INTELLIGENCE SMC CONSULTING LTD.
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離職する従業員に対する各種制限について

今号では、従業員の守秘義務や競業避止義務について取り上げます。

守秘義務について


 香港では慣習法(*)上、従業員は在職中および離職後、在職中に知りえた秘密情報を公開してはならない義務があります。これは企業間の公正・健全な競争を担保する目的で規定されています。念書や契約書の締結を求めない場合であっても、実際に前雇用主に経済損失を与えた場合には、前雇用主は本人および/あるいは秘密を知ることにより利益を得た企業(転職先企業など)に対して損害賠償を求めることも可能です。

 ただし、退職後の守秘義務規定は無制限に認められるものではありません。よって、守秘義務を課す場合、「何が秘密情報か」を定義するとともに秘密情報の管理方法もポイントとなります。秘密情報と定義付ける情報には、パスワードを設定したり、特定の者のみに対しアクセス可能とするなど、情報の管理方法もあわせて見直す必要があります。
(*)慣習法:公裁判所が示した判断や法解釈などに法としての効力が認められたもの。

顧客等への接触制限について

 これは離職する従業員に対して、当該雇用主の顧客・取引先などに勧誘や接触などの行為を行うことを制限するものです。雇用契約書や就業規則に制限内容を明示している場合は、離職した従業員と転職先企業いずれに対しても差止請求権の行使や書面警告の送付といったアクションをとることが可能です。

 しかし、顧客等への接触制限の条項は、従業員の職業選択の自由を侵害するものであるため、従業員の職業選択の自由に対する不合理な制限となる場合には、公序良俗に反するものとして無効と判断される可能性があります。よって、条項を規定する場合には、対象者・期間・場所・代償の有無などについて合理的な範囲で規定する必要があります。

代理責任について

 従業員による前述の義務違反の結果、本人と転職先企業が共同して前雇用主からの損害賠償請求に対し責任を負う代理責任(vicarious liability)が発生することがあります。つまり、転職先企業は傍観者ではなく当事者になりえることを意味します。よって、新雇用主としても、新規採用者と前雇用主との間の契約内容に注意が必要です。

制限の明示について

 後々のトラブルを避けるためには、守秘義務や現顧客等への接触制限について合理性のある内容を雇用契約書や就業規則に明示しておくことが望ましいでしょう。また、念書や契約書を個別に取り交わす場合は、従業員の離職時よりは入社時に締結する方がトラブルは生じにくいといえます。

 なお、香港において合理性の立証は容易ではないため、法的な効力は限定的である一方で、禁止行為に対する一定の抑止力は期待できるでしょう。

 人材が流動化しやすいボーナス・ダブルペイ支給時期を迎える前に、いかに情報や人材の流出を防止するべきかを検討し、未然にトラブルを防ぐことが肝要です。




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