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北京中諮律師事務所
作家の韓寒氏による百度への民事訴訟 (著作権侵害をめぐる)
前回は、著作権の国際的保護について説明した。今回は、著作権侵害をめぐる作家の韓寒氏による百度への民事訴訟について説明する。
1、案件事実
2012年、若手作家の韓寒氏が、著作権を侵害されたとして北京百度(バイドゥ)網訊科技公司を相手取り訴訟を起こした。韓氏は「代表作の一つである『像少年啦飛馳』が複数のネットユーザーにより百度文庫へアップロードされたため、百度文庫に対し直ちに侵害をやめ、再発防止策を講じるよう抗議した。だが百度は対処せず、アップロードされた作品への著作権審査をしなかったため、韓氏は百度に対し(1)侵害の停止 (2)百度文庫の閉鎖(3)謝罪 (4)被害総額25万元余りの支払いを求めて提訴。これに対し百度は「(1)百度文庫は情報メモリーであり、実質的に侵害用途には当たらず、中国で大変な人気も呼んでいる (2)百度文庫は様々な形でネットユーザーに対し権利者の作品を保護するよう伝えており、注意義務を果たしている (3)抗議を受けた後、これに関わる作品のリンクを遮断しており、法的義務を果たしている。よって、侵害の責任は負わない」と反論した。
2、判決結果
これについて、裁判所は以下のような民事判決を下している。韓氏が「像少年啦飛馳」(以下「係争作品」という)の作者で、著作権法で保護されるべきとあると確認。本件は、原告・被告双方ともネットユーザーが作品を百度文庫にアップロードし、不特定なネットユーザーが時間や場所を選んで係争作品を取得することを認めている。この行為は作家の許可を得ておらず、ゆえにこの係争作品における韓氏の情報ネットワーク伝達権の侵害にあたる。百度は、ネット上の情報メモリーのプロバイダであって、作品を直接アップロードしたわけではないが、配下の百度文庫が作品をアップロードして他のユーザーが閲覧及びダウンロードするための情報メモリーを提供しており、ドキュメントのアップロード、保存、シェアという行為を補助しているため、係争作品における韓氏の情報ネットワーク伝達権を間接的に侵害。また、百度は抗議を受けた後に当該侵害リングの削除、閉鎖、遮断などといった行為を速やかに講じておらず、中国の『侵害責任法』に基づき、損害が拡大した部分についてネットユーザーと連帯責任を負う。侵害の禁止へ必要な策を講じたかについて百度は、『複数のページで作品をアップロードしないように注意し、また侵害に関する抗議のチャネルを設け、海賊版対策システムを導入し、更に本件にあたって侵害されたドキュメントを直ちに削除するなどの様々な策を講じた』と称しているが、こうした技術的対策は限定的なもので、これだけでは侵害を防ぎきれないことから、注意義務を完全に果たしたとは言えない。また、技術的対策を実行するには人の手による協力も必要である。百度は本件で、「侵害との通知を受けて直ちに対象ドキュメントを削除する」という「赤信号」ルールを果たしておらず、かつ海賊版対策をネットユーザーの自主性や整備不十分な技術策に委ねており、これで侵害行為がかなり拡大した。こうした明らかな要因で、知りえた侵害行為に対し、一般的な注意義務を履行する他、更なる注意義務を自主的に履行することが必要である。百度は、百度文庫におけるドキュメント侵害を知るか予見できながら、予見レベルや統制力の範囲内で侵害を止める必要な策を講じていないのであれば、主観的な過失であると見なされる。よって、中国の「著作権法」や「権利侵害責任法」に従い、被告の百度に対し、原告の作家・韓氏へ被害総額3万9000元およびその他合理的な費用4000元を支払うよう命じる。また、「百度文庫」の閉鎖を求めた韓氏の訴えは却下した。
3、分析
本件における係争作品の権利は、情報ネットワーク伝達権も含めた著作権である。百度は、ネットユーザーが係争作品をアップロード、保存、シェアするという行為を幇助していたため、韓氏の情報ネットワーク伝達権を侵害している。百度のこうした行為は、係争作品を広範囲に伝達する実行性や便利な条件を備えており、韓氏の損害との間に因果関係がある。合わせてチェックしたい!
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