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中国特許法の手引き(23)
前回は、間接侵害の概念と内容をご紹介しました。
今回は、侵害に対する救済についてご説明します。
① 侵害に対する救済の概要
中国の「特許法」には系統的な規定がありません。特許権侵害の成立が確認された場合に、特許権者が受けることのできる救済措置についてご説明します。救済措置の類型を確定するためには、民事法の一般規定①および「特許法」の特別規定②を同時に参照する必要があります。これらの条文を整理し、「特許法」の具体的実務を踏まえると、特許権者が受けられる主要な民事救済措置は、差止命令による救済と損害賠償という二つに分けることができます。
差止命令による救済とは、裁判所が特許権者の請求に応じて、侵害者に対して権利侵害行為の停止を命じることをいいます。これに対応するのは、「民法通則」および「権利侵害責任法」に定める「侵害の停止、妨害の排除、危険の除去」等の責任形式です。裁判所の法による確認に基づき、権利侵害の前、または権利侵害の後に出されます。差止命令はさらに一時的な差止命令と永久的な差止命令の二つに分かれます。
損害賠償とは、裁判所が特許権侵害の成立を確認した後、侵害者に対して判決で命じ、権利者が被った実際の損失を賠償させることをいいます。「特許法」(2008年改正)の第65条によれば、損害賠償は、原則として権利者が受けた実際の損失を基準としますが、実際の損失の確定が難しい場合は、侵害者が侵害により得た利益によって確定し、侵害により得た利益の確定が難しいときは、ライセンス料の合理的な倍数によって確定するとされています。それでもなお確定できないときは、裁判所に1万元から100万元までの間で自由裁量が認められ、これがつまり法定賠償です。
差止命令による救済と損害賠償以外にも、「民法通則」はもう一つのよく見られる民事責任負担の形式を定めており、それは「謝罪」です。しかし、大部分の特許権侵害事件において、裁判所による支持を得られていません。通常、人身または人格上の利益に関する権利の侵害が認められた場合にしか、謝罪の問題が発生しないと考えられています。
② その他の救済
(1)権利侵害製品または権利侵害に使われる道具の廃棄(2)謝罪
(3)合理的費用の支払い
特許権侵害事件において、特許権者は、権利侵害の調査と制止のために権利者が支払った合理的費用を侵害者が支払えという判決を人民法院に請求することができます。合理的費用の支払いには、公証費用、出張費用、倉庫保管費用、弁護士費用、訴訟費用等が含まれます。
(4)懲罰的賠償
中国の「特許法」には、懲罰的賠償に関する条文はありません。しかし実務では、裁判所が権利侵害における損害賠償額を計算する際に、侵害者の主観的態様を考慮し、権利者に有利な計算方法を選択して、損害賠償額の算定結果に事実上一定の懲罰的側面を持たせる可能性もあります。
(5)行政による救済
特許権侵害が発生した後、特許権者は、裁判所に訴訟を提起する以外に、特許行政管理部門を通じて救済を模索することも可能です。
②ここにいう特許法の特別規定とは、主に「特許法」(2008年改正)第65条および第66条です。
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