件ありました。各年度の相続税調査件数を表にまとめましたのでご参照ください(図1参照)。
贈与税の調査
平成25事務年度の日本の税務当局による贈与税の税務調査件数は、3786件でした。このうち申告漏れなどが発覚した件数は、3424件でした。申告漏れ課税価格は216億円で、申告漏れ財産の内訳は、現金・預金等が約107億円、有価証券が約68億円、土地が約8億円などでした。
調査事例①
日本の税務当局は、被相続人Aに対して、生前より海外の金融機関から利子が支払われていることを把握していましたが、相続税の申告財産にその支払われた利子に見合う海外預金が含まれていませんでした。相続人B(妻)は、自ら海外のA名義預金の名義変更手続きを行い、この海外預金の存在を知りながら、この預金を除外して相続税の申告をしました。本件について、日本の税務当局による税務調査が行われ、上記事実が判明し、税務調査の結果、申告漏れ課税価格約600万円、追徴税額約240万円が課せられました。
調査事例②
日本の税務当局は、被相続人Cが生前に海外の金融機関に対して多額の送金をしていた事実を把握していました。しかし、相続税の申告には、その送金に見合った海外資産の申告がなかったため税務調査が行われました。当初相続人D(子)は、海外資産については知らない旨の回答をしていました。日本の税務当局は、海外の税務当局に対して租税条約等に基づく情報交換制度を利用して、Cが生前に海外の金融機関に多額の預金や有価証券を保有していた事実を突止めました。また、日本の税務当局は、DがC名義の預金口座を自分名義の口座に移す手続きを行っていたこと、その後にCが現地にてその口座から現金を引き出していたことを突止めました。この税務調査により、Dは海外資産の存在を知りながら、これらを相続税の申告から除外していたことが判明し、申告漏れ課税価格約1億5000万円、追徴税額約6600万円が課せられました。
日本の税金に関する問題及び対策は、正しい知識と総合的見地からの検討が必要です。いずれも実行なさる前に信頼できる税理士などの専門家にお問い合わせください。
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