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上海自由貿易区の法制度について(3) ~金融分野の開放を中心に~

今回は、中国人民銀行が2013年12月2日に公布した実施意見を中心に、自由貿易区内の金融措施について解説します。


 金融分野の開放は、上海自由貿易区において実施される主要任務の1つとして挙げられています。


(1)金融分野参入の開放


 国務院が公布した上海自由貿易区に関する全体方案(以下「全体方案」という)及び中国銀監会の通知では、一定条件を満たす民営資本及び外資金融機関に対し、金融サービス業の全面的な開放を促すとし、区内で外資独資及び中外合弁による銀行の設立、ノンバンク金融機関の設立を支持すること、外資専門の医療保険会社の設立のパイロット試験を実施すること、ファイナンスリース会社による商業ファクタリング兼業を許可すること等を規定しています。


(2)金融制度のイノベーション


 「全体方案」は、上海自由貿易区内において、人民元資本項目の自由兌換や、金融市場の利率市場化、人民元のクロスボーダー取引、国際化に向けた外貨管理改革の試行を模索し、自由貿易区と適応する外貨管理体制を構築すると述べています。その後、中国人民銀行が実施意見(以下「人民銀行意見」)を公布し、「全体方案」に定める金融革新を具体化しており、その中で以下の2点がとりわけ注目を浴びています。


①自由貿易口座の導入


 人民銀行意見により、上海自由貿易区内に「自由貿易口座」が導入されました。区内企業及び区外企業は、それぞれ上海自由貿易区内の銀行で「居住者自由貿易口座」及び「非居住者自由貿易口座」を開設できます。これらの自由貿易口座は一種のオフショア口座として管理されます。また、自由貿易口座の資金は海外投資に使用することが認められます。なお、上海自由貿易区外の一般政策としては、オフショア口座の開設が非居住者にのみ認められ、居住者には認められていません。

 また、条件が成熟した場合に、自由貿易口座内の人民元・外貨資金の自由な両替を認めると規定されています。


②外商投資及び外債借入に関する外貨管理改革 


 現行法上、中国国内への外商投資及び国内企業による海外投資について、まず投資主管部門と外貨管理部門の認可を得て、初めて銀行における受け払い・両替の手続を行うことができます。人民銀行意見によれば、上海自由貿易区内でのクロスボーダー直接投資に関しては、審査認可を待たずに、直接銀行で受け払い・両替業務を行うことができるとし、かつ直接投資に関する外貨管理をすべて外貨管理局から銀行に委譲されています。なお、上海自由貿易区外では、外商投資企業の資本金について、その都度人民元への両替手続を行う必要があり、かつ人民元転後の資金を他社への投資等に使用することが禁止されていますが、自由貿易区内では、「取引の真実性及びデータ収集の完全性を保証するという条件の下」で自由な人民元転を認めることも規定されています。

 外債関連について、人民銀行意見によると、上海自由貿易区内の内・外資会社はともに外債の借入が可能、区外でハードルの高い中国国内資本の会社による外債の借入が、区内では開放されたと考えられます。

 しかし、金融革新に関する現在の法令は依然として抽象的な規定を行うに留めた部分が多く、実務運用が可能なレベルまで詳細な規定が設けられていません。従って、上海自由貿易区における金融制度の革新をめぐり、更なる細則の公布を待つ必要があると考えます。

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