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北京安理(杭州)律師事務所
中国『独占禁止法』の事業者集中に係る独占禁止審査制度の進展
一、法的責任の加重
改正『独占禁止法』では、第58条によって、違法に実施される事業者集中に対する行政過料を重くしている。かかる違法実施の事業者集中に競争を排除または制限する効果がある場合には、独占協定及び市場支配的地位の濫用と同様のやり方法が採用され、過料は前年度の売上高と直接関連し、前年度の売上高の10%以下の過料が科される。また、競争を排除又は制限する効果がない場合は、過料が50万元以下から500万元以下に引き上げられた。
独占禁止調査協力義務の法的責任も重くなっている。同法第62条は、独占禁止法執行機関が法により実施する審査と調査に対して、資料若しくは情報の提供を拒否し、虚偽の資料若しくは情報を提供し、証拠を隠匿、廃棄若しくは移転し、または調査を拒否若しくは妨害するその他の行為をした場合には、独占禁止執法機関が是正を命じ、組織については前年度の売上高の100分の1以下の過料を科し、前年度に売上高がないまたは売上高の計算が困難な場合には500万元以下の過料を科し、個人については50万元以下の過料を科す旨を定めている。
二、事業者集中申告の強化
申告基準に達していないけれども競争を解除または制限する事業集中について、改正『独占禁止法』第26条第2項は、事業者に申告を求めることができると明確に定めている。
2022年6月27日、国家市場監督管理総局は、『国務院による事業者集中申告基準に関する規定(改正草案意見募集稿)』を発布した。まず、集中に参与する事業者の全世界における合計売上高、中国国内における合計売上高、そして事業者1人の中国国内における売上高が、改正前の100億元、20億元、4億元から120億元、40億元、8億元にそれぞれ引き上げられた。すなわち、世界指標について、全世界での売上高指標が100億元から120億元に、事業者の前年度売上高が4億元から8億元に引き上げられた。また、中国国内指標は、中国国内での売上高が20億元から40億元に、参与事業者が4億元から8億元に引き上げられた。次に、大規模企業による合併買収の独占禁止審査が強化された。当該草案によると、中国国内の売上高が1,000億元を超える事業者と、買収に係る時価総額(または評価額)が8億元以上で、売上高の3分の1が中国国内に由来する事業者が、集中を構成する場合、独占禁止法執行機構は事業者に申告するよう求めることができる。三、「stop the clock」制度の導入による審査期間の保証
法執行機構に十分な審査期間を保証するため、改正『独占禁止法』は「stop the clock」を導入している。同法第32条の規定により、次に掲げるいずれかの事由がある場合には、国務院独占禁止法執行機構は計算の中断を決定することができ、書面により事業者にこれを通知する。(一)事業者が規定どおりに文書または資料を提出しないために審査業務を行うことができないとき。 (二)事業者集中の審査に重大な影響を及ぼす新たな状況または新たな事実が生じ、確認をしなければ審査業務を行うことができないとき。(三)事業者集中に付加された制限的条件について更なる評価が必要であり、且つ事業者が中断の請求を提出したとき。なお、審査期間は計算中断事由が消滅した日から引き続き計算され、国務院独占禁止法執行機構は書面により事業者にこれを通知しなければならない。四、事業者集中に係る分級分類審査の完全化
改正『独占禁止法』第37条の規定によると、国務院独占禁止法執行機構は、事業者集中に係る分類分級審査制度を健全化しなければならない。2022年7月8日、国家市場監督管理総局は、『一部の事業者集中案件の独占禁止審査の実施を試験的に委託することに関する公告』を発布し、基準に適合する一部の事業者集中簡易手続適用案件について、北京、上海、広東、重慶、陝西の5つの省(直轄市)の市場監督管理部門に試験的に委託して独占禁止審査を実施させている。
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