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北京市安理律師事務所
電子署名の実務上の課題に関する検討
電子署名の実用化は法律と技術の融合であり、実務面から詳細に検討する必要があると考えられる。。
1、信頼性のある電子署名とその技術的特徴
電子署名の定義については、『電子署名法』に「電子文書中の、電子形式で包含され又は添付された、署名者の身元を識別し、かつ署名者がその内容を承認したことを示すデータ」であると明記され、信頼性のある電子署名が手書きの署名や捺印と同等の法的効力を持つことが確認されている。
これにより、電子署名には信頼性のある電子署名と信頼性のない電子署名のあることが分かる。法的効力の観点から議論すべきは、信頼性のある電子署名をどのように確定するのかである。従来の署名が独自の複製不可性を持つのとは異なり、電子データは複製や改ざんが容易であるため、証拠としての効力が大きく損なわれることは明らかである。しかしながら、テクノロジーの発展に伴い、より多くの方法を利用することによって電子データの安定性、安全性、信頼性を高めることができる。
現在、電子署名に使われている技術は主に、非対称暗号化技術、ハッシュダイジェスト技術、タイムスタンプ技術である。ここで強調したいのは、電子署名はこれらの技術を利用した一連のアルゴリズムによって得られた結果である、ということである。
実際には、電子署名は最終的に電子印鑑(会社印章又は人名章)の形で表現されることが多いが、いま確認したいのはこの印鑑ではなく、この印鑑の形成するアルゴリズムとプロセスである。このプロセスは、次の『電子署名法』における信頼性のある電子署名が備えるべき4つの条件に対応している。
①電子署名生成データが電子署名に用いられる時、電子署名者が専有していること。
②署名時に、電子署名生成データが電子署名者のみによって支配されていること。
③署名後、電子署名に対するあらゆる改変が発見可能なこと。
④署名後、データ電子文書の内容及び形式に対するあらゆる改変が発見可能なこと。
2、電子署名の本人確認はどのように実現するのか
電子署名を生成する場合、生成者のアイデンティティは仮想人格に似ている。電子署名だけではそれが本人によって行われたことを判断できないため、この仮想人格が本人によって設定されたものかを検証する必要がある。例えば、銀行で口座を開設する人は身分証の原本を銀行に持参し、銀行が顔認識や録音録画といった方法でそこにいる人物が国家人口基礎データバンクと一致することを検証し、その検証結果に基づいて口座を開設する。このことから、信頼性のある電子署名の検証には、オフラインでの実名検証とオンラインでの本人確認を含むべきであると考える。
現在広く用いられている銀行での4つ要素による検証(氏名、身分証番号、銀行カード番号、携帯電話番号)は、これらの要素の関連性の識別によって本人又は被授権者であることを推定する。ただし、なりすましが多発していることから、すでに多くのシステムで顔識別や指紋識別を加えることが試みられている。これらの技術手段の最終目的はいずれも、身元を安全に検証することである。
3、電子署名の認証機関
「電子署名法」に従い、電子署名が第三者認証を必要とする場合は、法に基づき設立された電子認証サービス提供者が認証サービスを行う。実際の取扱いにあたっては、認証機関による報告書や説明書の発行がより便利な証明方法となっている。しかしながら、司法的な意味での証拠とするならば、認証機関とその認証プロセスを弁別する必要がある。
①認証機関に認証資格があるか、資格は有効期限内か
②認証機関の業務規則と認証ロジックを理解
③認証機関が実名による本人確認を行っているかを確認
法律分野における電子署名の利用はいまだ探索的段階にあり、その法的効果には更なる検証が必要である。しかしながら、取引の各段階に組み込まれた電子技術が社会の取引効率を高め、取引コストを顕著に下げ、生活に大きな利便性をもたらしていることは否定しようのない事実である。法律は、最終的には電子技術と取引が複合した問題を解決することになり、また電子技術がもたらす新たな法的問題に直面することになるであろう。
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