キーマンインタビュー

「仕事は情熱」を胸にお客様一人ひとりを迎える

香港を代表するホテル「インターコンチネンタル香港」で日本地区を担当する山口さんの、仕事に対する姿勢とその情熱を伺った。

香港流のホテルサービス

　日本のホテル業界で働いていた1996年、3カ月間の香港研修に参加したことが転機となりました。研修期間中、香港という街、そして人々に魅了され、「ここだ！」と。香港の合理的な考え方や国際都市としての懐の深さが、とても肌に合ったのだと思います。当時の日本に比べ、現地のホテルではサービスが効率よくシステム化され、チェックイン業務にしてもお客様の空港到着から逆算してアメニティの管理までスムーズに構築されていました。また、国籍や性別に関係なく人々が活躍し、個人の自由度が高い。日本とはまた違う価値観に、目が開かれる思いでした。
　香港のホテルに転職し、1998年に来港しました。インターコンチネンタルでの勤務は2004年からです。以前ゲストとしてロビーラウンジを訪れ、正面のガラス窓一面に広がるヴィクトリア湾の夕焼けを見てなんて素敵な場所だろうと強く印象に残っていました。九龍のウォーターフロントに建つこのホテルは風水を取り入れたつくりになっており、そのおかげか日々本当に気持ちよく過ごすことができます。ここで毎日仕事ができて幸せだなと、今でも感じます。

「日本担当」としての責任

　現在は日本地区担当部長として、日本マーケットを管轄する立場にあります。日本は当ホテルの国別シェアでもトップ3セグメントとして重要な位置づけにあり、月単位、週単位で求められる数字も決して楽ではありません。それでも日本チーム6名、結束も固く、コミュニケーションを密にとりターゲットに挑んでいます。
　近年はホテル予約の形態が旅行会社経由からオンラインの個人予約にシフトし、マーケティングチャネルも多様化しています。ホテル検索サイトなどでの評価やご要望なども丁寧にレビューし、MICEに代表される大型誘致を目指す一方で、効果的なタイアップやメディア露出でFIT（海外個人旅行）層にリーチできるように努めています。数年前には日中関係が冷え込み、香港への旅客数も落ち込んで苦労した時期がありました。日本から見ると香港も「中国の一部」と捉えられがちですが、香港の特異性や、ダイナミックに変化する街の魅力を伝え、リピーターとして何度でも楽しんでいただければと考えています。

ワークライフバランスと「情熱」

　しっかりと仕事に向き合うためにも、まずは健康な身体が必須！というわけで、香港へ来てから走るようになりました。職場のチームでレースに参加したのが始まりですが、おかげで他部署のスタッフとの距離も縮まり、仕事上の話もしやすくなりました。現在はフルマラソンや100キロマラソンも走りますが、オンとオフの切り替え、プライベートの充実に加え、レース経験は業務にも大いに活かされています。ひとつは「タイムマネジメント」。限られた時間内でいかに効率よくすべきことをするか。そして「結果を出す」。レースも仕事も、最終的なゴール、目標があります。その成果を得るために踏ん張る力。これはレースで走るようになりだいぶ鍛えられたと思います。
　「仕事は情熱だ」という先代の総支配人の言葉が、心に深く刻まれています。もちろん仕事ですから冷静さは必要ですが、それだけでは乗り越えられない局面があります。型通りのサービスではなく、今目の前にいらっしゃるお客様に自分はどう応えられるか。仲間のスタッフと連携してお客様に質の高いサービスを提供し、香港で愛されるホテルであり続けたいと思っています。

PROFILE

やまぐち なおこ

青森県出身。東京都内のホテルに勤務後、1998年に来港。2004年からインターコンチネンタル勤務。プライベートではドラゴンボートレースやマラソン、トレイルランに勤しむアスリートでもあり、7月には福島で行われた100キロのチャリティランに出場、完走を果たした。

職場のラン仲間たちとともに

5カ月で4本の香港100キロレースを完走！