ヘッジファンドはこれまで長期に渡り機関投資家を対象とした投資ツールでした。機関投資家とは通常大手銀行や生保会社などの金融グループ、年金会社や政府系ファンドなどで、最低限リスクを抑え、より元本の確保に特化した運用を好む傾向にあります。良いヘッジファンドは彼らの条件をクリアし、毎年確実なリターンを計上することが可能なので機関投資家にとって一般的な投資ツールとなっています。そのため、大手機関投資家の中には独自に専門家を雇い、よりよい投資商品を選択するためのリサーチ部門を設ける機関もあります。
ヘッジファンドマネージャーは異なるヘッジングの戦略を起用して運用を行いますが、その主流の運用手法には次のようなものがあります。
(i)ロングショート&イベントドリブン(Long short event driven)戦略:ヘッジファンド戦略の中で最も主流な手法で、大規模なファンドが用いる戦略です。企業のM&Aや新商品の発表などのイベント(事象)が発生した際に生じる株価の変動を上手く利用してロング(買い持ち)やショート(空売り)を行い利益を上げるのです。イベントには企業の収益発表、企業評価の変化、企業取締役に関するニュースや代表者の交代などが含まれます。
(ii)裁定取引/マーケットニュートラル(Arbitrage/ Market Neutral)戦略:裁定取引とは通常2つの市場において時差や投資家心理、資金の流れの違いが生む株価の差を利用して行う取引を指し、この戦略ではファンドマネージャーは裁定取引を行う機会を模索します。例えば日本のトヨタ株は東証とニューヨークに上場しているため、東証の市場Aとニューヨークの市場Bという2つの市場に存在します。同じトヨタの株であっても時差や心理的な違いがAとBの市場で株価の差を生みます。ファンドマネージャーはこのわずかな差を即座に見極め、取引に生かします。平均回帰とも呼ばれる手法です。
(iii)先物取引(Managed Futures)戦略:この戦略は通常ファンド運用会社のコンピューター化されたシステムによって行われます。コンピューターに金利の動きや、株式指数、金属、農業、外為や石油、債券などの市場のトレンドを記憶させ、ファンドマネージャーはコンピューターの指示に従い取引を行います。そのため感情の移入が少ないと考えられています。この戦略では主要なトレンドが必要となることからトレンド・トレーディング戦略とも呼ばれます。
(iv)マルチ(Multi Strategies)戦略:ファンドマネージャーが1種類以上の戦略を用いて運用を行う戦略です。
(v)グローバル・マクロ(Global Macro)戦略:金利、政変や政策の変化など商品や通貨、株価に影響を与える主要トレンドを基に金融派生商品に対するポジションを機動的に動かす戦略です。有名なファンドマネージャーのジョージ・ソロス氏は英国の経済及びマクロ環境を分析した上で92年に英ポンドを空売りするためのマクロ戦略を起用し、大きな利益を捻出しています。
以上が主要なヘッジングの戦略です。機関投資家はその年にどの戦略が有効かをまず判断します。次にその投資戦略を行うファンドマネージャーを探し出し、ファンド自体の適正評価を行うのです。この傾向から、投資戦略がヘッジファンドを分類する基準となります。個人投資家にとってヘッジファンドを理解することはより困難とされ、情報はミューチュアルファンド(投資信託)に比べ透明性が低く、適性を判断するには多くのリサーチやテクニックが必要となります。
次回はよいヘッジファンドを選ぶために注意すべき点を案内したいと思います。
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イバ・ロー
リッチランド社 ポートフォリオ・マネージャー・チーフクレディ・スイスのグループシニアマネジャーを経て01年より現職。中文大学MBA学修士、米国生命保険学会会士、香港登録インベストメントアドバイザー |
concierge香港 09年05月号掲載