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上海衆逸企業管理諮詢有限公司
vol188:監事(監査役)の役割および業務内容
監事の任命
中国の会社法では、「有限責任会社(外資系企業も含む)は監事会を設置し少なくとも3名の監事を任命しなければならない、あるいは株主の少ない(または小規模)の会社は監事を1〜2名任命する」と規定されています。日系企業では日本本社の管理部門の課長(部長)、中国に統括管理会社を設立しているのであれば統括管理会社の財務責任者を中国子会社の監事として任命することが一般的です。また、董事のように会社の総経理および管理職が監事を兼務することはできません。
監事の役割および業務内容
監事とは日本でいうところの監査役に当たり、現地法人から独立した立場で中国現地法人の業務執行にかかわる重要決議事項、内部統制システム、会計帳簿を含む財務諸表の調査および確認を行います。監事の主な業務として以下の項目が挙げられます。
・貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本変動表および注記事項が中国会計制度に従い適切に作成、表示されているか検証する
・主要業務または財務諸表に重大な影響を与える業務における内部統制システムが有効であるか確認する
・中国事業における不正行為の有無、業務が法令および会社定款の定めに従い執行されているか関連資料の確認を行う
・年に一度の開催が義務付けられている董事会へ出席する
監事業務の問題および改善点
中国現地法人の監事に関して、日本本社の管理部門の担当者が兼務している、あるいは統括会社の財務責任者が数社掛け持ちで担当していることもあり、実際に往査が可能となる日数が年に数日と限られており、作業も限定的となってしまいます。また、日本での連結決算業務の手続きとして現地法人の重要性に応じて、本社の内部監査部門による往査あるいは書類確認が行われているものの、監事業務との連携が明確ではない例が多く見受けられます。
監事が中国の会計制度および内部統制システムに精通しており、本社の内部監査部門の内部監査項目およびスケジュールを共有し、相互補完と共に業務を進めることが理想的です。なお、限られた往査の日程においても、年度末棚卸の立ち会い、現預金の残高確認、決算時の債権債務の実在性、簿外債務の検証などは監事が責任を持って行う必須業務です。
現地財務担当者とテレビ会議などを用いて定期的にコミュニケーションを取ることは不正の兆候を発見し、事前防止の有効な手段となります。財務担当者が監事と一度も面識がないという事態は避けるべきです。また、財務担当者との会議では、財務数値の報告のみならず、債権の回収状況、新規取引先、利益率の変動、従業員の離職状況など財務担当者が気付いたことを遠慮なく直接報告できる雰囲気を作りましょう。
日本においては監査役の権限および責任は重く、昨今のコンプライアンス強化の流れから、本社の財務諸表のみならず子会社の内部統制の不備、不正などの責任に関しても追及されるリスクが増しています。さらに、今後中国において会計上の誤謬あるいは不正が発覚した場合、現地法人の董事および監事がその経営責任を問われる可能性がありますので、監事を中心とした内部統制の強化が望まれます。
大城 哲辞
Tetsuji Oshiro
上海衆逸企業管理諮詢有限公司 米国公認会計士
info@u-achievement.com
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