キーマンインタビュー

凸版印刷(香港)有限公司
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凸版印刷(香港)有限公司

代表取締役社長 脇田 誠氏

印刷テクノロジーを活用しまだ世の中にない新たな創造価値を提案する

1963年に香港へ進出し、今年で創立55年を迎える凸版印刷。代表の脇田誠氏に、香港進出の道のりや企業理念、今後の展望などを伺った。

アジア拠点の軸となる香港オフィス


 凸版印刷は、旧大蔵省印刷局に勤めていた技術者4人が独立し、印刷会社として1900年に創業した、いわばベンチャー企業。今ではグループ含め5万人が働く会社へと成長しています。
 凸版印刷(香港)は、1963年に凸版印刷グループのグローバル拠点第一号として北角に誕生しました。香港を中心とした東南アジアの印刷需要や、世界に開かれた港を持つ地理的な優位性、さらには、安定的な労働事情に事業の可能性を見出してのことです。1967年、自社ビルを鰂魚涌に建設し、全ての生産設備・生産拠点を1カ所に集約すると、事業は順調に拡大。1992年に、香港分工場として深センに2000人規模の工場を立ち上げ、欧米の書籍や日本向け製品を生産。香港においては、1995年に鰂魚涌より大規模な工場を元朗に建設、移転しました。2013年までに、香港の雑誌市場で約6割のシェアを獲得、2017年には7割近い受注まで伸ばすことができました。これは、当社の掲げる「高品質」、「高効率」、「納期保障」、「サービス」という点が、香港の方々に日本品質として評価されたからだと考えます。
 しかし、日本と同様に、香港でも近年は、雑誌や書籍の発行量が減少しています。10年後を見据えると、現状のままでは事業が難しくなると判断し、香港での自社生産印刷事業を停止することを決断しました。世界最大手の印刷会社として、自社生産を止めてしまうことに反対の声もありましたが、事業変革は一度にすべきだと考え、2017年末、断腸の思いで元朗工場の操業を停止しました。

イノベーションが生まれる場に移転

 工場閉鎖後、第二の創業地として選んだのが九龍塘のイノセンターです。イノセンターは政府系ビルで、厳しい審査を通過したアート・デザイン系の会社が約80社入居しています。この場所に新しいモノが生まれる場としての魅力を感じたこと、また、建物の構造が吹き抜けで展示スペースがあり、イベントなどができること、さらには、入居する会社とプロジェクトを組めば新たなイノベーションが生まれることを期待し、入居を決めました。
 今年の秋には、香港で著名なデザイナーとコラボし、この展示スペースで新生凸版香港のオープニングセレモニーと先端表現技術を中心とした最新テクノロジーの展示会やセミナーを計画しています。日本の伝統的な美を感じるポスター展示や学術的高精細VRも披露したい。願わくば、ビルに入居する企業に弊社の取り組みを知ってもらえ、一緒に組みたいという会社が出てくれば、そこから新たなイノベーションが生まれるのではと期待しています。 

事業変革で掲げる4つのテーマ

 事業変革で掲げている目標は、4つあります。1つ目は、香港をショーケースにして、印刷テクノロジーをベースとした取り組みをさらに拡散していくことです。例えば、日本では最先端デジタル技術によって、「富嶽三十六景」などで有名な江戸時代の絵師・葛飾北斎が86歳のときに手がけた肉筆の大作の復元を実現しています。江戸向島の牛嶋神社に奉納されたものの、関東大震災で消失し、江戸末期に撮られた一枚のモノクロ写真を手がかりに、原寸大で当時の色彩を推定復元。これによって、現代や後世に残る新しい体験価値を提供することができました。香港でも同様の取り組みを展開したい考えです。
 2つ目は、モノつくりのノウハウに商社機能を加えた「情報商社」として、高付加価値サービスを提供することです。私たちは納期を守り、綺麗なものを作り、正しく納めることに責任を感じています。これがモノつくりのノウハウです。香港は、世界各地から多くの情報が集まり、その情報を私たちも得ることができます。そして、私たちはその情報を最適なカタチに変えてお届けすることができます。例えば、ターゲットや地域特性、多言語変換や映像など、スマートフォンで表現したり、リアルなイベントにしてみたり、印刷物にすることもあります。このように「ワンソース・マルチユース」の高付加価値なサービスをご提供します。 
 3つ目として、香港のみならず、深センをはじめ中国の華南地域でも、市場拡大をしていきます。そのため、深セン・福田に、面白いものつくりをするベンチャー企業との交流を目的とした、小規模オフィスを用意しました。また、IT系大手企業との連携も模索しています。日々変化し、成長を遂げるこのエリアで、私たちも変革と成長を目指したいと思います。 
 そして最後の4つ目は、香港・中国だけでなく、タイ、ベトナムなどASEAN地域へのさらなる事業拡大も狙っていきます。
 凸版印刷(香港)は、今後も「印刷テクノロジーで、世界を変える情報商社への改革」を合言葉に、印刷事業で培った基盤をもとに、情報やモノつくり力とマーケティング力を新たな可能性へ繋げていきます。

今回の事業変革の記念として、事業変革時のメンバー20名のサインと記念写真を撮りました。10年後、20年後の社員にこれを見て歴史を振り返ってもらい、大きな変革があったことを認識し事業に活かしてもらいたいです。



PROFILE

わきた まこと

1963生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。1987年、凸版印刷株式会社に入社。営業職を17年経験後、人事労政本部へ。2008年~2012年、上海凸版広告有限公司、国際貿易有限公司総経理、凸版(上海)企業管理有限公司副総経理として駐在。帰国後、海外事業推進部部長を経て、2015年、凸版印刷(香港)有限公司副社長として来港。2018年1月より代表取締役社長に就任。2017年からは在香港日本人商工会議所ライフ・コミュニケーション部会長も担う。

<脇田さんを知るキーワード>
駐在単身生活で気づけたもの

海外駐在を機に生まれて初めての一人暮らし。日頃の何げないことも、ひとりでの生活はストレスが溜まります。香港では、休日の異業種仲間との交流が心の洗濯です。また日本へ残してきた家族の存在が、一緒に暮らしていた時以上にありがたく感じます。

通いたくなる飲茶専門店

世界一安いミシュランレストランとして人気の、深水埗や北角にある「添好運」がマイブームです。週に一度、香港人を連れて飲茶を楽しみます。香港人に囲まれ、飲茶の習慣に倣って食事をするときに、本来の人間の温かみを感じられるのがいいですね。

スターフェリーがお気に入り

スターフェリーは素の自分に戻れる場所です。下層階を選び、フェリー真ん中のエンジンルームにある、製造年数を確認。自分の生まれた63年から65年の自分の世代の製造を見ると、感慨深いものがあります。船の先頭に座るのがお気に入りです。




凸版印刷(香港)有限公司

住所 Unit 401, InnoCenter, 72 Tat Chee Ave, Kowloon Tong, KLN MAP
電話 852-2561-0101

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