キーマンインタビュー

日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所
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日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所

所長 伊藤 亮一氏

地方の連携を強化し発見に満ちた新しい日本を香港にアピール


香港で日本の貿易をサポートするジェトロ香港は、2015年8月、新たに伊藤亮一氏を所長に迎えた。今回は、伊藤所長に香港市場の現状と今後の展望について伺った。


香港で日本の貿易をサポート


 日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所では、日本から香港への輸出、企業進出および香港からの対日投資を全面的にサポートしています。企業進出や対日投資の業務は約3割程度で、日本から香港への農産物、商品・サービスの輸出が主要業務となります。それでも、香港への投資についての相談は就任してからすでに10件以上受けており、香港が注目されている市場だとは認識しています。香港への投資・企業進出に関しては、香港側で必要な手続き・ライセンス申請のアドバイスはもちろん、法律・税務等の最新情報を伝えるセミナーも開催しています。また、市場調査や香港で開催される国際見本市で「ジャパン・パビリオン」を設け、日本企業の出展支援も行っています。
 アジアで展開を図る日本企業は、それぞれの地域を特性を踏まえて戦略を構築しています。例えば、東南アジア諸国連合(ASEAN)では製造業の投資、中国へはその巨大市場を目的とした生産やサービスの展開が主流となっています。また、中国市場といっても、地域によって特徴が大きく変わりますので、一言で片づけるのはとても危険だと考えます。一つひとつの地域の特徴を把握することが大切です。

日本の「新しい発見」を香港に


 香港は規制のない自由市場が大きな魅力です。香港人は所得水準が高く、洗練されています。それ故に「日本のものが売れないわけがない」と考えている日本企業の方々もいます。私自身も最初はそのような印象を持っていましたが、2、3カ月でそう甘くないと実感しました。香港の方には、できるだけ安い価格で商品・サービスを購入したいという気持ちがあります。それが、ありきたりな商品やサービスならなおさらです。他の国のサプライヤーととことん比較して、より手頃なものを求めます。しかし、その一方、香港の方々は好奇心が旺盛です。見たことのない商品や食べたことのない味など、「Something new(新しいもの)」や「Something unknown(未知のもの)」に対しては敏感で、その価値に納得すれば高いお金も喜んで出してくれます。香港を目指す日本企業に言いたいのは、自社の製品を「素晴らしいから買ってください」と言うだけでなく、香港の人に「新しい発見」を伝えることが大切だということです。商品やサービスの背景やこだわりを説明し、付加価値を高める、というのは良い例です。例えば、日本酒なら、原材料や生産過程を説明し、他の酒と何故味や値段が違うのかをしっかり分かってもらうことが大切です。このように、商品やサービスをその背後にある「ストーリー」と一緒に売り、Accountability(説明責任)をしっかり果たさないと、競争の激しい香港市場で足場を固めるのは難しいと思います。

「地方」をキーワードに連携を強化

 今、ジェトロの大きな課題となっているのは対日投資の拡大と地方の連携を強化することです。現在香港では、農産物の輸出が一番主要な業務となっていますが、そのボリュームを落とさずに、対日投資の比重を増やしていきたいと考えます。現に、近年大きく飛躍した訪日観光のおかげで、地方で宿泊施設などのインフラストラクチャー投資に関心を示している香港の投資者は少なくありません。そういった方々のサポートをしっかり行い、実績に繋げていければと考えます。
 また、日本の貿易支援に関しては、「地方」をキーワードに横の連携を強化していきたいと考えます。現在日本全国の多くの地方都市が、香港、そしてアジアへの輸出や投資を図り、また、観光などのインバウンドビジネスにも力を入れています。そういった地方の資源をバラバラに紹介するよりも、県や市の縦割りを越えた横の結びつきを強化したほうが効率的だといえます。例えば、熊本県・宮崎県・鹿児島県が「南九州」としての共同プロモーションを始めています。現在、熊本、宮崎、鹿児島へは、香港航空が各県週2~3便飛ばしていますが、3つの県を合わせると実は毎日就航しているのです。それなら、「南九州」として観光資源を共有し、熊本県から入って宮崎を回り、鹿児島から出るという3県にとってWin-Winな関係が築けます。
 地方自治体は日本国内のパイに加え、成長するアジアの需要を取り込もうとしています。その取り組みを「点」で終わらせることなく「線」或いは「面」に仕向けていくことがジェトロで注力するべき方向性だと考えます。「All Japan」としてのプロモーションがその取り組みのひとつです。それを具現化する手段として今年10、11月に行う「日本秋祭in香港―魅力再発見―」に大いに期待しています。日本文化に触れてくれている香港の方々への感謝の気持ちを込めて、イベントやセミナーなどを開催する予定です。「1+1」の結果が2ではなく、3にも4にもなるような機会にしていきたいと考えます。


香港着任早々、大型国際食品見本市「Food Expo」に参加。ジェトロが運営するジャパンパビリオンに加えて、イオン香港を6次化商品等のテスト販売の拠点として活用し、相乗効果を図る。


PROFILE

いとう りょういち

1986年、中央大学経済学部卒業。同年4月日本貿易振興会に入会、経済情報部計量分析チームを皮切りに、アジア大洋州課、国際経済課と調査畑中心に歩む。1990年にジェトロ・マニラへ赴任。その後、ジェトロ山形所長、海外調査部アジア大洋州課長、ジェトロ・マニラ所長を経て、2015年8月よりジェトロ香港の所長に着任。


<伊藤さんを知るキーワード>

気分転換にはジョギング!


ジョギングは、健康維持のため香港で身につけた習慣だと話してくれた伊藤さん。時には朝の仕事前に走ることもあるが、大抵は週末に70~80分ほどジムで走っているとのこと。しっかり汗を流し、スッキリした気分で次週に備えている。


愛犬との再会が待ち遠しい


香港赴任となり、日本で飼っている愛犬のMaxと離れ離れになり少し寂しい想いをしている伊藤さん。幸い、日本へ出張する機会もあり、年に数回短い再会を満喫できる。先月日本へ出張したばかりの伊藤さんだが、すでに再会が待ち遠しいとのこと。


ラマ島のハイキングライフ


ラマ島でのハイキングが忘れられず、今やハイキングブーム到来の伊藤さん。海あり、山ありの自然溢れる風景に魅せられ、これを皮切りに、もっと香港の様々なルートを探索したいと考えているそうだ。トレッキング用シューズを購入し、やる気満々。




日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所

住所 Rm4001, 40/F, Hopewell Centre, 183 Queen's Rd East, Wan Chai, HK MAP
電話 852-2526-4067

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