キーマンインタビュー

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蘇州新鋭電子工業有限公司
董事長 福島 伸一 氏 2025年10月号
確かな価値を提供する
信頼の工場
電子機器の部品づくりから組み立てまでを請け負う「EMS」として進化を続ける「蘇州新鋭電子工業有限公司」。中国拠点の董事長として、そして新鋭グループ海外拠点統括責任者として活躍する福島氏に、同社の成長戦略や人材育成の取り組みについてお話を伺った。

信頼されるEMSを目指して
「蘇州新鋭電子工業有限公司」は、神奈川県に本社を置く「株式会社新鋭産業」の中国拠点として、2002年に設立されました。祖業であるプレス品をはじめ、板金やモールド部品などを自社で生産し、それらを使った組み立てまでを一貫して行うのが特徴です。「お客様に最も信頼されるEMSになること」をビジョンとし、品質管理にとどまらず、納期短縮や各種コストの削減にも取り組んでいます。お客様に「QCD(品質・コスト・納期)」だけでなく、技術力や対応力、サービス力を提供する会社として貢献しています。
主な事業は、プレス、板金、モールド部品製造などに加え医療機器、プロジェクター、建機のオイルフィルターなどのサブアッセンブリー(中間組み立て)です。医療機器関係では血液分析装置のサブアッセンブリー、プロジェクターは光学エンジンなどの基幹部品を製造しています。各工場がひとつの敷地内にあるため迅速なフィードバックができ、特に人命に関わる医療機器関係では事業開始以来、不良品の社外流出ゼロを誇ります。
2002年にプレス工場としてスタートし、2004年にプロジェクターの完成品組み立て事業を受注し始めた頃から、板金やモールド部品の自製化も依頼され、各種部品を使った完成品の一貫生産を開始しました。設立当初は売上の85%以上をプロジェクター事業が占めていましたが、今ではレントゲンの複写機などの医療機器関係や、車載モニターのバックライトなどの車載関係、蓄電池などその他事業の部品関係がそれぞれ売上の3分の1ずつを占め、バランスの取れた事業構成となっています。
新分野への挑戦と事業拡大
当社では新規顧客の開拓や新規事業の導入を重視しています。お客様が製造拠点を移されるのは当然のことだと考えており、会社として事業の持続性を確保するため、常に新しい分野に挑戦し、新しいお客様を獲得する必要があります。
とはいえ、新規顧客の獲得や新規事業の導入は最も難しいことだと感じています。新しいお客様も既存のサプライヤーを利用されているので、そこに参入するのは容易ではありません。営業担当には、新規顧客の開拓は大変だけれども、それこそが一番大切だと伝えています。
営業は「千三つ」と言われるように、1000件訪問しても良い返事をいただけるのは3件程度です。それでも粘り強く営業し、チャンスが訪れたときに必ず掴むことが大事なのではないでしょうか。過ぎてしまえば、その機会は二度と戻ってこないからです。幸い、当社の工場を見てくださった方のほとんどが「良い工場ですね」と言ってくださり、そこから次の話に発展するケースがあるのはありがたいと感じています。ですので、まずは実際に工場を見に来ていただきたいですね。
また、最近ではITサーバーや電池関係の部品などの分野に注目しています。グループ内で掲げている目標もあるので、それに沿って新規事業を拡大できればと考えています。国同士の貿易関係にも影響されるため、なかなか難しいところもありますが、チャンスがあればぜひ挑戦していきたいです。
ほかには、自社のIT担当社員と製造関連部門との協業による業務のIT化を推進しています。倉庫管理システム(WMS)や製造実行システム(MES)などを導入し、機械の稼働率や状態、在庫状況の見える化を実現しています。工場内のデータが可視化されることで、社員からも仕事の効率が良くなったと評判なので、これからも社員がより働きやすい環境を作っていきたいです。
次世代への経験継承
私は2015年に入社して以来、会社経営と幹部社員の教育に注力してまいりました。社員教育で大切にしているのは、「自分で考える力を育てること」です。間違っても構わないので、まずは自分の頭で考えてみる姿勢を持ってほしいと思っています。
私が入社したての頃に、各部門長に理想の部門像や工場の姿を描いてもらい、半年間でどうすれば理想に近づけるかを考えてもらいました。最初の頃は思い浮かぶ発想やアイディアが限られていましたが、今では驚くほどの成長を見せており、とても頼もしく感じています。今でも半年ごとに面談を行い、これからは部長たちが同じように部下を育て、次のリーダーを選出するよう伝えています。そうして社員の成長が重なっていけば、会社全体の力が底上げされ、より良い組織になると確信しています。
当社は、グループ内でも最大規模となる約600名の社員を抱え、売上や利益の中心工場として、自動化・IT化を推進するモデル工場を目指しています。設立以来、さまざまなお客様から多様な仕事を請け負ってきましたので、今後はその経験やノウハウをグループ内で共有し、各拠点へ水平展開をしていく計画です。
これからの目標としては、引き続き新規顧客を開拓し、売上拡大と新事業の導入を推進してまいります。また、現在の工場は20年以上稼動していますので、フロアをより効率的に最大限活用できる新工場に建て替えたいです。
そうして、これまで日本人が培ってきた経験やノウハウを中国人の経営メンバーが引き継ぎ、後進を育成することで、会社がさらに繁栄していくことを願っています。

蘇州は世界遺産や太湖をはじめとする風光明媚な所が多く落ち着いた街で、治安も良く大変気に入っています。仕事だけでなく、週末にはテニス、ゴルフ、太極拳、平日には各種愛好会や県人会にも参加させていただき、多くの友人達と充実した楽しい毎日を過ごしています。

弊社を支えてくれている幹部社員との1枚です。流暢な日本語を話す人が多く、業務に関するほとんどのことを彼らで解決してくれるので、とても頼りになっています
PROFILE
プロフィールShinichi Fukushima
1954年生まれ、大阪府出身。静岡大学工学部を卒業後、1978年に「新日本電気株式会社」入社。事業計画室長や社内ベンチャー部門長、品質・生産技術本部長、執行役員兼中国子会社の董事長・総経理などを歴任。2015年にグループ会社「NECディスプレイソリューションズ株式会社」を定年退職。同年、「蘇州新鋭電子工業有限公司」の董事長・総経理に就任し、2024年より董事長を務める。


蘇州新区でテニスサークル「好球」、焼酎愛好会、太極拳サークル、神奈川を愛する会、静岡県人会などに参加させていただき、楽しい赴任生活を送っています。

エジプト出張での1枚。その後のアメリカ・ジョージア工場での5年間の駐在経験を経て、三現主義で仕事を進め、何事もオープンに協議するマインドを醸成できました。















