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北京市安理律師事務所
政策の行方、TikTokはどうなる
2024年4月24日、バイデン大統領はTikTokに関する項目を含む法案に署名した。
法律が成立したことにより、TikTokは売却か利用禁止かという苦渋の選択を迫られることになった。
TikTokの使用するアルゴリズムやソースコード、そして同社グループ企業が米国のユーザーデータにアクセスできるか否かも、米国の国家安全保障審査と切り離せない問題である。2023年、TikTokの周受資CEOは、米議会公聴会に出席した際、TikTokと抖音が技術リソースを共有し、且つ両事業体の技術システムに関連性があることを認めた。
中国で誕生し米国で成長したTikTokは、技術サポートとデータ方面での中国事業体との関連性について、顕微鏡の如き細密さで検査を受けることになる。
TikTok法案に従わなければ、7500億ドルもの巨額の罰金が科せられる。TikTokにとって、禁止を座して待つこと、または事業分離は好ましい選択肢ではない。ビジネスレベルでの実現性評価をさて置いても、地政学的背景から、国家レベルの駆け引きが絡んで、事業分離は実行不可能になっている。最新の『中国輸出禁止・輸出制限技術目録』によると、データ分析に基づくパーソナライズ情報プッシュサービス技術は輸出制限技術に仕分けされているが、分離する事業は当該技術にかかわる可能性がある。これは、事業分離にあたって中国当局の許可が必要になることを意味する。
TikTokは、背水の陣で、TikTok法案の発効を阻止すべく司法救済を求め、立法と行政機関に対する司法機関の抑制均衡に企業の存続と発展を託すほかない。
法律が成立したことにより、TikTokは売却か利用禁止かという苦渋の選択を迫られることになった。
個人データの安全は、米国の国家安全保障に属するが、まったく新しい概念というわけではない。TikTok法案が法律として成立したことで、米国政府は、個人データの安全に対する重視をより高いレベルに引き上げた。
中国というバックグラウンド
TikTokは抖音の海外版と呼ばれ、バックグラウンドが中国にあるために、米国当局から注視されている。一体、TikTokのどのような中国的要素が米国の神経を尖らせているのだろうか。
TikTokの使用するアルゴリズムやソースコード、そして同社グループ企業が米国のユーザーデータにアクセスできるか否かも、米国の国家安全保障審査と切り離せない問題である。2023年、TikTokの周受資CEOは、米議会公聴会に出席した際、TikTokと抖音が技術リソースを共有し、且つ両事業体の技術システムに関連性があることを認めた。
中国で誕生し米国で成長したTikTokは、技術サポートとデータ方面での中国事業体との関連性について、顕微鏡の如き細密さで検査を受けることになる。
米国国家安全保障審査との長期戦
TikTokが米国でスタートした時点では、国家安全保障審査の対象になってはいなかった。2017年、ByteDanceは、musical.lyを買収した後、そのアプリをTikTokと統合した。統合後のTikTokが米国の国家安全保障審査の視野に入ったのは2019年のことである。米国の国家安全保障審査によるTikTokに対する長期戦はここから始まり、その中で、行政、立法、司法がともに一定の役割を果たした。
トランプ大統領がTikTokについて2つの大統領令を出したが、TikTokの講じた司法手続によって、これらが実行に移されることはなかった。TikTokも、米国政府の懸念を軽減させるべく、Oracle Cloudで運用し、そのデータを米国に保管するProject Texasを推し進めたが、米国政府との間で国家安全保障上の合意を得ることができなかった。米国のTikTokを相手どった長期戦は3年以上続き、このたび法案が法律になったことで、TikTokは米国で売却できなければ利用が禁止されるという窮地に直面している。
二者択一:売却か利用禁止か
TikTok法案はTikTokを直接的な標的としているものの、その対象はByteDance、TikTokのみならず、「外国の敵対勢力の支配下にあるアプリ」のすべてである。ある事業体について、敵対国で設立され、敵対国人の直接若しくは間接保有持分が20%以上の場合、又はかかる実体が支配し、もしくはその指示に基づき行動している場合には、外国の敵対勢力の支配下にあると認定される。外国の敵対勢力が支配するアプリに該当する場合、禁止規定発効前に事業分離を実行していない限り、当該法案の発効後270日目から、いかなる事業体も、当該アプリに販売、メンテナンス又は更新サービスを提供してはならず、インターネットプラットフォームサービス(例えば、ストレージ、コンピューティングなど)も提供してはならない。
TikTok法案に従わなければ、7500億ドルもの巨額の罰金が科せられる。TikTokにとって、禁止を座して待つこと、または事業分離は好ましい選択肢ではない。ビジネスレベルでの実現性評価をさて置いても、地政学的背景から、国家レベルの駆け引きが絡んで、事業分離は実行不可能になっている。最新の『中国輸出禁止・輸出制限技術目録』によると、データ分析に基づくパーソナライズ情報プッシュサービス技術は輸出制限技術に仕分けされているが、分離する事業は当該技術にかかわる可能性がある。これは、事業分離にあたって中国当局の許可が必要になることを意味する。
TikTokは、背水の陣で、TikTok法案の発効を阻止すべく司法救済を求め、立法と行政機関に対する司法機関の抑制均衡に企業の存続と発展を託すほかない。
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