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vol183:海外関連者への支払費用に関する税務問題

国家税務総局は2015年3月18日付で、「海外関連者への支払費用に関する企業所得税問題の公告」(国家税務総局2015年第16号公告、以下「16号公告」)を公布しました。

16 号公告では、海外関連会社に対する支払費用の損金算入・不算入および移転価格上の指針を明らかにし、以下の海外関連会社への支払費用に対して損金不算入となる項目を明確にしました。


特許使用料

①無形資産の使用対価として特許使用料を海外に支払う場合、その受益者が無形資産の権利を所有しているのみであり、実質的に無形資産の形成に貢献していない
②上場を主要目的とし、海外で持ち株会社あるいは融資会社を設立し、上場活動において発生した附帯利益を特許使用料として支払う


労務費用あるいはその他費用

労務費用あるいはその他費用に関して損金不算入となる6項目は以下の通りです。
 (a)会社の負担する機能およびリスク、あるいは経営と無関係な労務活動
 (b)海外関連者が直接あるいは間接的に投資収益を確保するために行う統制・管理・監督活動
 (c)第三者或いは他の関連者から同様の便益を受けているために重複している費用の支払
 (d)会社の獲得する利益に見合わない過大に負担する費用の支払
 (e)既にその他の関連取引によって提供されている労務に対する費用の支払
 (f)会社に直接的にも間接的にも経済的利益をもたらさない費用の支払

右述の最後の (f)項目で指摘されている通り、会社で発生した費用を損金算入するためには、当該費用が将来的に会社に対して経済的利益(収益)をもたらすこと、即ちその費用を支出することで会社の収入増加に貢献する、あるいはその他の原価・費用が削減される可能性があることです。

企業所得税法第八条では、収入に無関係な支出は損金不算入とすると明確に規定しています。16号公告は企業所得税法第八条の内容を補足説明したと解釈できます。一方、移転価格の観点から見た場合、税務機関は移転価格の評価および審査手法を用いて各取引が独立企業間の原則に基づくものであるか否かを確認します。つまり、関連取引によって獲得した利益が会社が負担する機能およびリスクと見合っているか確認します。

16号公告は国外への支払費用に対する税務規定であるものの、国家税務総局が公布した一連の通達、「一般反租税回避管理弁法(試行)」(国家税務総局令第32号)、「非居住者企業による財産間接譲渡の企業所得税に関する若干問題についての公告」(国家税務総局公告2015年第7号)などが16号公告の公布の背景となっております。これは昨今のBEPS(税源浸食と利益移転)に対するOECD加盟国およびG20各国に所在する税務当局の積極的な対応の一環であると考えられます。

中国における税収管理は発票の合法性など形式証憑の確認に留まらず、税法の原則に則った実質的な管理に軸足を移しています。各企業においては関連取引全体のタックスプランニング、各種の取引に対する機能、資産およびリスク分析を行い、税務リスクを低減することが必要となります。
また、税務リスクは一企業に留まらず、その他のグループ企業にも波及し、不必要な損失を招く恐れがありますので、グループ全体を俯瞰しバランスの取れた対策が重要です。


田 雲

上海衆逸企業管理諮詢有限公司 総経理
info@u-achievement.com

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