キーマンインタビュー

｢日本品質｣クリーニング

1965年に戦後初の海外拠点として香港に「恒隆白洋舍」を立ち上げ、今年6月で50周年を迎える同社。今回は、今後どのような展望を抱かれているかに迫る。

　来年３月に創業１１０周年を迎える日本の白洋舍は、１９０６年、創業者五十嵐健治氏が日本橋で開業し、翌年には日本で初めてドライクリーニング業を営んだ会社だ。１９６５年に戦後初となる海外拠点を香港に立ち上げ、今年で節目の50周年を迎える。2014年に来港された横溝氏に、香港拠点立ち上げ時の苦難を踏まえた今後の展望について伺った。

出会いの｢縁｣が紡いだ香港出店

　創業当時は、ドライクリーニングを営む会社はほとんど無く、現在でも香港では主流なクリーニングスタイルである洗濯代行業と言われる「ランドリー（水洗い）」業の個人店が多かったようです。当時の香港ではまだ、ドライクリーニングを必要とするスーツやコート等を日常的に着用される生活水準の高い、いわゆる上流層のみのご利用で、ドライクリーニングの需要が少なく、クリーニングの仕事としては、ランドリー業務が主体となっていたという時代背景だったようです。しかも創業の翌年、１９６６年に中国で始まった文化大革命の影響を香港も受け、市内では暴動やテロ等が勃発し、激動の時代を迎えることになります。さらには、世界的な金融危機が追い討ちをかけ、商売をする上で大変厳しい時代でした。また、当時、香港は深刻な水不足でもあり、さらに、水質が悪いこともあり、日本仕込みの運用ラインで操業することが大変困難を極めたと聞いています。

危機を救ってくれた｢集配サービス｣

　1997年のイギリスから中国への返還前には、多くの富裕層の方々が海外へ移住されてしまいました。その危機的な状況を救ってくれたのが「集配サービス」です。営業スタッフが集配車で、お客様宅へ直接クリーニング品の引き取り・お届けをするサービスです。それまでは、店でお客様のご来店をお待ちしていただけの営業から、お客様のところへ伺う攻める営業への転換です。現在も20名の営業スタッフが、日曜・祝日以外の毎日集配をしており、高いニーズを実感しています。

　今年の６月４日に香港創業50周年を迎え、その感謝を込めて、３つのプロモーションを行います。
　一つ目は、お客様への｢感謝キャンペーン（５月１日～６月30日）｣を実施します。ご利用して頂いたお客様の中から抽選で、日本への往復航空券やホテル食事券・お買物券等が当たるラッキードローを開催します。
　二つ目は、ささやかですが社会貢献をいたします。「50周年キャンペーン」期間中の売上金の一部を香港の救世軍に寄付し、香港の恵まれない方々への社会奉仕をいたします。
  三つ目は、さらなるお客様のご要望ご期待にお応え出来るように、社内改善に取り組みます。すでに今春、工場内のレイアウト変更を実施し、作業動線の改善を図り、合わせて空調・照明等も整備して快適な職場環境にしました。上質な品質は、仕事のしやすいキレイな職場からしか生まれないと考えています。また、工場・営業ともに、今春から技術資格試験制度を導入しました。工場では、しみ抜きや仕上げ等の技術レベルを審査し、営業においては、受付時の検品確認や接客所作を試験しました。いずれも、お客様のご満足を高めるべくトータル品質の向上に向けた取り組みです。

さらなる「日本品質」を高める追求

　今春より、さらなる上質な「日本品質」の提供として、高級クリーニング「高級衣物護理／GRAND　FABRIC　CARE」の受付を始めました。（価格例：スーツ一般＄１２０↓高級＄２４０）　香港では高級なブランド品がたくさん出品され、またオシャレなお客様も多く、一般品とは別なクリーニング取扱いをご要望される声が多く寄せられていたため、50周年を機にスタートしました。洗浄・仕上げ・包装等も一般品とは別工程とした高品質な取扱いをするとともに、簡単なしみ抜きやほつれ・ほころびの補修は無料でいたします。日本の白洋舍の高級クリーニング仕様に準じた上質な「日本品質」の提供をお約束します。また今後、店舗でお預かりしたクリーニング品をお届けする「お届け宅配サービス」の導入や店へのご来店や自宅への集配が難しいビジネスマンニーズを踏まえた「オフィスデリバリー」も検討中です。
　これからも、お客様のご要望ご期待にお応えする、恒隆白洋舍ならではの上質な「日本品質」クリーニングを提供して参ります。

2015年2月にリニューアルオープンした中環MTR店。欧米人のお客様も多くご利用され、全32店舗中、2位の売上ランキングに、新たに開始した高級クリーニング「高級衣物護理」への期待値も高い。

PROFILE

よこみぞ　けんじ

1961年横浜市出身。日本大学卒業。1984年株式会社白洋舍入社。札幌、東京、名古屋、京都、広島など、全国各地での営業経験後、2014年1月に来港。恒隆白洋舍の董事總経理として現在に至る。

＜横溝さんを知るキーワード＞

サッカーYFCMDを応援！

学生時代はサッカー漬けだったという横溝氏。YFCMD（元横浜FC香港）に所属する福田選手の生き様に感銘したこともあり、今年オフィシャルスポンサーとして応援。3月15日のサポート試合では記念Tシャツを配布するとともに親子100名を招待し、盛り上がった。

旧正月は社員全員で新年会！

｢ホンハムのメトロポリスホテルで、社内親睦も兼ねて、『アニュアルディナー』を開催しました｣と横溝氏。従業員170名のうち、工場長と横溝氏の2名以外は全て香港人で構成するため、貴重な機会になったはず。

スキーは指導員の腕前！

入社後、毎シーズンゲレンデで腕を磨き、指導員の資格も取得。｢富士山を滑ったこともあります。スキーを通じて出会った方々との縁を大切にしています。香港ではスキーは難しいですが（笑）、中国で一緒にスキーする方を募集中です｣と横溝氏。