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Fine Vintage（Far East） Ltd.

キーマンインタビュー

Fine Vintage（Far East） Ltd.

エリア：その他

Director Hiromi Paine さん

香港での洋酒販売の先駆け二千種以上の品目を扱う

1986年創業、香港のワイン・ウイスキー市場成長と歩を合わせ発展してきた「Fine Vintage」のダイレクター・Paineさんにお話を伺った。

慣れない香港で夫のサポート

　洋酒販売会社に勤める英国人の夫と東京で知り合い、1974年に結婚。シンガポール駐在を経て、1982年に彼が香港支社の社長に任命され、香港へ移りました。
　当時の香港では、洋酒は結婚式などでブランデーが飲まれるくらいで、ワインやウイスキーはほぼ皆無。夫の会社の取引先は、もっぱら外国客が宿泊するホテルや外国人向けの洋食レストランで、社長の妻としてそれら取引先を自宅に招いておもてなしするのが私の役目でした。外国人のお客様を相手にワインに合わせたコース料理を用意するのですが、良質な食材が簡単に手に入る時代ではありません。日本から持参したたった一冊の料理本を頼りに、仔牛のレシピを豚肉で代用したり、デザートのムースに使う生卵を探し求めたりと奮闘しました。
　来港して3年が過ぎた頃、投資会社に買収された英国本社が香港支社に無理難題を要求してきました。現場のトップとしてそれを拒否した夫は、結局折り合いが悪くなり、会社を離れることになりました。まだ子供も小さい外国暮らし。夫が職を失い、これからどうなるんだろう、と思いました。

夫婦2人きりで始めた会社

　1986年、香港でワイン販売会社を設立。当時、大手以外にワインを扱う業者は皆無でしたが、前職で築いた人脈が役に立ちました。知り合いのホテルマネジャーやシェフから、君たちがやるなら応援する、と言っていただいたのです。銅鑼湾に小さな事務所を構え、従業員は夫と私の2人きり。最初に売れた一本のイタリアワインのことは今でも覚えています。ホテルや洋食店、そして日本料理店と、少しずつ取引を増やしていきました。翌年には柴湾に事務所を移し、そこから私も毎日、ワインを積んだカートを引っぱってお客様のところへ配達に行きました。
　数年間、ペニンシュラホテルのギフトショップで販売員をしたこともあります。香港観光ブームの時代でしたから、日本人観光客が多く、日本語で声をかけると必ずと言っていいほど買ってくださいました。フランスのアップルブランデーがどんどん売れ、言葉が通じるので売場全体をサポートするうち、ショップ全体の売上も倍増したと、ホテルのマネージャーに驚かれました。
　経費がかかるので店舗は持たないと決め、四半世紀かけてこつこつとワインやウイスキーの扱いを増やしてきました。現在、弊社の取扱品目は二千種を超え、従業員は約25名。2016年に創業30周年を迎えました。

無我夢中に泳いだ日々

　夫と二人三脚で仕事をしていましたが、実は生まれつき股関節を患っており、10代で一度歩けなくなりました。治らないだろうと言われながら、理学療法でどうにか回復し、ずっと身体をかばいながらの生活。それが1997年に名医に出会い、手術を受けてから、営業や販売、フランスのワインメーカー訪問と、精力的に動けるようになりました。この頃から身体に負担なく筋力をつけるため水泳を始め、毎朝泳ぐのが習慣に。経営がうまくいかず落ち込む夫を励ましながら、一緒に落ち込めば沈んでしまうと、自分自身はもう毎日、一心不乱に泳いでいた気がします。
　最近は再び脚が痛むようになり、杖をつく生活になりました。けれど、今では幸い社員たちがいます。日本人社員も入り、香港人営業チームと協力しながら私の代わりに動いてくれ、とても助かっています。会社は何度も危機がありました。今はもう怖いものはないと言いますか、あがいても仕方ないという境地ですが、現在もこの会社が生かされていること、それがすべてだと思っています。

PROFILE

ヒロミ・ペイン・オカモト

鹿児島県出身。1974年から2年間、夫の駐在帯同でシンガポールに暮らす。東京へ戻り、1982年から香港在住。86年、夫と洋酒販売会社「Fine Vintage （Far East）Ltd.」を設立。2016年には30周年を迎えた。

取引先一社一社と関係を築いてきた

2016年11月の30周年記念に社員たちと