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代表取締役会長 氷室 利夫氏

鮮度に徹した食材を日本から毎日配送食から始まる感動を世界に


マンションの一角に始まり、現在では香港の冷凍まぐろ市場の7割りを占める同社。創立者でもある氷室会長に、ビジネスの心得と今後の展望について伺った。


素人だったから始められたビジネス


 1989年に香港で駐在することになりました。香港は、市場に対する規制が少なく、低税率、さらに、交通が便利で情報にも富んでいるなどと、ビジネスをする良い条件が揃っています。前の仕事を退職したあと、縁あって香港で冷凍まぐろの卸売りを始めました。まぐろに関しては全くの素人だったので、いろんなお寿司屋さんの大将たちに相談をしたのですが、皆さんに口を揃えて「そんなバクチみたいな商売はやめとけ」と言われました。まぐろは相場の変化が激しく、損が出やすいビジネスです。それに、当時香港ではまぐろに特化した専門業者はいませんでした。それなら、第一人者になろうではないかと、マンションの一角に設備を揃え、スタートしたのですが、今思えば素人だっだからこそ始められたビジネスなのかもしれません。
 最初は、日本人が経営する飲食店を中心に卸していましたが、その内少しずつ香港人が経営するお店も増えていき、現在では、 高級寿司店や大手チェーン店まで数百件の飲食店と取引をしています。 お客様の様々なご要望にお応えしようと食材の種類も増やしていき、今ではまぐろをメインに鮮魚、冷凍海産物、畜産、野菜などの食材を日本から直送でお届けしています。中でも、冷凍まぐろにおいては、香港で約70%の取り扱い実績を持っています。

香港だからこそ叶う鮮度を徹底追求

 日本産まぐろのほとんどは築地市場から仕入れています。海外からまぐろを輸入する場合、1本買いでしか対応してくれない市場が多いですが、解体してから病気などが見つかり、売り物にならないと判明する場合も多く、リスクが高いです。その分、築地市場はまぐろをカットしてもらって購入できるので安心です。
   香港は物流の優位性ゆえに、日本と同じ鮮度の海産物が味わえるという大きな魅力を持っています。築地市場で競りにかけられた鮮魚は、航空便を使えば香港まで4時間、通関手続きも早いので午後には空港で引き取ることが可能です。そこから配送を行えば、その晩の食卓で味わうことができます。これは、日本にある料理店と変わりません。飛行距離が長いシンガポールや、通関が複雑な中国本土ではなかなか実現できないことです。
 当社はこの香港ならではの特徴をお客様にお届けするため、徹底した鮮度管理を行っています。まずは、オフィスの立地。荃湾の工業エリアは、空港まで車で20分、市内まで車で30分と大変便利で、迅速な配送ができます。また、自社の配送車を7台完備しており、雨の日や交通渋滞も踏まえた最善の配送ルートも割り出しました。新鮮な海鮮をいかに早くお客様の元へ届けられるか、まさに時間との競争です。
 冷凍商品も温度変化による品質劣化を防ぐために徹底したコールドチェーンを採用しています。冷凍食材は、超低温コンテナで日本から海上輸入し、 コンテナのまま直接倉庫に搬入できる特殊機能を配備。専用の冷凍倉庫に保管するまで、極力温度変化のないように対応しています。

川上から川下までの事業形態を網羅

 日本食材の卸売り業界では近年、新規参加者が多く、その中で戦っていかなければならない局面にあります。当社では、より幅広い客層にリーチできるよう多岐にわたる業態で展開しています。まずは、「川上」である卸売り事業。サプライヤーとして、飲食店やスーパーなどに商品を提供します。お客様のほうも食品のプロですので、いかに品質、価格、スピードでご満足いただけるかが肝心です。
 次に「川下」である飲食店経営。2005年にまぐろ丼をメインとした「定食のどらや」をオープンしました。そのほかにも、浜焼きの「浜焼大将」、天ぷらの「一宝」、FCとしての広島つけ麺「ばくだん屋」などと、いずれもある分野に特化した専門店です。他店舗との差別化も図りやすく、使う食材も特定なものですので、例え、将来まぐろの輸入が規制されることになっても、他の食材でやっていくことができ、リスクが分散されます。
 そして、2016年は「川中」ともいえる食材の宅配事業「Club TEI」をスタートしました。香港にいる一般消費者がネットを通じて日本の食材を注文し、当社の物流ルートを活かして新鮮なままお届けするものです。お客様と顔を合わせない商売形態ですので、どうやって信頼関係を築いていくかが重要だと考えます。香港で順調に運営していけたら、将来はシンガポールでも宅配サービスを展開していきたいです。

 当社では、食材を通して日本の和食文化を世界の人々に伝えていきたいとという想いがあり、マカオをはじめ、シンガポール、カナダでも事業を展開しています。シンガポールでは現在、飲食店の展開も検討中です。私たちのやり方がどれぐらい世界に通じるかを見極めていきたいですし、日本の美味しい食材を世界中の方々に食べていただき、和食文化を通じて日本の文化に触れ、ファンになってくれることを願っています。


香港での生活が長く、法政大学チャイナ校友会(OB会)の代表を任される。世代、性別、国籍、出身地などの違いを超え、メンバーの親睦や互助を目指している。写真は2017年1月、法政大学にて。


PROFILE

ひむろ としお

1985年山一証券に入社。1989年、北京での1年間の留学を経て来港、香港のビジネス環境に惹かれる。1995年退社後、ビジネスパートナーと香港で「帝有限公司」を設立し、代表取締役社長に就任。まぐろに特化した輸入事業からスタートし、鮮魚と野菜の卸売や飲食店も展開。2013年代表取締役会長に就任し、現在に至る。


<氷室さんを知るキーワード>

飲食店第一号「定食のどらや」


帝グループが運営する飲食店第一号として、「定食のどらや」が2005年に誕生しました。海鮮丼定食をメインに提供し、皆様のおかげで開店13年目を迎えました。昨年からは日本の福岡での展開もはじめました。


日本産ワインにも注力


近年、日本には若手の生産者がまじめに作った美味しいワインがたくさんあります。しかし、生産量が少ないため、海外での知名度はまだ低いです。オフィスにワインセラーを作り、今後は日本産のワインも海外でどんどん広げていく予定です。


薄紙を重ねるように築く信頼


信頼関係を築く過程は、薄い紙を一枚一枚積み重ねていくように思います。嘘を付いたり、約束を破ったりすると、積み重ねた紙に息を吹きかけるように飛んでしまう。この気持ちを大切に、商売で色んな状況を切り抜けられたのだと思います。(写真は、スタッフ一同黄大仙に参拝したときのもの)




帝有限公司

住所 11/F, Sandoz Centre, 178-182 Texaco Rd, Tsuen Wan, NT MAP
電話 852-2592-8833

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