キーマンインタビュー

JETRO日本貿易振興機構(香港)
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JETRO日本貿易振興機構(香港)

所長 小野村 拓志氏

時代の要請に応えながら
世界の市場ニーズを捉え

日本企業の成長機会を創出


2011年以降、アベノミクスの政府戦略を踏まえ、ジェトロ香港ではどのような功績を挙げられたのかさらに、今後はどのような取り組みを検討されているのかに迫る


ジェトロ発足は大阪商工会議所から
 貿易を促進するにあたり、大阪商工会議所などに所属する企業が、一企業単位での海外マーケティングは難しいと判断し、海外の市場調査をするための組織を作ろうと発足したのが、1951年財団法人海外市場調査会であり、それがジェトロの原点でもあります。その後、1958年に政府系の機関である特殊法人日本貿易振興会となりました。そして現在ジェトロは、世界56カ国、海外に74事務所、国内に41事務所まで展開しています。ジェトロは、国の政策を本格的に実施する機関ですから、日本の成長に責任のある貢献をする使命を担っています。

輸入促進戦略/ニーズ対応の苦難
 1994年マドリードに駐在した時は、まさに「輸入促進」の時代で、ワインの蔵元や、生ハム・オリーブオイルの工場に出向き、試食選定し、スペインの製品を日本に紹介していました。しかし、ヨーロッパの職人の方々は商品に対して非常にプライドが高く、当時アジアでのGDP1位で、かつアジアの情報発信基地である日本に対しても、市場の文化・生活習慣に合わせた商品の改良をしようとしてくれない点が課題でした。例えば、スペインのコーヒーは、濃いエスプレッソが主流で、一口で飲めるような小さなカップで飲みますが、日本にはそのような文化がありませんでした。そのため、日本サイズのカップを作るように改良を提案しても対応は難しかったです。

「アベノミクス成長戦略」の導入
 2013年、アベノミクスで提示された「3本の矢」の3本目の矢となる「成長戦略」の一貫で、「輸出促進」と、「対日投資」が重点課題になりました。具体的には「農林水産物の輸出を20年までに現在の2倍の1兆円にする。さらに、対日投資も倍増する」のが目標です。安倍政権の第一の矢、第二の矢の施策後、西村副大臣、竹中平蔵氏らを香港に招き、アベノミクスセミナーを第1回(13年7月10日)、第2回(14年3月24日)と開催しました。すると、「副大臣がわざわざ香港に来港しガイダンスをした」という日本の本気度に感銘し、香港の銀行や企業から日本への信頼を急速に高めることができました。

ジェトロ香港の主な4つの功績
 常に、時代を先取りブームの創出を期待されている中で、一つ目の取り組みは、日本産酒類の輸出促進のため「ワイン&スピリッツ」への出展を実施したことです。初年度は、「日本酒」を出展し、「日本酒の醸造方法セミナー」で、日本酒の基礎知識を紹介しました。そして二年目は、「日本酒」に加え、「焼酎」、「泡盛」、さらに「酒器」も出展し、「酒器で味が異なるセミナー」で深堀し、三年目となる14年は、さらに「ウィスキー」「ワイン」などバリエーションを増やすとともに、食事との相性にも触れ、認知の高まりを実感しています。
 二つ目は、PM2.5など、世界的な環境問題に対峙するため「ECOEXPO」へ出展しました。13年度に初めて出展し、好評だった実績から、14年はさらに出展数を増やしたところ、昨年を上回る商談ができたようです。
 さらに三つ目は、ジェトロ事業を活用した日本への観光誘致の取り組みです。日本国総領事館、JNTO等と協力し、13年には「ラーメンフェスティバル」、14年には香港への輸出重点品目である「米」をテーマにした「ご当地グルメ展」を開催しました。日本の各地域のこだわりの名品に触れていただくことにより、ジェトロとしては新たなラーメン店さんの進出や地域の食品の輸出に貢献するとともに、各地域の観光促進にも繋げる取り組みです。毎日多くの方に来場いただき、閉店前に売り切れるほどの人気でした。最後の四つ目はおいしい日本食材をおいしいまま食べていただくための取り組みです。日本産のお米や肉、調味料、果物などの調理方法やノウハウを知ってもらうため香港のシェフや料理学校の生徒達を対象にセミナーを開催しました。一方、そんなノウハウがなくても「美味しく」食べられるよう「酢が上手く混ざる寿司米」や「硬水用のお茶」など、海外マーケットニーズに合わせた商品開発ができることも、日本企業の強みであると誇りに思います。

ジェトロ香港の未来への取り組み
 成熟した国内マーケットから世界を見渡すと、まだまだ成長が期待できる大きなマーケットが目の前にあります。これからは、海外にいるからこそ実感できるマーケットニーズを捉え、日本企業の皆様に具体的な提案をしていきたいと思います。
 「ジェトロの仕事は『繋ぐ』ことですから」と小野村氏。時代の要請を受け、日本企業と世界市場とを多く、そして強固に結びつける要として活躍されることを確信した。

毎月約200名の方々と出会い打ち合わせされている小野村氏。写真は、2014年3月に開催した「香港国際ダイヤモンド宝石真珠展」で、日本真珠をアピールするため紋付袴でサプライズ登壇された一幕


PROFILE

おのむら ひろし

1965年1月7日生まれ。上智大学法学部卒業。1988年4月同社に入社されて以降現在まで同社勤務。1990年輸入促進事業本部輸入促進企画チーム、1992年総務人事課、そして1994年マドリードセンター以降は、マレーシアなど海外経験を積まれ、2009年総務部人事課課長、2011年10月8日より香港事務所所長に就任され、現在に至る


〈小野村さんを知るキーワード〉

大学時代からの趣味はヨット


上智大学時代のヨット部所属以降、香港着任後に再開。海までのアクセスが良く自然が美しい香港はクルージングに最適な環境だそう。毎週(土)に開始されている二人乗りのレースで、2014年4月26日「クルーチャレンジ1位」受賞のトロフィー


手放せないお守りの数々


3種の神器の一つと紹介されたのは、たくさんのお守り。また、小野村氏の左手首に巻かれたお洒落な北欧製のお守りは、一つ一つのアイテムに禍除けの祈願がされ、自ら選び作るという。予期しないことが多かった人事時代に必需品になったそう


所長室の一角が酒器ギャラリー


日本酒、焼酎を広く紹介する仕事上、酒器により酒の味が全違うことを学び、「酒器コレクター」(笑)に転じたそう。所長室の一角に、日本産の焼き物の酒器がディスプレイされ、訪れたゲストも驚くとともに、思わず手に取ってみたくなる逸品が揃う


JETRO Hong Kong

Room 4001, 40/F, Hopewell Centre, 
183 Queens Rd East, Wan Chai, HK
℡ 2526-4067
www.jetro.go.jp



JETRO日本貿易振興機構(香港)

住所 Room 4001, 40/F, Hopewell Centre, 183 Queens Rd East, Wan Chai, HK MAP
電話 2526-4067

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