独占禁止法の実務に対する影響(9) 執筆者 : 中国的法律講座

中国の独占禁止法における「行政権限の濫用による競争の排除、
制限」に対する規制について紹介していきましょう。

行政権限の濫用による競争の排除、制限

 独占禁止法において規制されている独占行為の最後の一つは、「行政権限の濫用による競争の排除、制限」です。中国の独占禁止法の大きな特徴は、独占禁止法の中で特別に行政権限の濫用による競争の排除、制限という章を立てている点です。国務院独占禁止委員会の授権に基づき、「行政権限の濫用による競争の排除、制限」を取り締まる権限は、国家工商行政管理総局にあります。

江口  行政権限の濫用による競争の排除、制限の主体は誰でしょうか? 独占禁止法が規制しているこの禁止行為と、これまでに見てきた独占合意や市場における支配的地位の濫用、事業者の集中とは、主体の点で何が違うのでしょうか?

 独占禁止法第51条第1項によれば、「行政機関および法律、法規により授権された公共の事務を管理する職能を有する組織が行政権限を濫用して、競争を排除し、または制限する行為を実行した場合には、上級機関が是正を命じ、直接責任を負う主管者およびその他の直接責任者に対しては、法に従い処分を与える」とされています。つまり、行政権限を濫用して競争の排除、制限をはかる主体とは、「行政機関および法律、法規により授権された公共の事務を管理する職能を有する組織」です。

「法律、法規により授権された公共の事務を管理する職能を有する組織」には、電力会社、石油会社、電信電話会社といった、法律・法規の規定により特別のライセンスを持っている会社や、自然独占となっている企業法人のほか、行政職能を持っている事業法人や経済組織も含まれます。

江口  ということはつまり、独占合意や、市場における支配的地位の濫用、事業者の集中を実施する主体は、会社法により確立された一般の企業法人や経済組織だということですね。では、行政機関および法律・法規により授権された公共の事務を管理する職能を持つ組織が、行政権限を濫用して競争を排除したり制限したりする行為を実行した場合の処罰は誰が行うのですか?

 独占禁止法第51条第1項によれば、前記の禁止行為についての処罰は、これらの機関の「上級機関が是正を命じ、直接責任を負う主管者およびその他の直接責任者に対しては法に従い処分を与える。独占禁止法執行機構は、関連の上級機関に対し法に従い処分の建議を提出することができる」とされています。つまり、行政権限を濫用し、競争を排除したり、制限したりする行為を取り締まる権限は、当該組織の上級機関にあり、独占禁止法執行機構には、このような独占行為に対する処罰権限はなく、処分の建議をすることができるだけということです。

江口  独占禁止法では、行政権限の濫用による競争の排除、制限について、どのような禁止行為を定めているのでしょうか?

  独占禁止法では、行政機関および法律、法規により授権された公共の事務を管理する職能を有する組織が、行政権限を濫用して表1の行為を行うことを禁じています。

江口  よくわかりました。次回は、この禁止された行為に関する法律の執行などの問題について検討したいと思います。



江口 拓哉 弁護士
Takuya EGUCHI

森・濱田松本法律事務所(東京)
http://www.mhmjapan.com/



Concierge上海 09年09月号掲載

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