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不正、コンプライアンス違反 不適切会計を考察(5)

前回までは不正に関する問題を解説しましたが、今回から不適切会計をについて考察します。

 不適切会計は大きく分けて以下の二つに分類されます。
・会計処理のミス(会計担当者の経験不足)、あるいは税務上の処理(発票、支払基準)に引きずられる形で不適切な会計処理を行う。
・意図的に負債を過少計上、売上を過大計上、費用を過少計上するなどして、財務諸表を調整し、不正な会計処理を行う。


会計処理のミス


 会計処理のミスで代表的なものとして、支出の際に一旦資産計上し、対象期間に渡り償却すべきところを一括費用処理する、売上計上の期ずれといった事柄が挙げられます。

 例えば、1年分の家賃、財産保険料などは一旦前払費用と計上し、毎月均等に費用計上すべきものを支払時に全額費用計上することなどが挙げられます。

 また、固定資産の改良支出に関しても固定資産の取得原価の50%以上、耐用年数の2年以上の延長などを基準として固定資産の簿価へ改良支出として加算し、資産計上後に償却するところを全額修繕費として処理することがあります。財務担当者は固定資産の情況を理解しておらず、既存の固定資産に関わる全ての支出を自動的に費用処理することによる会計処理のミスとなります。

 売上計上の期ずれについては、工事進行基準を採用している会社、期を跨ぐ販売がある際にミスが発生します。中国の会計担当者は「発生主義」の概念を正確に理解しておらず、工事の進行情況に基づき収益認識するものを、請求書(発票)の発行基準で売上処理してしまうことがあります。

 

中国国内規定


 税務上の処理に引きずられる形での不適切な会計処理は、代表的な不適切会計処理です。

 中国における税務処理は「発票発行(入手)主義」であり、会計上の「発生主義」と異なります。筆者の直近の経験では、発票を入手するまでは買掛金計上はおろか在庫の入庫も行わず、数カ月も在庫の計上が遅れ、在庫残高が歪になっているケースがありました。在庫の異常値を指摘したところ、不適切処理が発覚しました。担当者曰く「在庫残高がマイナスになることはなく、発票入手後速やかに在庫計上するから大丈夫」と反論され、あまり気にしていない様子でした。

 固定資産についても同様に設備の使用を開始しているにも関わらず、発票を入手するまで固定資産には計上せず建設仮勘定のまま減価償却を行わないことがあります。また1年以上も減価償却が行われず、放置されていたケースを散見して驚いた経験があります。

 会計上の処理ミスは会計担当者の知識・経験不足、不注意に起因することが多く、適切に指導することで是正することが比較的容易です。税務上の処理に起因する不適切な会計処理は、処理のミスよりも根が深く、会計担当者への正しい会計処理の指導はもちろんのこと、発票絶対主義の担当者の思考を変えることにもなり、なかなか難しいことになります。

 中国において過去20年の間に会計制度が大きく変化し、最新の会計制度は国際会計基準に近いものになっているにも関わらず、現場の会計担当者が過去の処理方法を引きずっていることがあり、是正が難しい場合もあります。


上海衆逸企業管理諮詢有限公司 米国公認会計士

大城 哲辞

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