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  • カテゴリ:日系企業

vol169:移転価格調査の強化



A社は日系独資企業であり、主に太陽光発電関連の部品を生産しています。原材料の仕入れ、製品販売の大部分が第三者となっており、仕入れ総額の10%前後を親会社から購入しています。A社は11年から連続して赤字となり、13年に主管税務局より移転価格調査の通知を受けました。
A社の財務担当者は調査通知に対して腑に落ちませんでした。会社が赤字に陥った主な原因は太陽光発電市場の縮小であり、業界全体の需要が激減しており、製品在庫が積み上がり、経営が悪化したことでした。A社の大部分の取引は第三社向けであり、取引は市場価格で行われていました。なぜ税務局は10%前後の親会社からの仕入れを問題にしたのでしょうか。調査対象となった理由は、単純に関連取引があり、連続して赤字となったためでした。
通常、移転価格の調査対象となる会社は以下の状況にあります。①関連取引の金額および種類が多い、②長期間赤字、利益率が低い、収益の変動が大きい、③負担する機能およびリスクに対して利益率が低い、④タックスヘイブンの関連会社との取引がある、⑤規定に従い関連取引を申告せず、移転価格文書を作成していない。A社の財務資料を分析した結果、2年間赤字であるものの、関連取引と直接関係があるとはいえず、移転価格文書を含む関連資料を税務局へ提出し、最終的には正式調査にはいたらず事なきを得ました。
中国での移転価格調査は今に始まったことではありませんが、11年より各地で税務局より移転価格の問題の指摘、移転価格文書の提出を要求されるケースが増えています。税務局は関連取引が赤字の原因となっていると疑っており、「もっぱら製造のみを担当する単一機能の会社は赤字を認めない」との規定に従い機械的に赤字会社を調査対象としてきています。
移転価格の調査が強化されている原因として以下のことが挙げられます。第一に、税務局内部では移転価格調査をより一層強化する方針です。世界的に見て移転価格の厳格な10カ国のうち、中国は07年では第8位だったものが、10年には第3位となっており、日本、インドに次ぐものとなっています。また、移転価格調査の対象となる関連取引も有形資産取引のみならず、会社持分、無形資産取引、コストシェアリング、金融取引と範囲が拡大されています。調査地域も沿岸部から内陸部へと広がりを見せています。

第二に、〝営業税の増値税への統一〞後に地方税の税収が減少しており、従来の税収額を確保するために、移転価格の強化が自然の流れとなります。国家税務局の統計によると、13年の10カ月間で営業税分が939.65億元の減収となり、通年で1200億元を越える減収になると予想されています。また、13年の移転価格での追徴金額は400億元に達すると予想されています。
税務局は移転価格資料の提出を会社に要求する場合は、通常短い期間しか与えてくれません。従って、日常的な事前準備をする必要があります。具体的には、規定および各地域の実務にもとづき判断し、調査のリスクの有無を判断し、関連取引の〝値決め〞に関する資料、契約書、インボイス等の関連資料を保管することになります。
税務局から嫌疑、調査を受けた場合は、適時対応し、積極的に協力するべきですが、必要以上に卑屈になる必要もありません。主管税務局からの問い合わせへの回答、協議中の不用意な発言は移転価格調査の結果へマイナスの影響を与えることになります。移転価格への調査対応へ万全を期するには、調査の早い段階での経験豊富な専門家の参加、協力が必要となります。

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