キーマンインタビュー
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東芝泰格信息系統(深圳) 有限公司 中国事業総部
董事・総経理 松本 聡 氏
期待されている以上の品質の
サービス・ソリューションを提供
競争が激しい中国市場において、18年間連続でオフィス向けプリンターのトップシェアを競ってきた同社。事業拡大へ辣腕を振るわれた松本総経理に、中国ビジネスの経緯とその困難さ、そして今後の展望について伺った。
直接販売とディーラー販売
当社は1996年10月に設立されまして、現在は主にオフィス向けプリンター(MFP)、産業向けラベルプリンター(BCP)、リテールシステム(POS)等の販売・保守サービスを中国市場で手掛けています。市場は拡大継続で今後の成長余地もあり、欧米に比べて単価は低いですが規模を稼げる市場となっています。
MFPに関してはお陰様で、2000年から現在まで毎年台数シェア1位を競っています。MFPの中国市場での販売は、かつては香港と台湾のディストリビューターが手掛けていましたが、1996年から東芝、香港、台湾の3社でジョイントベンチャーを香港に設立することでチャネルを整理し、一貫したマーケティングを開始しました。当社の生産工場が深圳にあった関係で、程なくしてその内販権を活用した販売も開始しました。1998年後半に香港からのグレー輸入が規制されるようになったことや、各地で積極的にディーラーを開拓していたこと、そして故障しにくい頑丈な製品が評価され、一気に市場に於けるシェアを伸ばせるようになりました。そして拠点の増設を進め、2002年には本社機能を上海へ移管しました。現在では11拠点、340名の社員が働く会社となっています。直接取引ディーラー160社、認定している間接取引ディーラー含めて1,000社、認定サービスステーションは1,000カ所以上と中国全土をカバーし、全国の顧客へ高品質なサービスを提供する体制を築いています。また、直接販売とディーラー販売を融合するProgramであるTNAP(Toshiba National Account Program)により、大口顧客へは地方でもメーカー直接サービスと同等のサービス品質を提供しています。
我々のパートナーとして仕事をしてくださっているディーラーとの信頼関係の継続的な強化は欠かすことができません。中国では決定権者同士が直接交渉し、即断即決を求められる文化でもあるため、とにかく私が直接会って現場を見ることが大事であると考えています。1カ月のうち半分以上は中国各地のディーラーのもとを訪れていますが、そこでの会食の大切さと大変さ(白酒での乾杯)は日本のそれとは比較になりません。また、実際に会って、会社の活気や社員の増減、経営者の顔色や家族の事情などを直接見聞きすることで初めてイメージを掴むことができます。各地域ごとのプロモーションや個別の対応をしなくてはならない際に、単に部下から報告されてきた情報に基づくのみではなく、自分が直接見聞きしたことで培った判断の軸を持っているのとそうでないのとではまるで異なります。
日本人と中国人の考え方・感覚の違いについてさらに挙げられるのが、給与・待遇に対するものです。人件費の上昇スピードの速さもあり給与に対する考えが直接的で、優秀な人は簡単に転職をしてしまうため、いかに人材を確保し定着させるかが重要となります。私が就任して以降、給与システムを全社員がある程度一律に増加するものから、積極的に差をつけて優秀な人材には投資を惜しまない仕組みに転換させました。賞与についても以前は基本的に毎年徐々に上昇していくというものでしたが、現在は会社全体の業績と部門の業績、そして個人の評価を掛け合わせることで増減の幅に差がつくようにしています。
また、従業員340名のうち駐在員を2名のみにしていることも含め、ローカル人材の幹部登用を積極的に推進しています。役割の大きい社員には相応の報酬で報いるのはもちろん、継続的に高いパフォーマンスを出す社員には私を上回る給与を支払っています。当然のことですがここは中国であり、当社の顧客の9割以上が中国の企業・組織であるため、中国の方に活躍してもらうことなしにビジネスがうまくいくことは絶対にありません。それに加え、当社では公用語を中国語・英語にし、日本語を使うことはほとんどありません。英語でのビジネスが主流の香港から本社機能を移管したという経緯もありますが、英語を公用語にすることで、ローカル社員と東京の担当部門とで直接コミュニケーションを取ることが可能となります。また、中国の人材マーケットにおける日本語人材と英語人材とでは圧倒的に後者が多いため、人材の層が厚いので優秀な人を確保しやすくなるというメリットもあります。
期待以上のクオリティを目指して
中国市場でのビジネスは、以前は比較的単価の安い製品を販売して適宜保守点検を行うという形がメインでしたが、近年はニーズが多様化し、サービス・ソリューションの高付加価値化が進んでいます。例えばクラウドサービスやスマートフォンとの連携を活用することで状態監視をし、故障する前に兆候を把握して、該当部品を持参の上でサービスマンを訪問させたり、会社規模の大きいお客様であれば、部門ごとにどれだけ印刷して費用が発生しているかという分析データをお送りしたりといったサービスを提供しています。また、プリンター周り以外においても、オフィス移転後などの除菌・消臭・ガス分解に効果のある光触媒の「ルネキャット®」の施工サービスを手掛けています。その他オフィスで使用されるパソコンやタッチスクリーン等の販売も行っています。今後ともディーラー然り、エンドユーザー然り、お客様が期待している以上の品質の製品、サービスを提供していくことで信頼を積み重ね、企業価値の向上に努めていきたいと考えています。
直接販売は2002年に私が香港から上海へ移動したしばらく後、突然の指示を受けて始めたもので、当時は人員やシステムもなければ、契約書や提案書のフォーマットもありませんでした。オペレーションもディーラー販売とは全く異なるため、ゼロからの構築は想像を絶する大変さでしたが、貴重な経験を積むことができました。
毎年一度、春に中国全土のディーラーの皆さんに参加頂くディーラー大会を開催し、新たな年度の事業方針・戦略を共有しています。参加人数が総勢500名程度となる為、会議場と宿泊の両方を満たすホテルを見つけるのが結構大変です
PROFILE
SATOSHI MATSUMOTO
1967年生まれ、山口県出身。広島大学卒業後、1990年に東芝へ入社し日本語ワープロの販促に従事。1998年香港駐在、中国本土向けMFP販売会社。2002年上海駐在、GM。2006年帰任、東芝テック(経営企画部)。2009年ドイツ駐在、DGM。2013年帰任、東芝テック。2015年より現職。
ディーラーのもとを訪ねる際に、名所に連れて行って下さることがあります。一緒に時間を過ごすことで会食以上に信頼関係を築くことができるので、時間があれば断らないようにしています。こちらはラサのポタラ宮にて。
ゴルフ
白酒を飲む機会が多く、それに伴い食事量も増えたため非常に太っていた時期がありました。そこでジョギングを始め、昨年は初めて上海マラソンに参加して完走しました。走ることで健康管理をしています。。