中国の法律

本文では、企業が中国で直面する刑事上の法的リスクを整理することによって中国の法体系が企業犯罪をどのように追及しているかを明らかにし、確実且つ有効な対応策を企業に提供する。

一、企業犯罪を追及する中国法体系の立法規定

『中華人民共和国刑法』第31条は、「単位が罪を犯した場合、単位に対して罰金を科し、且つその直接責任を負う主管者とその他の直接責任者を刑罰に処する。本法の分則及びその他の法律に別段の規定がある場合は当該規定による」として、単位犯罪の処罰原則を規定している。同条と刑法分則の関連規定を考察すると、企業の規則違反行為は単位犯罪として追及されることが分かり、その処罰対象も非常に明確である。

１、企業が単位犯罪を追及される場合、原則として「両罰制」が採用され、企業に罰金が科されると同時に責任者も刑罰に処される。なお「別段の規定がある」特殊な状況では「単罰制」が採用され、責任者個人の刑事責任のみが追及され、企業は処罰されない。
２、企業が罪を犯した場合に処罰対象となる自然人の範囲は、「直接責任を負う主管者とその他の直接責任者」に固定されている。この範囲は司法解釈によってさらに明確にされており、「直接責任を負う主管者」とは、単位犯罪において決定、承認、授意、放任、指揮などの役割を果たした人員であり、一般的には主管責任者で、法定代表者を含む。また「その他の直接責任者」とは、具体的に犯罪を実行し、且つ大きな役割を担った者であり、経営管理者か従業員かを問わず、委任または雇用された者を含む。

二、企業が直面する刑事上の法的リスク

中国のウェブサイトで公開されている刑事判決書を確認すれば、企業の直面する刑事リスクには次のような特徴があることが分かる。
１、刑事リスクは企業運営のあらゆる段階に存在している。登録・設立、労働者使用、財務税務から市場取引に至るまで、企業の規則違反行為にはそのすべてに刑法上の罪に触れるおそれがある。財務税務の段階を例にとると、脱税罪、増値税専用発票虚偽発行罪、輸出還付税詐取罪、会計証憑、会計帳簿または財務会計報告の隠匿または故意による廃棄罪などがある。
２、企業に関連する刑事リスクの類型は集中しており、刑事責任に問われる対象もほぼ固定している。統計によると、中国で単位犯罪を追及される企業は民営企業が圧倒的に多く、国有企業や外資企業の割合は極めて小さい。また、単位犯罪において刑事責任を追及される自然人については、直接実行者以外に、法定代表者の割合も3分の1を超えている。

三、企業が刑事上の法的リスクに直面した場合の対応策

企業が刑事リスクに見舞われると、計り知れない影響を受ける。そのため、事前・事中・事後の各段階で確実且つ有効な対策が必要である。
１、事前においては、完全な刑事コンプライアンス体系を確立しておくこと。刑事リスクを効果的に識別し、遅滞なく警告できるようにしておくことが必要であるが、最も重要なのは単位犯罪と個人犯罪との間にファイアウォールを構築して、従業員の個人行為が企業に帰責して企業が単位犯罪に問われるのを効果的に回避することである。
２、事中においては、企業の刑事コンプライアンス調査作業をしっかり行うこと。企業は完全な監督通報制度を確立し、管理段階における問題を動態的に把握しなければならない。職務上の便宜を利用して企業の利益を損なう従業員の行為に対しては、遅滞なくコンプライアンス調査作業を実施し、規則違反行為を等級に分けて処理する必要がある。特に従業員が刑事犯罪に関わっている場合には、速やかに刑事コンプライアンス調査作業を開始し、且つ完全な対応プランを策定しなければならない。
３、事後においては、積極的に刑事リスク対応作業を行うこと。企業に刑事リスクが発生した場合、遅滞なく危機処理作業を実施する。企業自身に犯罪の嫌疑がある場合には、遅滞なく弁護士に相談し、法で認められる最初の段階から刑事弁護を弁護士に依頼するべきである。また、企業の利益が他の企業や自然人によって損なわれ、刑事事件の被害者となる可能性がある場合には、全面的且つ遅滞なく証拠を収集し、刑事告発を行うべきである。