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商標に関する紛争および訴訟の紹介(10)

新「商標法」第64条は、(1)商標不使用の状況における損害賠償請求の制限、および(2)善意の販売者が損害賠償責任を負わないこと、を定めています。


(1)商標不使用の状況における損害賠償請求の制限

新「商標法」第64条第1項は、「登録商標専用権者が賠償を請求し、権利侵害で訴えられた者が、登録商標専用権者が登録
標を使用していないことを以って抗弁した場合、人民法院は登録商標専用権者に、これより前3年以内に当該登録商標を実際に使用した証拠の提供を要求することが可能です。登録商標専用権者がこれより前3年以内に当該登録商標を使用したことを証明できず、権利侵害行為によりそのほかの損失を被ったことも証明できないときは、権利侵害で訴えられた者は賠償責任を負わない。」と定めています。登録商標3年不使用の状況は、他人の商標を抜け駆け登録したケースで生じることが多いようです。例えば、他者の商標を抜け駆け登録した者がいるとします。この者は、当該商標に関連する製品を実際には扱っておらず、関連するサービスも提供していないかもしれません。新「商標法」では、商標の悪意の抜け駆け登録を制限するために、第49条第2項において、登録商標が正当な理由なく継続して3年間使用されていない場合、いかなる者も商標局に当該登録商標の取消を申し立てることができると定めています。その一方で、権利者に登録商標の積極的な使用を促すために、第64条において、3年不使用の状況における権利者の損害賠償請求を制限しています。もっとも、通常、登録商標の使用を証明することは比較的容易です。例えば、登録商標の使用を他者に無償許諾している場合や、登録商標を商品パンフレットや名刺に印刷している場合等も、登録商標の使用と認定される可能性があります。


(2)善意の販売者は損害賠償責任を負わない

市場経済においては、小売業者の多くが他所から商品を買い入れて転売又は小売を行いますので、他人の登録商標専用権を侵害する行為が生じやすいといえます。新「商標法」第64条第2項は、「登録商標専用権を侵害する商品であることを知らずに販売し、当該商品が自らが合法的に取得したものであることを証明し、かつ提供元を明らかにすることができる場
合は、賠償責任を負わない。」と定めています。これは、商標法による善意の販売者に対する一種の保護です。では、販売者が善意であったのか、主観面の故意があったのかは、商標法上どのように判断されるのでしょうか。
同条項は、当該商品が自らが合法的に取得したものであることを証明し、かつ提供元を明らかにすることができる場合に限り、販売者に主観面の故意がなかったと認定する旨を厳格に定めています。当該商品が自らが合法的に取得したものであることを証明するには、販売者は正式な売買契約、支払記録、インボイス、貨物輸送証明等の証憑を提出して、当該商品を合法的ルートを通じて入手したことを証明する必要があります。
そして、提供者を明らかにするとは、販売者が当該商品の売り手の具体的な名称、住所、営業許可証のコピー等、当該売り手が実在することを証明できる証拠を提出することを指します。また、新商標法の第64条の適用を受けるため、権利侵害で訴えられた者が、商標専用権者の不使用であることの抗弁を提出する必要がある点に留意すべきです。


張 継文 律師 パートナー
北京中諮律師事務所
zhangjiwen@zhongzi.com.cn

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