キーマンインタビュー
- ビジネス記事
- キーマンインタビュー
香港金久有限公司
マネジャー 金子 晃久氏
柔軟に変化しながら
日本の味には真摯に、
漬物文化を広げていきたい
事業の幅を広げて香港で20年
香港金久は1992年、大手日系スーパーにお声がけいただき、出店したのが始まりです。金久4代目(現在は東京にいたか屋に親会社が変更)の父はビジネスを広げることに関心が強く、香港にもチャンスを感じて出店を決意したと聞いています。あれから約20年が経ちますが、今では12の売り場を日系スーパーをはじめ、地元高級スーパー内に出しているほか、飲食店にも漬物を卸しています。事業も広がりを見せ、7年前からは豆腐の製造販売、青果物の輸入販売を始めました。さらに、日本酒や加工食品の輸入販売もここ1年で開始しました。その背景には日本人駐在員の減少と、より安価な類似品が登場していることから、ビジネスを広げていく必要性を感じたということがあります。また、一部漬物を日本から輸送しているのですが、鮮度にこだわりたいためリーファー・コンテナ(冷蔵貨物)で運んでいます。そのコンテナのスペースを埋めるのも目的のひとつでした。今では収益の3割を占める売り上げの大きな柱ひとつになっています。青果物は主にスーパーや地元市場に卸しています。
べったら漬けからキムチの金久へ
変化を受け入れつつ守るこだわり
進出当初、香港の消費者に受け入れられるまで相当な苦労をしたと聞いています。日本ではべったら漬で知られていた当社ですが、香港でべったら漬は同じようには受け入れられませんでした。日本の漬け物に馴染みがなく、好む味付けも違い、気候も違うため日本のそのままを持ち込んでも味の感じ方が変わりますから当然ですね。ただ、私自身アメリカでの駐在経験を経て感じることは香港の方は好みがはっきりしているということです。アメリカの人たちは食べてみて「おいしい」と感じるか感じないかに重きを置いている一方、香港では「塩味と醤油味は苦手」など好みがはっきりしている。つまり、現地に根付く味付けが重要であると感じました。その中で、キムチは進出当初から好評でしたので香港人の好みにより合わせるために研究を重ね、私たちが「日本生まれ、香港育ちのキムチ」と呼んでいる現在の味にたどり着いたのです。韓国のキムチは熟成させ、酸味があるものが多いのですが、当社のキムチは日本の浅漬けに近く、フレッシュな味わいが売りです。日本のものより辛さを強めにし、香港の方の好みに合わせてひとつひとつ丁寧に作っています。このように、変化せざるを得ない部分は柔軟に変えつつも、核となるものは変えないことも大切にしています。例えば、福神漬けは七福神にちなんでいると言われるとおり、7つの野菜で通常作られますが、香港で販売されているものには大根だけで作ったものもあります。それを福神漬けと呼んでいいものかという気持ちがあり、当社では柔軟性を持たせつつも、老舗漬物屋として核となる部分については真摯に追求し、バランスを大切にしています。
漬物文化を広める使命感
現在、香港金久には50人のスタッフがおりますが日本人は私1人です。日本とは違うすべての面においてこの2年間は挑戦でした。香港のスピード感もそのひとつです。私が赴任した2012年当時、荃湾に日系の百貨店やスーパーはほとんどありませんでしたが、僅か2年で3つもオープンしました。郊外の開発が進んでいるのと、中心部の家賃高騰で、スーパーや百貨店さんの展開もめまぐるしく、当社もその影響で急な対応を迫られる経験がありました。そういう面でも事業のパイプを複数持っておくことが重要だと実感しています。ただし、漬物屋として創業した金久にとって、漬物製造と販売は主要事業であり続けることは変わりません。香港で漬物を製造する数少ない日本企業でもありますので、漬物文化を広めていく使命も感じています。ですので、スーパーや百貨店さが新規オープンする際にはぜひ声をかけていただき、当社も出店という形で皆さんを応援しつつ、香港の方により広く知っていただくことを続けたいと思っております。まだまだ香港の足元を固めるとが優先ですが、将来的にはシンガポールや中国大陸への進出も模索中です。現地に工場を構えるのか、香港からの受け取り手を探すのかという方法も含めて、需要に合わせて検討していきたいと思います。
課題はブームを継続させること
進出当初から一貫して、当社はスタッフをスーパーに配置し、試食販売を行うこと、お客さまに味の違いや商品の説明をすることに力を入れてきました。しかし、メディアで発信していくことの重要性も最近では肌で感じています。今まで人気がなかった商品でも「健康」という切り口でメディアで紹介された後は売り上げが確実に伸びました。一次的なブームで終わってしまっている現状をいかに飽きさせないように継続させていけるかということは私たちの今後の課題のひとつです。
現在12店の店舗を香港の日系スーパーや地元高級スーパーに構えている。オフィスに併設する工場ではキムチと豆腐の製造を行っている。キムチは鮮度を大切にし、手で一枚一枚タレ漬けて作っている。
PROFILE
かねこ あきひさ
1970年生まれ。米国の大学を卒業。政治活動に傾倒した後、23歳で金久入社。大阪の営業所で製造に従事した後、売り場を経て東京に戻る。品質管理、商品開発、農業開発、営業、工場管理など多岐に渡る業務を経験。28歳で会社が倒産し、買収先の東京にいたか屋に入社。アメリカ4年半を経て、2012年より現職。
<金子さんを知るキーワード>
寝ても起きても荃湾
オフィスも自宅も荃湾です。弊社のビルがある通りは工業ビルが立ち並ぶエリアで、食品の輸入を行う企業など同業者が集まっています。顔馴染みの方も多く、ちょっとしたコミュニティを感じています。中心部勤務の方には無い感覚かもしれません。
ゴルフで運動と交流
香港を歩いて覚える
市場調査をかねて、街歩きは意識的に行っています。地図を見ながら歩いて、エリアについて覚えていってます。その中で見つけたダイヤモンドヒル(鑽石山)の南蓮園池という庭園は、日本の金閣寺に似た建造物があり、とても良い庭園でした。お勧めです。
Unit A, G&H, 15/F, Evergain Centre,
43-57 Wang Wo Tsai St,
Tsuen Wan, NT
℡2686-1123合わせてチェックしたい!
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 上海伊藤忠商事有限公司/伊藤忠商事株式会社
- 董事総経理/執行役員 東アジア総代表補佐 水谷 秀文氏
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- Fine Vintage(Far East) Ltd.
- Director Hiromi Paine さん
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 東瀛遊 EGL Tours
- 主席兼執行董事 袁 文英氏
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- K & C Creation Ltd. (亞洲創造有限公司)
- Director 河野 正さん
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- 新華日本食品有限公司
- 董事総経理 蔡 紹霞氏
-
ビジネス記事キーマンインタビュー
- Social Unlimited Limited
- Director 柿元 理榮さん