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vol178:多額の国外送金への移転価格調査の強化
現在中国各地で多額の国外送金に対する集中調査が実施されています。その発端となった通達(税総弁発(2014)146号)の内容および現況を解説します。
国家税務総局が中国各地の国家と地方税務局に向け、国外への役務費用および技術使用料の送金に絡む移転価格調査を実施するよう、本年7月付で指示を出しています。主な調査内容としては、2004年から13年までの国外役務費用および技術使用料、特に香港、シンガポールなどの低税率国・地域への支払を調査対象とし、実態の有無、水準の妥当性について、重点的に調査が行われます。移転価格調査の一環であり、国外支払でも第三者への支払は特に問題視されず、グループ企業への支払を対象としていると考えてよいでしょう。
注意すべき取引
・親会社が行う、在中国子会社・関連会社に対する経営、財務、人事面での計画策定、管理監督活動に対する活動の対価
親会社が株主の立場で行うべき活動、いわゆる株主活動にかかわる費用は、中国法人が負担する合理的な理由がないものとされます。上場企業が開示義務を負う連結財務諸表の作成に関する費用(本社経理部員の出張費など)は株主活動となると考えられます。一方、親会社が中国子会社の中国で求められる報告、提出資料のアウトソーシングを受けてこれを実施するのであれば、有償性のある役務提供として親会社が正当な対価を請求することは合理的だといえます。
・企業グループ本社・地域統括会社に支払う管理費
本社、地域統括会社などが傘下のグループ企業の統括管理を主たる目的とし、グループ各社に按分する管理費用であれば損金否認の可能性が高いといえます。
・中国法人自らが提供能力を有するなど二重負担の可能性の高い役務費用
日本本社の長年の顧客が中国に拠点を有しており、中国子会社が直接当該顧客に販売するなどの商流において、本社が顧客紹介、顧客関係維持のために販売コミッションを受領することがあります。顧客との会議内容、面談記録などの役務が継続的に提供されていることを実証する資料を準備し、コミッション率などが合理的であるかを確認します。
・中国子会社の機能リスクに無関係な費用または機能
・リスクに見合わない費用負担対外販売を行わない生産法人が支払う商標権使用料、生産販売開始から10年以上経つ成熟した技術に対し中国子会社が支払う技術支援費などに疑念が持たれています。
・役務費の支払と並行してその他の取引がある場合関連者から仕入れていると同時に当該
関連者に支払う販売コミッション、研究開発に共同参加している一方で支う技術使用料(かつハイテク企業の申請もしている)など、役務費の支払が二重負担となっていないかがポイントになります。
調査表の記入
調査の手順としては、まず国外支払技術使用料、役務費用状況調査表の記入を各企業に求めることから始まっています。当該調査表は9月15日を以て各地税務局が上
部機関に報告する締切日となりましたので、10月の国慶節以降から年度末(次回旧正月前)までの間が本格調査の実施時期であると推察されます。年度末までの自主調整が当局の狙うところですが、過去年度のみならず将来年度の損金否認にも繋がるため、有償性のある役務であるか、重複負担、過大負担はないか、慎重な確認が必要となります。
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