キーマンインタビュー

NHN Service Technology

副総経理石川登志郎氏

日本から中国へ、中国から日本へ
言語の垣根を越え広がる
NHNのエンターテイメント事業

グループ事業支援に特化した拠点

　弊社は韓国のNHNエンターテイメントの子会社であるNHNジャパン（東京）の100％出資により、検索サイト「NAVER」のデータベース構築・分析を行うサポート部門として2007年に設立。2009年にはゲーム関連のサービスオペレーション事業も開始。現在はNHNコミコの下で手がけるデジタルコミック「COMICO（コミコ）」、スマートフォン（以降スマホ）ゲーム開発を行うプレイアート（ツムツム、コンパス等）、PCゲームを展開するハンゲームといった、これらの会社のエンターテイメント事業における運営支援（進行管理／グラフィックデザイン・開発／スマホおよびPCゲームのテスト／翻訳／コンテンツ監視／日本語、中国語など多言語によるカスタマサービス）を中心に行っています。

お客様に一番近い立場にいるからこそ

　2006年頃はオンラインゲーム市場が非常に勢いづいており、グループ会社であるハンゲームも業界で名を馳せていた時期。2011年あたりから比較的安価なスマートフォンが出回り始めたことをきっかけに、ゲーム市場においても、それまでのPCゲームからスマホゲームへと世代交代を遂げ、会社として大きな変化に対応を迫られた時期となりました。現在の運営部門における事業割合は、スマホゲーム6割、PCゲーム4割となっています。
　従来の売り切り型とは異なり、サービス開始後もアップデートを重ねるオンラインゲームでは、ゲーム単体の魅力だけではなく、お客様の声に耳を傾け、サービスに反映していく運営力も重要な要素です。PCからスマートフォンにデバイスが変化していてもこの点は変わりません。
　運営部門の仕事は、飲食チェーン店の運営のように、開店前準備、接客応対、そして一日の終わりには、その結果を本部へ報告するといった流れ。私たちの仕事は切り抜かれたゲーム事業の一部であり、それだけでは事業としてなかなか進歩が見出せないもの。しかし運営力が重要であるため、お客さまに一番近いポジションにいる立場を活かした運営ができれば、私たちを前進させてくれると考えています。
　今やスマホゲーム市場は成熟し、お客さまもそれなりに欲が出てきます。それらの声を安直に受け入れるのではなく、しっかりと情報を抽出・整理し、次の企画に活かせるようなスキルが求められます。とはいえ、日々の運営の中だけでは得られる情報はピンポイントに過ぎず、全体像をつかむのは難しい。レポートひとつにしても、成功に繋がる提言に結びつかなければ、本当の意味で価値のあるレポートとは言えない。そのように考えると、運営部門が次の段階へ進むためには情報収集力・分析力・提案力が不可欠となります。時間はかかりますが、組織のスキルとして根付くように「ピラミッド原則」を用いたロジカルシンキングを磨く場を設け、社員への課題としました。ある事例を掲げ、最終結論を導くために情報の整理、統合を繰り返し、本質的な情報を浮かび上がらせるもの。課題を面倒に感じるスタッフも少なくはありませんが、組織・社員のスキルアップに繋がればと思い、人材育成の一環として注力しています。

自立に向けた新事業

　これまではグループ内業務だけを請け負ってきましたが、この状況はグループの業績が傾けば、大きな影響を受けることになります。そこで大連拠点で自立できる体制作りに向け、小規模ではありますが、外部のお客様から仕事を受注する営業部門を設立し、７月より本格始動しています。
　日本では1本のスマホゲームを開発するのに平均1億円のコストがかかり、ゲームタイトル数も激増の一途で、販売しても売れるかどうかわからないというリスクを抱えています。海外展開は法律や文化の違いなどもあって成功が難しい一方で、海外から日本市場への進出は進んでいます。日本のゲーム会社は国内外の競争相手に対抗するべく、成長が難しくなってきたゲームタイトルの売却や運営代行の活用を進め、限られたリソースを新規開発に集中するケースも増えています。
　これまで自社製品に対し業務支援をしてきた実績と、日本と中国、韓国のゲーム市場への十二分な理解を有するNHNサービステクノロジー。日本から中国へ、そして中国から日本へ。進出に二の足を踏んでいる、変化する環境に合わせた運営に苦労している。そういった悩みを持つ企業様へ、ゲームタイトル運営代行という形でお役に立てれば幸いです。

昨年行ったNHN ST設立10周年記念イベントにて。10年を振り返るサンドアート動画では、思わず涙するスタッフも。共に戦ってきた仲間をたちを労いつつ、次の10年に向けさらなる活躍と発展を誓う場となりました。

PROFILE
いしかわとしろう

1978年生まれ、沖縄県出身。作曲やバンド活動など音楽を生業とする中、ゲーム業界に興味があったことで、2008年NHN JAPANに入社。その後NHN ST立ち上げに携わり、2009年大連へ赴任。PCゲーム関連の品質チェック、パート長、チーム長を経て、2016年日本向けサービス担当の副総経理に就任。趣味はエレクトリックギター、ポーカーテキサスホールデム。

＜石川さんを知るキーワード＞

学び得たことが形となる喜び