キーマンインタビュー

自分の個性が輝く生き方を見つけるための対話。コーチングを通じ、一人ひとりの充実した人生をサポートする久野さんにお話を伺った。

「きちんと話を聞いてもらう」こと

　「パーソナル・コーチング」に出会ったのは、香港での新規エアライン立ち上げに携わり、新人CAの研修・指導を担当していた頃でした。数十人を前にレクチャーする日々は、充実していてやりがいがありましたが、今思えば、未来を模索していた時期でもあり、何か一歩先へ進むヒントを探していたのだと思います。知り合いにパーソナル・コーチを紹介してもらったのをきっかけに、初めてコーチングを受けました。
　そのコーチングでの対話が、忘れられない経験になりました。ニュートラルな態度で耳を傾けてくれるコーチを前に話をするうち、まるで玉ねぎの皮が剥けていくように自分自身の思考や想いが見えてきたのです。一人ではたどり着けなかった気づきをもたらす「きちんと話を聞く」という行為の深さ、そして一方通行の「ティーチング」ではなく、相手に向き合い丁寧に思いを引き出していく「コーチング」というアプローチに、「自分が進むべきはこれではないか」と感じました。
 
コーチングは「もぐらたたき」

　「コーチング」の基本は、「映し鏡」になることです。コーチは何かを教える先生ではなく、あくまでクライアント自身が自分の頭で考え、そうして辿り着いた思考に紐付いた行動ができるようになることをお手伝いする立場。お話をする中で、ふとした仕草や表情、口をついて出た言葉に、その方の「核」が見え隠れします。そこで、その言葉を繰り返してみたり、続きを引き出す質問を投げかけて、その「核」を追いかけるのです。まるでもぐらたたきのように、こっちかな、あっちかな、とコーチが追いかけているうちに、クライアントの中で、その「核」が明確になっていきます。「導いてほしい」「教えてほしい」という依存の態度ではなく、自分自身を知り、それをきっかけに自分が変わるんだ、と、自ら主導権を握り、選択した行動にコミットしていけるクライアントは、セッションを受けるうちにどんどん変わっていきます。
　コーチングでは、様々なメソッドやテクニックを用いています。例えば「Talent Focus®」という、その人の強みや才能を見つけ、開花を促すアセスメント。自分の性質と傾向を知り、自身の真の強みを生かすことで、自分らしさを発揮した生き方ができるようになります。また、「Points of You®」は、65枚の写真カードを「思考の媒体」として使うメソッド。写真の絵を糸口に、頭の中にあることを表現します。視覚からアプローチして、「言葉」の概念に制限されない発想をふくらませます。いずれも、他者との関わり合い、チームワーク、コミュニケーションにも非常に有効で、「働く場」でも大いに活用できるツールです。 

コーチングを通して香港へ恩返しを

　香港へ来て22年、今になってようやくですが、広東語を学ぼうと決意しました。これまで人生の充実した時を過ごさせてもらってきた香港に、恩返しをする時期だなと感じています。もっと香港のローカル社会との関わりを深めていきたい。これまでも香港人コーチたちのネットワークに参加し、お世話になってきたのですが、その先輩たちにアドバイスを頂きながら、今年、在港の日本人コーチのネットワークを立ち上げました。香港で、また何らか香港に関わりを持ってコーチングをしているメンバーで、気軽に受けていただけるトライアルセッションや、教育・スポーツ・子育てなどの分野と連携したセミナーを開催していく予定です。せっかく与えられた人生の大切な時間。自分らしく充実して生きられるよう、コーチングを通してお手伝いしていけたらと願っています。

PROFILE

くの みほ

1996年から9年間、キャセイ・パシフィック航空で客室乗務員として勤務した後、2006年から新規航空会社で新人研修・指導を担当。情熱を傾けるタンゴを学ぶため、家族でのブエノスアイレス移住を経て、2013年、香港大学でExecutive Diploma in Corporate Coaching取得、パーソナルコーチとして活動を始める。


自分の強みを探る「才能開花セミナー」


「Points of You」のカラフルな写真を使って