キーマンインタビュー

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商学院 教授 牧野 成史さん

MBA教育に携わり20年「授業は毎回が勝負」


1995年の着任以来、香港中文大学で教鞭をとる牧野教授に、香港のMBAコースで学ぶ意味や大学教育の国際化について伺った。


銀行員からMBAの道へ

 大学を卒業し、銀行に数年勤めた後で国内のMBAに入学。在学中に短期交換留学したカナダの大学で人生を変える出会いを得ました。80年代後半当時、欧米ではトヨタなど日本企業が高く評価されていましたが、愛知出身だったこともあり、その理想化された「日本礼賛」へ疑問を呈するレポートを提出。その論文を読んだ教授が、自分のもとで学ばないかと声をかけてくれたのです。迷いましたが、自宅にまで電話をくださったその熱意に「やってみよう」と決心しました。
 それから5年間の博士課程は、文字通り勉強漬けの日々でした。北米の教育スタイルは一言で言えば「限界を超えさせる」。一日で本一冊と関連資料という膨大な量の課題に脱落者も出ましたが、自分は会社を辞めて来たのにこのまま帰れない、と必死でした。いま思えば、内容もさることながら、そうやって脳の飽和状態のさらに上を経験することで、大量の情報を効率よく処理し、物事の本質を見極めるというコアスキルを磨いていたのだと思います。

香港中文大学への着任

 1995年に無事博士号を取得し、帰国して日本の大学に就職するつもりでしたがまったく空きはなし。インターネットで海外の情報を検索し見つけたのが香港中文大学でした。それまで香港を訪れたこともなく、中文大も知りませんでしたが、同級生の香港人に尋ねると「とてもいい大学だ」と。採用は電話一本で決まりました。
 現在は主にパートタイムのMBAで教えています。学生は30代半ばから40代、実務ではマネジャーレベルの人材。若い世代のフルタイムの学生が理論や経営知識を求めるのに比べ、パートタイムでは「新たなものの見方を獲得する」ことが主眼。日々実務で不確実な状況に直面しながら、これまでの方法を越える何か新たなきっかけをつかみたい。年代的にもちょうど人生の岐路に立ち、迷っている学生たちに応えるべく私も全力です。
 授業はディスカッション形式ですが、価値観の多様な学生たちが議論を戦わせる場で、自分の立場は「交通整理」役だと思っています。各自の個性、アイデアが活きるよううまくリードする。これは20年経った今でも慣れず、毎回の授業が勝負です。議論が白熱することもありますが、ひとたび「そもそもの根本原因は何か?」という問題意識が共有されるや議論が急展開を見せる。そんな瞬間にはいつも背筋がぞくぞくします。

「香港」という土地で学ぶ

 1995年の着任当初、香港はまだ英国の植民地でした。教員は英国人をはじめ外国籍が多く、午後にはアフタヌーン・ティーの時間もありました。対する学生はほぼ香港人でしたが、この20年の間に大学の国際化に向けた改革が進み、今では学生の構成も多様化しました。MBAコースも、香港出身者より中国本土、アジア圏、欧米からの留学生が多数を占めます。以前は日本人学生がほとんどいなかったのですが、当時日本総領事だった北村隆則氏の協力のもと2006年から2010年に日本人対象のMBA奨学金を実施、その効果もあり徐々に増え現在では毎年数人が学んでいます。
 香港は、画一的な枠に収まらない人を許容する「スペース」のある社会で、そもそも外国人には住みやすい土地だと感じていますが、中国がグローバルな存在感を増すなど世界が大きく変化しつつあるなかで、人を育てる大学教育もさらなる国際化が必須です。今年から導入されたオンライン授業なども含め、今後も多様な人材がより学びやすい環境の整備を進めていきます。

PROFILE

まきの しげふみ

愛知県出身。慶應義塾大学法学部およびビジネススクール卒業。ウエスタン・オンタリオ大学にてPhD取得。1995年に来港、香港中文大学商学院で教鞭をとる。商学院マネジメント学科長歴任(2007‐2013年)。2009年アジアで二人目の国際経営学会フェローに選出。2013年より同大学国際経営研究所所長。



活気あふれるMBAの学生たち



香港中文大学の同僚と




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