キーマンインタビュー

樫山(大連)有限公司
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樫山(大連)有限公司

副総経理 大導寺 健男氏 2020年8月号

変容を敏感に捉え
事業構造改革を断行
新たな飛躍を遂げるべく


市場と顧客のニーズを満たすため量産からオーダースーツへと転換


 オンワードグループの中国での取組みは、上海と香港の販売グループと、上海と大連の生産グループから形成されています。大連工場は主に百貨店メンズスーツを中心とした量産品を生産する縫製工場として1991年に大連で創立されました。もともと日本国内工場の老朽化と高コスト化に伴い、生産能力を海外で補填するための手段として大連へと進出したのです。
 私が昨年赴任した時、驚いたことが3つありました。1つ目は大連工場の生産指図書の縫製用語は全て日本語で記載されているが、それを以って通常に作業している事、2つ目は当社が90余年培ってきた服飾技術がスムーズに伝わる柔軟な対応力と高度な技術力が備わっていた事、3つ目は強い愛社精神を持っている事でした。(特に3つ目の愛社精神は、従業員の約半数が10年以上、更に四分の一の従業員が20年以上勤めております。私は大連気質と呼びますが、社内がまるで家族のように優れたコミュニケーションが取られています。そして業務に対するプライドと意欲で自信に満ち溢れているのです。)私はあらためて大連工場がオンワードグループの最重要生産拠点として唯一海外100%子会社として認定される意味が理解できました。
 2010年から、ドイツが世界に先駆けて第4次産業革命を起こしました。新たな波として多様化する顧客のニーズを反映したオーダー品を、低コストの大量生産プロセスで実現する「マス・カスタマイゼーション」のうねりが始まりました。この大きな時代の変化に当社の洋服に転用できないかと考え、昨年オーダー専用の新工場を立上げました。またカジュアルなど様々なファッションの流れも既製服からオーダーに変わり始めたトレンドにいち早く対応するため、大連でもう一つ新工場を建設し、来年9月から本生産に入る予定です。


数々の難関を乗り越え発想を転換して不可能を可能に


 オーダーメイドでも既製品と同等の価格で製品を製造するべく、元の委託生産工場からオーダースーツの工場へと転換を図るにあたって数々の難関が立ちはだかっています。今まではきちんと納期を守って生産して会社倉庫に出荷すれば良かったのですが、これからはお客様がオーダーした生地を切って、縫い上げてから一人ひとりのお客様のご自宅まで配送しなければなりません。
 2016年に、本社から「一週間で製品を個人宅に届けるように」との要望が出されました。皆が耳を疑い、そんなことは出来るはずがないと誰もが訴えました。オーダースーツの場合、日本であっても一カ月以上かかりまので、「二十日間になりませんか?」「十五日間ではどうですか」と本社に提案しましたが、全て却下されました。現在の方法と考え方ではできないが、発想を180度切り替えて、逆にどうすれば実現できるかを考えるようにしました。生産にあたってはコスト、品質、納期の順番で考えますが、発想を逆にすると、納期を最優先にし、品質は自社工場なのでコントロールできるとして、一番重要なコストを後回しにしました。とはいえ赤字では事業を継続できません。この点についても自社工場なのでコスト調整は何とか取組もう!ということで、納期を最優先としてプロジェクトを立ち上げるに至りました。
 短納期・高品質を実現するため、ⅠOT(自動化)のシステム・設備の研究と勉強も必要ということで、モノ作りの生産から、技術、販売、経理、システムまでの中枢幹部約15名でチームを作り既に開発している会社へ研修に行きました。日本の設備でないと出来ないもの、中国でしか出来ない事、ヨーロッパの技術を導入しなければならないことなどを整理し、ほぼ一年かかってⅠOTの導入を果たしました。服飾縫製として肝心なところは手作業を施し、付帯業務などは自動化やデータ連携で効率化を図ったスマート・ファクトリーの形態を取り入れました。これでついに製造時間を四日間に短縮することができました。
 また物流納期を短縮させるため、「パックランナー」設備を導入しました。製品を特殊な加工機に投入し乾燥させ、そのままの状態で圧縮しパッケージします。製品がお客様の手元で開封すると空気中の水分を吸い込んで元のスーツに復元します。これによって物流コストを低減すると同時に、納期も三日間へと大幅に短縮できました。物流の改革とIOTシステムの連携により、本社の要請である納期一週間の目標を達成することができました。中国から日本まで一週間で届けられるので、お客様のショッピング体験では抜群の評価を頂いております。


幸先はいいが、道のりが長い


 2019年4月に新工場ができ、世界各国のお客様の採寸データが大連工場へ伝送され、今までは煩雑だった仕事が、複数のIT技術を結合したロボットにより、パターン作成、生地の選択、裁断、縫製、プレス、検品、配達などの作業を正確でスピーディーに処理できるようになりました。お陰様で、大連市から「スマートファクトリー」の認定も頂きました。日系の縫製工場として初のことだそうです。
 「KASHIYAMA大連ガイドショップ」は、中国のオーダースーツ市場へ本格参入するため、市内で森ビル、成大大厦、開発区で工場内ファクトリー店の三箇所に出店しております。通常店舗とは異なる完全予約制で、プライベートな空間でゆっくりと生地選びや採寸等のスーツ作りを楽しんで頂けます。独自のイノベーションとテクノロジーで、高品質はそのままに最短 1 週間でのお届けを実現しています。
 これから更なる「KASHIYAMA」ブランドの知名度アップに向けて販売地域の拡大を計画しています。新たな新工場建築に着手し、現工場の倍の生産量の新工場が来年9に月竣工する予定です。私はここ大連がオンワードグループのオーダー事業の聖地として、更に拡大させていくという目標を掲げています。


樫山(大連)有限公司を代表して、皆様にご挨拶させて頂ます。もっとファッションを皆様にご提案して行きます。是非工場並びにショップ(森ビル・成大ビル)にお越しください、お待ちしております。



2020年7月9日大安吉日、すがすがしい天気に恵まれ、新工場の起工式が行われました。コロナ禍での開催の為、建築主・施工主はビデオ参加という形で開催でしたが、「明るいニュース」と皆様から一定の評価を頂けました。


PROFILE
だいどうじ たけお

1960年生まれ、東京都出身。東京育ちの江戸っ子。1982年、日本大学商学部を卒業。同年、樫山株式会社に入社(現株式会社オンワード樫山)。メンズ営業部・メンズ企画部・メンズ生産部を経て現在に至る。2019年5月より大連に赴任し、新工場立上げと運営、大連でのスーツ販売を担っている。


<大導寺さんをさらに知る>


60の手習い


現在日本語が堪能な社員に囲まれ何とか過ごしています。更にエンジョイ出来る生活を目指し、ただいま解決に向け60の手習い中です。いざ勉強を始めると、覚えたはずなのになかなか思い出せません。


江戸っ子の趣味


お祭りでお神輿渡御のお手伝いをすることが趣味です。5年ほど前までは担ぎ手でしたが、今は町会巡行木頭としてお手伝いさせて頂いてます。下手の横好きで古典的な江戸のおまつり参加が身に付きました。


盛り上がったリクリエーション


日帰りの社員旅行で、金州の「大聖山荘」へ行きました。羊の丸焼きがとても美味しかったです。仕事以外でのコミュニケーションを取りながら、普段は真面目なスタッフもこの時だけは羽目を外して楽しそうでした。


樫山(大連)有限公司

経済技術開発区鉄山西路9-5号
℡(0411)8761-8072

樫山(大連)有限公司

住所 辽宁省大连市经济技术开发区铁山西路9-5号 MAP
電話 0411-8761-8072

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