人種差別条例と実施規範について(1) 執筆者 : 人事労務の基礎

人種差別条例と実施規範について(1)

人種差別条例(Race Discrimination Ordinance)(以下本条例と略称)が09年7月10日に
全面的に施行されました。今号と次号で本条例とその実施規範のポイントをご説明します。

施行までの動向について

本条例はすでに施行されている性的差別条例・障害者差別条例・家族状況差別条例に加えて、4つ目の差別条例となります。
本条例は立法会の審議を通過した後、08年7月18日に官報にて発表されました。香港政府は本条例を段階的に施行していく旨を発表していましたが、08年10月3日に条例の一部が施行となり、09年7月10日、本条例は全面的に施行に至りました。
また、「雇用にまつわる人種差別条例の実施規範」(以下「実施規範」と略称)も09年7月10日に施行されました。実施規範は法律ではありませんが遵守すべき規範です。実施規範を遵守することで、裁判などの場において、人種差別および人種的嫌がらせを回避するために、実施規範に記載されている合理的で実践的な対策を講じてきたことを示すことができます。

就職応募者と労働者に対する差別

本条例では応募者また労働者に対し、以下の項目において人種に関連して差別を行うことは違法とされています。【条例第10条(1)および(2)項より抜粋】
(1) 誰に雇用を提供するかを決定する際に使用者が行う取り決め
(2) 使用者が他の者を雇用するにあたっての条件
(3) 他の者への雇用の提供を拒絶または故意に怠ること
(4)使用者が労働者に与える条件
(5) 昇進・転勤・トレーニングの機会、または他のベネフィット・施設・サービスの機会を付与する方法、またはそれら機会を付与することを拒絶すること、または故意に怠ること
(6) 労働者を解雇すること、またはその他の損害を被らせること
*本条例でいう「人種」とは以下を指します。
(1)人種):race
(2)皮膚の色):colour
(3)世系):descent
(4)民族的出身):national origin
(5)種族的出身):ethnic origin

人種差別の種類

人種差別はその内容により直接的差別・間接的差別・近親者の人種を理由とした差別・人種的嫌がらせ・犠牲化・中傷による差別に大別できます。
(1)直接的差別
ある者の人種・皮膚の色・世系・民族的出身・種族的出身を理由に、他の者より不利に扱うことをいいます。
実施規範に記載の具体例: 流暢な広東語を話し中国語の名前を使っているパキスタン人(Pakistani origin)が、電話で販売員の仕事に応募し、面接に呼ばれます。しかし、容姿から彼はパキスタン人であることが判明し、彼が面接に行くと、すでに他の者が採用された旨を偽って伝えられ、面接を断られます。もしパキスタン人ではない他の応募者が断られなかったのであれば、これは人種を理由とした不利な扱いとなります。
(2)間接的差別
すべての者に同じ要求あるいは条件を適用する場合に、それが人種・皮膚の色・世系・民族的出身・種族的出身を理由にある者たちに不公平な影響を及ぼすことを言います。
実施規範では、「言語などの基準」に関連する要件あるいは条件が間接的差別の訴えにつながる可能性があると記載されています。採用要件・条件としての言語レベルの妥当性、またこれら要件・条件が必須である正当な理由が必要となります。
(次号へ続く)


牧野祥子 Sachiko MAKINO
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concierge香港 09年09月号掲載

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