中国で成功する人事！

前回のコラムで、職場における大切な価値観として｢希望と信頼｣を取り上げました。

今回はそのうちの｢希望｣についてもう少しお話したいと思います。

私は毎日平均３件日系企業の経営層の方々とお目にかかり、お悩みを伺いますが、振り返ると最近ご相談の傾向が似てきていることを感じています。そのうち一番多いのが社員の意識改革とモチベーションの向上です。

その背景をお聞きすると、会社設立後年月が経過し社員数が増え、設立当初に採用した社員は部長クラスになったが、組織が停滞して社員の意識は高くなく、人材の現地化を進めるべきことは分かっているが現状ではとても無理なような気がする、というのが代表的なものです。

ある経営者の方は、これを研修でなんとかしたいとご相談されますが、そういう時に私は敢えて話題を変えて現状の組織表と人事制度を見せていただくことにしています。そうすることで実はいろいろなことが見えてきます。

社員の意識とモチベーションの問題は、それを社員側の立場で考えれば、職場に｢希望｣が持てないということが一要因であることが考えられます。よくそれを給与レベルの問題だけだと認識されているケースに遭遇しますが、ある調査では、中国の新卒者が就職先において重視することのうち、トップは個人の発展・成長の機会、２番目は賃金・福利、3番目は会社・業界の発展の可能性、という結果が出ています。つまり最も重視されているのは個人の発展空間だという見方もできるということです。

ではその発展空間をどう魅力的に作るか、それが企業の腕の見せどころです。

例えば組織と人事制度上、部長以上になった社員或いは管理職に不向きな社員でも専門性が秀でている場合、更に昇格、成長する機会があるか、またそういう制度が整った上で研修など能力開発の機会を提供できているか、等々手がけることはいろいろあります。しかし、それに真剣に取り組んで組織の雰囲気が少しずつ変わってきている企業のケースも実際にお見受けしています。つまり方法はあるのです。社員が｢希望｣を感じられる職場にするには、まず経営者の方々がその可能性を信じて一歩前に進み出していただくことが最も大事なのではないかと感じます。以上が私の仕事上で見てきた実体験です。これらを人事戦略や制度などにどう影響させるかは、今後のコラムでお伝えしたいと思いますので楽しみにお待ちください。