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パナマ文書
タックスヘイブン(租税回避地)に関する機密情報、通称「パナマ文書」が話題になりました。今月号では、このパナマ文書について 解説いたします。
パナマ文書
パナマ文書は、パナマにある法律事務所のモサック・フォンセカによって作成された一連の機密文書です。文書は1970年代から作成されたもので、総数は1150万件以上あります。文書にはオフショア金融センターを利用している21万4000社の企業情報およびその株主や取締役などの情報も含まれています。これらの企業の関係者には著名な海外の政治家や富裕層の人々が含まれています。パナマ文書は、まず2015年にドイツの新聞社「南ドイツ新聞」に匿名で漏らされました。その後、ワシントンD.C.にある国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)にもその文書が送られ、80カ国107社の報道機関に所属する約400名のジャーナリストが文書の分析に加わりました。最近では、ICIJが関連企業・個人リストを含めて約20万社超の法人情報を公開しました。これらの情報は、オフショアリークスという検索システムに統合されています。
日本の税務当局
近年、日本の税務当局は、富裕層や企業による租税回避地(タックスヘイブン)を使った脱税行為及び資産隠しなどの監視・調査を強化しています。「パナマ文書」には、こうした調査の端緒になる資料が多く含まれている可能性があり、日本の税務当局は必要な情報収集を進めるとみられます。日本の税務当局関係者もパナマ文書の報道に関心を持っており、課税上問題が認められれば、税務調査を行うことになると述べています。ただ、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が公表した情報には、国際的な資金の流れが詳細に分かる資料は含まれていないため脱税行為や資産隠しにつながるかを調査するには時間を要する可能性があります。
違法?
タックスヘイブンでの銀行口座保有や会社設立自体は違法ではなく、合法的な手続きを取っている場合があります。よって、違法か否かを調査するにはお金や資産の動きを追跡する必要があると思います。さらに、パナマ文書に名前が掲げられている法人、個人が現在も実在しているかなど様々な面で詳細な調査をする必要があるのではないでしょうか。
今後の動向
各国の対応としては、シンガポールは、パナマ文書の公表を受けて、2016年4月に調査を開始し、財務省(MOF)と通貨庁(MAS、中央銀行)が「シンガポールの個人あるいは組織による不正の証拠があれば、われわれは断固たる措置を取ることをためらわない」と共同声明を発表し、厳正に対処する姿勢を示しています。一方、日本は、海外諸国と租税情報の交換を進めています。今後、パナマ文書に名前がある日本の企業や個人に関する情報が海外諸国から提供されれば、資金の流れの解明が進む可能性があります。ICIJのデータに記された日本関連の個人名や企業名は300を超えています。名前を公表された富裕層や企業はたとえ違法行為がなくても、説明責任を果たす必要が生じるのではないでしょうか。また、5月に開催された伊勢志摩サミットでは日本が議長国として、タックスヘイブンに関連する国際的協調がなされるように主導的な役割を果たすことになるのではないでしょうか。
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