キーマンインタビュー

和民国際有限公司
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和民国際有限公司

代表取締役社長 桑原 豊氏

積極的な情報発信と多業態戦略で香港事業の新境地を打開


2001年に初の海外拠点を香港に設置したワタミグループ。食文化の違いなど挑戦的な環境で事業を築き上げた道のりと、今後のアジア展開について伺った。


初の海外拠点を香港に設立


 初めて居食屋「和民」が香港に進出したのは2001年のことで、グループ初の海外拠点となりました。実は当時、和民は日本で200店舗を突破したばかり、まだまだ国内での展開に力を入れていた時期でしたので、海外進出は視野に入れていませんでした。しかし、上海でぜひフランチャイズを展開したいという非常に熱心な方からのお話があり、和民が社員向けのダイレクトフランチャイズしか提供していないと聞くと、その方は入社し、いち店員から仕事を始めたのです。その誠意に打たれ、当社は本格的に上海進出を検討し始めました。しかし、現地での視察を経て、上海での展開はまだ少し早いという結論に至り、代わりに文化的にも日本食を受け入れやすい香港への出店を決定しました。


挑戦に満ちた香港事業


 居食屋「和民」はメニューのバラエティに富んでいるのが特徴です。数多くある料理のレシピや食材はできる限り日本のものを採用するなど、日本クオリティをシェアして楽しく食べられるお店がコンセプトです。香港の方々には幸いながら、1号店から受け入れていただきました。ショッピングモールを中心に展開しているので、家族で来店するお客様も想定し、料理の分量を増やしたり、お酒を飲まないお客様のためにソフトドリンクやお茶の種類を増やすなどローカライズに努めました。
 味つけはなるべく、日本の味そのままをお届けしたかったのですが、香港のお客様から「しょっぱい」という声を多くいただきました。料理はお酒と楽しむときは「一口目がおいしい」(アクセントのある味)、飲まないで楽しむときは「最後まで食べたときにおいしい」(まろやかな味)が大事です。しかし、現地の味に合わせすぎるとそれは「日式料理」(香港のローカル日本料理)と何の変りもありません。そこで、普段から居食屋「和民」を食べているローカルスタッフに協力してもらい、味付けを見直しました。メニューごとに、日本の味の100%、90%、 80%
などと、実に一品一品を調整し、今の味付けになりました。
 また、香港では短い土地契約と高騰する賃貸料が大きな挑戦です。日本の物件は、5〜10年での契約更新を前提にしているため、比較的長い減価償却期間が得られます。それが香港だと契約期間が2~3年の場合が多く、食材コストから客単価までゼロから見直す必要がありました。現在香港の賃貸料金は7年前に比較すると、倍に値上げをされています。それも、香港市場が成長している証拠だと捉え、経営スタンスを合わせていく所存です。


情報発信で和民ブランドをアピール


 香港でのビジネスは、仕入れ先や賃貸人、物流業者などの関わる全ての方とのネットワークがとても肝心です。業績が良いときは情報が自然と入ってきますが、そうでないときは声が掛からなくなります。日本以上に密にコミュニケーションをしなければなりません。香港で就任してからは、情報発信の大切さを痛切に感じました。そこで、2015年7月、銅鑼湾の居食屋「和民」のコンセプトショップの開店を機に広報部を設立しました。メディア向けには新店舗情報や新メニューなど「和民ブランド」をアピールし、業務関係者にはワタミの企業概要や展開方針などを定期的にお伝えしています。今年の3月に焼き鳥バー「FIREBIRD」がオープンした時は、SNSに700万以上のアクセスがあり、発信し続ける大切さを実感しています。


多業態戦略で新境地を打開


 居食屋「和民」のみの展開では、香港の750万人のマーケットに限界があります。現在は、「和民」、「和亭」、「kitchen J」、「FIREBIRD」、「GOCHISO」など立地、客単価が異なる5業態で展開しています。創業当時の経営目的が「一人でも多くのお客様に美味しさをお届けする」ことでしたので、今後も積極的に店舗数を増やし、香港では100店舗を目指しています。「和民」として出店できない小さな商圏には、低価格なオプションで来店頻度を高めるように努めています。例えば、現在「和亭」では、朝食メニューを検討しています。焼き魚、ごはんと味噌汁がついて和定食や香港スタイルの洋定食$30前後で提供し、来年は本格的に「和亭」の各店舗で実施して行く予定です。
 また、香港を拠点にアジアでの展開もさらに強化していく予定です。台湾でオープンした「饗和民」は良い反響を受けており、韓国では、フランチャイズのオーナー募集を今年の11月から開始します。また、シンガポールの5店舗は、鍋もの、北海道食材、肉割烹などそれぞれのテーマに特化したお店にリニューアルし、カンボジアでは2号店開店が2年後に控えています。多業態展開でより多くの客層にアプローチし、日本のエッセンスが詰まった料理を世界各地で楽しんでいただくのが目標です。





ワタミ香港毎年恒例の旧正月パーティで、財神に扮して登場した桑原さん。感謝の気持ちを込めて社員に「利是(お年玉)」を配布。写真はセントラルキッチンのスタッフ一同と。


PROFILE

くわばら ゆたか

1958年生まれ、東京都出身。1998年「ワタミフードサービス」株式会社(現ワタミ株式会社)に加入。同年、営業本部長、翌1年常務取締役営業本部長に就任。2004年ワタミダイレクトフランチャイズシステムズ株式会社、代表取締役社長COO就任。2009年6月ワタミ株式会社、代表取締役社長に就任し、現在に至る。


<桑原さんを知るキーワード>

日本と香港の架け橋を担う


毎月1回は日本本社でのミーティングに参加する桑原さん。日本の最新情報を香港へ持ち帰ったり、逆に香港事情を日本へ伝えたりと、情報交換を重視。また、クルージングやゴルフなど、日本でのルーティンも楽しみ、写真は三社祭に参加した際のもの。


バラエティ豊かな香港に魅了


来港約1年半の桑原さんは香港が初の海外赴任。モダンな街もあれば、浅草育ちの桑原さんには懐かしい、昔ながらの下町のが混在しているところがお気に入り。広東語で現地の方々と密なコミュニケーション取れるようにと、現在広東語を勉強中。


食べながら飲む文化を紹介


お酒を飲む店と食事をする店を分けることが多い香港。そんな香港の方々に、飲みながら食べるという「居酒屋文化」を紹介するべく、今年の夏に焼き鳥バー「FireBird」をオープン。モール展開がメインの和民の香港初の路上店となった。





和民国際有限公司

住所 13/F, Chong Yip St, Kwun Tong, KLN
電話 852-2317-1028

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