キーマンインタビュー

久保田米業(香港)有限公司
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久保田米業(香港)有限公司

ディレクター 久保 力氏

現地精米で切り開く日本米の新境地海外販売で日本の農業を支援応援

日本農業の海外における需要拡大を目的として2011年に設立された同社。香港で日本と遜色ない供給体制と製品管理体制を築く過程や今後の取り組みについて伺った。


日本米輸出で農業を元気づける


 久保田米業は、食料分野、特に米に注目し、日本農業の大きな課題である海外における需要拡大を目的として2011年に設立されました。
 久保田米業の親会社である株式会社クボタは農業機械のトップメーカーです。現在、日本では食生活の多様化(欧米化)、少子・高齢化により、米の消費量は減少し続けています。さらに、米の価格を維持するための生産調整政策により、国内で流通できる米の量が規制されています。生産者である農家が優れた技術を持っていても、消費が拡大しなければ生産の規模を大きくすることはできません。この局面を打開するには、海外市場が必要です。海外での消費者・販売ルートを確保すれば、農家は「輸出用米」として生産を拡大することができ、農業の活性化につながるのではないかと考えました。
 当社の使命は、日本食文化の浸透している香港で日本と遜色ない供給体制と製品管理体制を築き、より安全で高品質な米を供給すること。そして、香港での日本米販売の拡大により、日本の農業を元気づけることです。
 現在、当社は日本本社の農業機械メーカーの総合力を活かし、日本各地の農家と契約し、年間約1000トンの日本米を香港で販売しています。 香港で販売されている日本米の約三分の一を占めています。


「玄米輸出と現地精米」という新たな発想


 初期の市場調査によると、「日本米は高いわりにあまり美味しくない」というのが香港での一般的な評価でした。さらなる調査で、日本米の供給に問題があるということが判明しました。
 これまでの日本米の輸出のほとんどは、日本で精米した米を輸送し現地で販売していました。精米した米が消費者の手に届くまで、約3カ月の時間が必要です。しかし、米は生き物です。この方法では、時間とともに鮮度が落ち、日本米が持つ本来の味を現地で再現
することができません。そこで、当社では 「玄米輸出と現地精米」という供給体制を採用しました。鮮度を保つため、集荷した米はすべて玄米の状態で輸出し、香港にある当社の冷蔵倉庫で保管、注文を受けてから自社の精米機で精米し販売するという仕組みです。この方法は、サンプリング段階で好評が相次いでおり、「日本で食べるのと同じ、もしくはそれ以上」などと、とても嬉しい言葉をいただきました。
 また、日本米の炊飯に慣れていない香港のお客様のために、保管方法、洗米・吸水など美味しいご飯を炊くためのポイントをまとめたチラシを売り場で配布したり、提携先の飲食店を訪れ、スタッフのための炊飯研修を行うなど、日本米の美味しさを存分に味わってもらうためのの工夫も凝らしています。


業務用米から販売ルートを打開


 米の消費習慣や流通形態などを調べていく中で明らかになったのは、香港の米の約 9割は、外食産業など業務用として消費されていることでした。香港は日本と比べて著しく外食回数が多いです。それなら、外食、特に日本料理店をメインターゲットに日本米を供給し、それを皮切りに、小売りや一般家庭の食卓への普及を図ることにしました。現在、当社の日本米の8割は業務用として、香港の日本料理を中心に取り扱っていただいています。小売りでは、オンラインショップの「PRIME MARKET」のほか、UNY、イオンなどの日系スーパーマーケットで販売しており、さらに近々、現地の大手スーパー「ParknShop」にも置いていただくことになりました。
 香港の方々が好むのは、噛み応えがあり、若干硬めの、粘り気の少ないお米です。当初は、日本米といったら「コシヒカリ」とほぼコシヒカリ一本でやっていましたが、粘りのある柔らかい食感はあまり好評ではありませんでした。逆に、大粒で、粘りの少ない福井県や愛知県の米が人気です。当社が香港に進出して早5年になりますが、今まで蓄積したデータを活かし、日本の農家と連携を強化しながら、もっと売れる米を作っていけたらと考えます。


文化の枠組みを超えて日本米を紹介


 現在、日本料理店を中心に販売をしていますが、日本米は中華料理や西洋料理にも華を添える本質であると信じています。日本米の抜群の吸水性はリゾットに向いていると思いますし、冷めても美味しいという特徴はチャーハンなどの料理の美味しさを長持ちさせることができると考えます。ですから、日本料理以外での販売ルートも積極的に開拓していきたいです。
 当社が事業展開する上での大きな課題は設備規模の拡大です。現在、社内にある精米機は、1日5トンの精米が上限です。今後はより多くの設備を導入し、販売を拡大するとともに、現地精米のサービスなど多岐にわたる展開ができるのではないかと期待しています。


現在、久保田米業(香港)有限公司の米を使用している香港の飲食店は約200店舗、写真中央の看板が目印。オーダーを受けてから社内で精米された日本米は、業務用の水色パッケージ(左)で届けている。


PROFILE

くぼ つとむ

1965年生まれの東京出身。1989年早稲田大学を卒業し、株式会社クボタに入社。日本では、農業機械の営業を担当し、関東・新潟・東北・九州を中心に農業が活発な地域の営業で赴任。2016年1月に来港し、香港での日本米の供給体制や製品の管理から販売ルートの開拓までの全般を監修。現在、精米設備の増加を検討中。


<久保さんを知るキーワード>

One for all, all for one

仕事をしていく上で一番大切にしているのはチームワークです。人は一人では何もできません。ラグビーの「One for all, all for one」精神を貫き、スタッフ一同助け合い、励まし合いながら、目標に向かって進むチームにしていけたらと思います。


もっと練習に励みたいゴルフ


ゴルフが大好きです。しかし、香港ではゴルフ場の確保が大変難しいので、月1~2回、中国本土またはマカオでゴルフをしています。なかなか練習できないので、いざプレイをするときも思うように打てないときが多いです。大変悩ましい!


家族も感動した旨い寿司

銅鑼湾と尖沙咀の2店舗で展開するすし廣さんは、久保田米業のお米が初めて香港で使われた飲食店です。日本に居た頃は、こんな立派なお寿司屋さんの行くチャンスがめったになかったので、食べに行ったとき家族にとても感動されました(笑)。






久保田米業(香港)有限公司

住所 4/F, Ever Gain Bldg, 21-23 Yuen Shun Circuit, Shatin, NT
電話 852-3184-0918

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