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商標に関する紛争および訴訟の紹介(6)

新「商標法」によって、中国が「混同理論」を商標権侵害の判断基準とすることがはじめて明確にされました。司法実務においては以前から「混同理論」が適用されているのはご存知のとおりです。

(1)狭義の混同
「狭義の混同」とは、消費者が企業主体を誤認することを指します。例えば、プリンターのトナーカートリッジを販売する企業がトナーカートリッジに「HP」という文字を表示していたとします。この企業が実際の名称と住所を表示していたとしても、消費者がトナーカートリッジ上の「HP」という文字を見て、当該企業がヒューレット・パッカードであり、当該トナーカートリッジがヒューレット・パッカード製品であると誤認すれば、商標の混同を構成することになります。「狭義の混同」においては、消費者に誤認が生じることが要件です。つまり、「狭義の混同」における混同の構成要件は「誤認」なのです。

(2)広義の混同

「広義の混同」では、消費者に混同の可能性があるか否かの判断がメインとなります。消費者に誤認が生じることは要件ではなく、消費者がその商品を見て別の商品を想起し、連想が生じるだけで要件は充足されます。「狭義の混同」では、次のように考えます。例えば、トナーカートリッジ販売企業がその販売するトナーカートリッジに企業の実際の名称と住所を表示し、「このトナーカートリッジはHP機種のプリンターに対応しています」と表示していたとします。これを見た消費者が、「HP機種のトナーカートリッジ」をヒューレット・パッカード製品であると誤認した場合には、消費者に誤認が生じているものの、トナーカートリッジ販売企業が「HP」を商標として使用したわけではないので、当該販売企業は商標権侵害行為を構成しない可能性があります。一方、「広義の混同」では、消費者に誤認が生じることは要件ではなく、消費者に実際の混同が生じていることも必要とされません。

新「商標法」の規定によれば、「容易に混同を招く場合は、登録商標専用権侵害行為に該当する」とされており、「容易に混同を招く」という部分で強調されているのは一種の可能性です。すなわち、「消費者の混同を招く可能性」があれば商標権侵害を構成することになります。


(3)混同に関するその他の判断要素

混同の可能性の判断においては、その他の要素の判断も必要になります。商標の知名度、商標の類似度および商品の類似度、原告・被告の製品品質および価格、商品購入者の成熟度等がその例です。例えば、2003年にトヨタ自動車が浙江吉利汽車公司を商標権侵害で提訴した美日(Merrie)図形商標事件においては、美日(Merrie)図形とトヨタの商標は類似であるのに、北京市中級人民法院は、「自動車製品の関連消費者に関していえば、係争自動車製品の外形、装備、性能、価格等をある程度詳しく知っており、国産車と合弁会社の製造する自動車についても認知度が高いため、美日(Merrie)図形商標が標識の役割を果たしている美日(Merrie)車の出所について誤認が生じ、またはそれとトヨタ図形商標が標識の役割を果たしているトヨタ車の間に特定のつながりがあると考えることはない。」との判断を示しました。つまり、法院は、この事件において、混同の概念を用いて判決を行ったのです。

ただし、消費者に混同の可能性があるか否かのみを判断すれば足り、その可能性があれば商標権侵害を構成するとの見解をとっている学者もいます。


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