キーマンインタビュー

在香港日本国総領事館
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在香港日本国総領事館

  • エリア:中環

総領事 松田 邦紀氏

情報発信や文化交流で日本と香港のより深いパートナー関係を築く


2015年10月より在香港日本国総領事館の総領事に着任した松田氏に、日本と香港のパートナー関係を築くうえでの課題や、今後の取り組みについて伺った。


香港は日本の重要なパートナー


 10月で香港赴任1年になりました。以前、香港に対する印象は、海辺に高層ビルが林立するビクトリアハーバーの風景のみでしたが、実際に来港してみると、九龍サイドや数多くの離島もあり、とても魅力的な都市でした。香港は金融、物流、情報発信において、世界のセンター的な存在にあると思います。そして、日本の経済が発展していく上での重要なパートナーだということを改めて実感しました。
 在香港日本国総領事として、香港の重要性を日本人向けに発信するのは私の重要な役目だと心得ています。現在、約2カ月に一回日本に帰国していますが、その度に、日本のビジネスリーダーや政治家、メディアに対して香港の重要性を説明しています。依頼があれば、新聞や雑誌へエッセイを投稿することもあります。近年、香港は日本の地方でも注目されています。そういった市町村の議員やビジネスリーダーにお会いし、ぜひ香港に来てビジネスパートナーを見つけるようお願いしています。
 また、香港の政治家やビジネスリーダーが日本に訪れるときは、日本のカウンターパートやメディアに会って、「香港の重要性を説明してください」とお願いしています。このような情報発信を通して、香港の重要性をより多くの日本人に知ってもらいたいと思います。今、たくさんの香港の方々が日本に来てくれています。それは、大変ありがたいことだと考えます。今後は、観光だけでなく、特に若い世代には日本語を勉強してもらい、日本へ留学し、香港と日本の架け橋的な存在になって欲しいです。


判断は細心かつ大胆、迅速に


 日系企業が海外でビジネスをするとき、「日本人らしさ」を維持するのは大切なことだと思います。それも難しいことではなく、例えば、約束や時間を守る、お付き合いする方々に対して礼儀ただしく振舞うなど、そういうことだと考えます。これらをしっかり実行して成功している企業が多くありますので、今後も大切にしてほしいです。
 日本人は、いい意味で慎重な民族性をもっていますが、香港でビジネスをするときは、ある程度のスピード感を持って欲しいと思います。「情報収集や下準備には細心の注意を払いながら、決断は大胆且つ迅速に」、この三拍子で進めることができたら、さらにたくさんの機会に恵まれることでしょう。大切なのは、相手と自分の強みを生かしながらパートナー関係を築いていくことだと考えます。


秋は日本が香港にやって来る


 今年の10月と11月は、香港で「日本秋祭 in 香港-魅力再発見-」が開催されます。映画・芸術、スポーツ、パフォーマンス、フード&ビバレッジ、セミナー・教育など幅広い分野に触れる大型イベントを、日本と現地香港の方々が、共催する初の試みです。
 香港へ赴任したばかりの頃、政務長官の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏にお会いしました。そのときに、「香港では以前に比べ、家族で楽しめる日本関連のイベントが少なくなった。ぜひ、何かやってください」とお願いされました。最初は、「香港で、ある程度の期間、みんなで楽しめるもの」というおおまかなアイデアしかありませんでした。しかし、総領事館のスタッフや商工会議所の仲間たち、香港で出会った人々に色々相談しているうちにだんだん企画が固まってきました。暑い夏でなく、香港人が心も体も落ち着いてくる秋に祭りを開催する。日本側でも参加者を呼びかけ、香港に来てもらう。それが、「日本秋祭 in 香港-魅力再発見-」の開催に至る経緯です。
 この「秋祭」を通して、今まで香港と縁がなかった日本の地域・企業が香港に訪れ、現地でパートナーを見つけ、一緒に何かをやり遂げる。この準備の過程自体に大きな意味があると考えています。現在すでに100以上のエントリーがあり、まだまだ増えています。大変申し訳ないことに、公式サイトのアップデートが遅れ気味ですが、皆さん、ぜひチェックしてください。
 「日本秋祭 in 香港-魅力再発見-」の開催は、今年きりでは意味がありません。今後も継続して開催していくべきだと考えます。「秋になると日本が香港にやってくる」、そういう位置づけで、香港に住む方々、そして、中国本土から訪れる方々を含め、全ての人が愉快になるようなイベントにしていけたらと願っています。
 日本と香港の関係が今後さらなる発展をしていく上で、中国と日本の友好関係を深めることも重要です。難しい問題は話し合い、できることは協力するべきだと考えます。現在、日本と中国のトップリーダーの政治対話が密に行われております。このような、ポジティブなムードの中で、日本と香港の関係が今後とも、安定して発展していくことを確信し、期待しています。



在香港日本国総領事館では、査証申請者に対するサービス向上のため、近く「査証センター(仮)」での申請受理・交付を開始する予定。センターの設置によるさらに効率的なサービスを図る。


PROFILE

まつだ くにのり

1959年福井県生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。1982年に外務省入省、ロシア語を研修する。2000年に在ロシア日本国大使館参事官、08年に在イスラエル日本国大使館公使、11年に在デトロイト日本国総領事館総領事、14年に人事院公務員研修所副所長を経て、15年10月より在香港日本国総領事館総領事を務める。 


<松田さんを知るキーワード>

「得意憺然、失意泰然」


「得意憺(淡)然、失意泰然(とくいたんぜん、しついたいぜん)」は、明の朱子学者・崔銑(さいせん)が残した言葉です。意味は、「得意なときほど安らかに、失意のときにも落ち着きを」。父からいただいたこの教えを胸に日々自分の役目を尽くしています。


毎朝ピークで深呼吸を


香港に来てから、ビクトリアピークガーデンでの散歩で一日を始めるのが日課になりました。だいだい毎朝6:30~7:30の間レジデンスから徒歩15分ほどの展望台に向かいます。南の海を眺めながら深呼吸し、一日頑張れる元気をもらっています。


初めての出会いは洋画の中


香港との初めての出会いは、幼い頃母親に連れられて見た洋画『慕情( Love Is a Many-Splendored Thing)』でした。実話をもとにした恋愛物語で、香港が舞台です。ビクトリアピークやマチルダ病院などが登場する、思い出の一作です。



在香港日本国総領事館

住所 46-47/F, One Exchange Square, 8 Connaught Place, Central, HK MAP
電話 852-2522-1184