キーマンインタビュー
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MOS Food Hong Kong Limited
マネージングディレクター 稲辺 貴充氏
健康でおいしい料理をハンバーガーという形で世界に届ける
今年で、香港進出11年目を迎えたモスバーガー。今回は、マネージングディレクターの稲辺氏に同社の経営理念と今後展開する予定の新業態について伺った。
直営方式で企業理念を香港で徹底
モスフードの創業者・櫻田慧は元証券マンでした。ロサンゼルスに駐在していた頃にハンバーガーに出会い、感動を与えてくれたその食文化を日本で広めたいという想いから、1972年にモスフードを創立しました。
初の海外進出は1991年で、台湾で合弁会社を設立しました。続いて翌年にシンガポールに進出。シンガポールでは、直営で展開し、現在は現地のスタッフが代表を務めています。香港では2006年、観塘のapmに第一号店をオープンしました。現在は、20店舗を展開しています。
同社は「理念を重視する企業」です。フランチャイズに関しても、モスバーガーの経営理念・基本方針を共有・共感できるパートナーと契約を結んでいます。現在、8つの国・地域でモスバーガーを展開していますが、国籍、文化、生活環境など、多くの事柄が異なる者同士、理念共有のためのコミュニケーションを大事にしています。時にビジネスの話が先行する事もありますが、「モスの理念」は決して忘れることのないようにしています。
「人間貢献」と「社会貢献」
モスフードの企業理念は「人間貢献」と「社会貢献」です。「人間貢献」とは、食事を通して人々を幸せにし、「食文化」という切口から人々の生活を豊かにするということです。そのために、飲食店として、少しでも栄養バランスを考えたもの、おいしいものを提供することです。日本では、「ハンバーガー」=「ジャンクフード」というイメージが根付いています。そのイメージを変えたいと思い、肉だけでなく野菜も取り入れたり、塩分を控えめにしたりして、おいしくかつバランスの取れた食事を提供する工夫をしています。また、アレルギー源の情報を店舗でお客様にしっかり提供できるような環境を整えています。
「社会貢献」としては、魅力ある人材の育成・社会輩出をに尽力しています。モスバーガーの店舗で教育を受けた若い世代が、将来どこに行っても一人前の人間として通用するように、モスバーガーでの仕事を通じて指導しています。当社では「次工程はお客様」という言葉を共有しています。自分の言動を受け止める相手がいる、このことを考えた行動をとれる人間になってほしい。仲間やお客様、いろんな人に支えられて我々は存在しているので、その心は決して忘れてはいけないと思います。
当社の研修の一環として、モスバーガーの経営理念を伝える「ベーシックコース」があります。香港でも、マネジャー層を対象にこのような研修を定期的に実施しています。研修では、専門のトレーナーが現任訓練と職場外での教育訓練に分けて行っています。しかし、やはり人間ですので、100名採用して研修を行っても全員がその考え方を理解してくれるとは限りません。一人でも、二人でも、理解をしてくれた人たちを大切に仕事をしていきたいと思います。その点、香港のモスフードは勤務歴の長いスタッフが多く、同志に恵まれたのだとありがたく感じる日々です。
香港の特徴を捉えた市場戦略
香港に進出した当初は、ほぼ100%日本のメニューを水平展開していました。当時香港の「ハンバーガーといえばマクドナルド」という市場で、特にボリュームを意識をして商品作りをしていました。しかし、最近は価格や単純なボリュームだけではなく、カロリーのバランスや食材の産地を意識しながら商品を作ったほうが、香港の人たちに受け入れられやすくなりました。時代とともに、香港の方々の生活スタイルも変わり、食に対する考え方も変わってきていると思います。
商品開発は、香港のマーケット状況に基づいて、味付けや食材をチェックしながら進めています。健康でおいしい料理を「ハンバーガー」という形で届けることを基本に、日本で生まれた企業として、日本の料理をベースとしたハンバーガーを作ってみたり、日本で有名な食材を香港メニューに導入したりしています。
マーケティング戦略として、今後プレスリリースに加え、ブロガー対象の試食会などにも注力していく予定です。また、来年に向けて企画しているのがアプリを使った販売促進です。今はパソコンよりスマートフォンで情報収集する時代です。モスバーガーのアプリを通じて我々の企業理念や、各種プロモーションを発信していきたいです。
また、モスバーガーの新業態として「モスカフェ」を現在3店舗展開しています。「ハンバーガー+α」の商品を用意した、カフェに近いこの業態に今後も注力していきます。日本本社とはこれから協議をしていくのですが、個人的には「プレミアムハンバーガー」を提供するお店も考えています。こだわり食材と大満足のボリューム、そしてお店のインテリアデザインにも力を入れ、来店客にステータスを感じさせるようなプレミアム感溢れるバーガーショップも可能性に満ちていると考えます。
今年9月に旺角の新しいショッピングモール「The FOREST」でモスカフェの3号店がオープン。近隣のテナントや客層も考慮に入れ、「モスカフェ」という新ブランドをアピールするに好ましい場所だと判断。
PROFILE
いなべ たかみつ
東京都出身。1996年、モスフードサービスに入社。直営店勤務の後、衛生管理を行う子会社MHSに出向。その後本社に戻り、教育部でスタッフ研修を担当。フランチャイズ部、海外事業部を経て、2014年にシンガポールへ赴任。2016年に来港し、現在はマネージングディレクターとして、香港支社の運営の監修および商品開発を担う。
<稲辺さんを知るキーワード>
週末は家族団らんタイム
週末はほぼ家族と過ごしています。息子がまだ3歳なのですが、平日は夜遅くまで仕事のことが多く、なかなかコミュニケーションが取れていません。その分週末は、サッカーや自転車を教えたり、プールで遊んだりして、家族との時間を満喫しています。
スキーは長くインストラクターをしていたぐらい好きです。しかし、シンガポール駐在以来、行けていません。息子にもスキーを教えたいのですが、まだ雪も見たことがありません。ゴルフも好きで、月一で深センや珠海にプレーしに行きます。
考え方のリニューアルは必須
海外赴任で感じたのは「考え方は変えられる」ということです。シンガポールでは自分の力を100%発揮できずもどかしい時期がありましたが、考え方を変えることで物事がスムーズに回り始めました。香港でも意識を作り直して再スタートするつもりです。
MOS Food Hong Kong Limited
住所 | Units 01-02, 10/F, K.Wah Centre, 191 Java Rd, North Point, HK MAP |
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電話 | 852-2576-6220 |
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