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北京中諮律師事務所
著作権法(8)——著作権の利用-著作権の譲渡と継承
前回は、著作権の利用における使用許諾について説明した。
今回は著作権の譲渡、継承などによる著作財産権の他の利用方法について説明する。
①著作権の譲渡
著作権の譲渡とは、著作権における財産権の譲渡、すなわち著作権者が一定の期間内で著作権における財産の権利のすべてもしくは一部を他人に譲渡することにより、譲渡された者がその期間内に新たな著作財産権(すべてもしくは一部)の所有者となる法律行為をいう。その主な特徴は以下の通りである。
譲渡の対象となるのは著作財産権のみである。著作権人格権は人格性が大変強く、原則として権利者が自由に譲渡してはならない。
当事者の自由意思が示される行為である。著作権を譲渡するか、誰に、どのように譲渡するかなどはすべて権利者が決め、他人に強制する権利はなく、法律も関わらない。
法律的には、著作権発生の主体の変更となる。著作権の使用許諾の場合は著作権の主体が変わらないので、使用許諾を受けた物は許諾者の権利がないと第三者に対抗できないが、著作権の譲受人は独自に自身の著作権で第三者に対抗できる。
作品の現物の譲渡という意味ではなく、譲渡が現物の作品使用であっても、使用を終えたら譲受人はそれを所有者に返還すべきである。
②著作権の譲渡契約
著作権法第25条により、著作権財産権を譲渡する場合は、書面による契約を結ぶ必要がある。
契約の内容は、以下の通りである。
①作品の名称。
②譲渡する権利の種類、地域や範囲。
③譲渡金額。
④譲渡金支払いの日付、方法。
⑤違約責任。
⑥双方で規定が必要と見なしたその他の内容。
このほか、すべてを譲渡する場合、今後法律で定められる新たな権利を含むか、保護期間全体で譲渡する場合、今後法的に延長される部分を当該著作権の保護期間に含めるか、創作前もしくは創作中である作品の場合、譲渡できるか、といった内容を明記すべきである。
③著作権の継承
中国の『継承法』および『著作権法』により、著作権人格権は継承の対象にはならないが、著作権法では作者の署名権、修正権、作品完全性保護権に期間的な定めはない。
『著作権法』第19条では、「著作権が個人のものである場合、死亡後は、其本法における著作財産の権利は本規定の保護期間内で継承法に基づき移転するとしている。著作権が法人もしくはその他組織の物である場合、その法人もしくは組織が変更、消滅した後、其本法における著作財産の権利は本規定の保護期間内で、その権利や義務を負う法人もしくは組織のものとなる。法人もしくは組織に権利や義務がない場合は、国のものとなる」と定められている。
『著作権法』第18条では、「美術などの現物作品の所有権の移転は、作品の著作権の移転とは見なさないが、その現物の展覧権は現物の所有者にある」と定められている。
④著作権のその他の利用
担保:著作財産権は移転が可能な財産の権利であり、担保にすることができる。その際に、著作権で質権を設定できる。『著作権法』第26条では、「著作権を質権とする場合、その設定者と質権者は国務院の著作権行政管理部門で質権登録を行う」と定められている。
信託:信託とは、著作権者が譲渡もしくは処分により著作権を受託者に委ね、報酬や基準を得る方法を定め、受託者が個人の名義で、ある目的に沿って著作権を管理もしくは処分する行為をいう。その際、著作財産権は受託者のものとなるが、受託者は信託者に対する義務を守るために、信託を目的として著作権を行使しなければならない。欧米や日本などの著名な音楽家や文学者の著作権管理団体や、中国の音楽著作権協会は、信託により著作権を行使している。
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