今号では人事制度についてご案内します。

　会社をとりまく環境の変化に伴い、人事制度のお問合せを頂戴しています。背景には、経済状況やマーケットなど外部環境の変化や、組織に求められる価値、役割などの内部環境の変化に、積極的かつ適切に対応していくことが求められている状況があるといえます。複雑さを増す環境に組織の強化を通して対応しながら、組織と個人の飛躍を目指していくために、今号では再度、人事制度を取り上げてまいります。

人事制度

　事制度は、企業の「価値観」「目指す方向性」「経営目的」といった本来の目的を実現するためのマネジメントツール︵手段︶として欠かせないものです。
下の図の通り、人事制度はまず適する人材の採用に始まります。その後、社内における等級制度、評価制度、賃金制度、昇進・昇格や人材開発の仕組みなど、企業は各制度を戦略的に設定・運用することにより経営目的を達成し、入社した従業員の能力開発、また、組織の活性化を図っていきます。そして不適切な人材が自己都合退社ないしは会社都合解雇で代謝していく仕組みも必要となります。
　各制度が経営目的に基づき適切に設定されていないと、優秀な人材・適する人材の採用ができない、あるいは、離職されてしまうという課題や、不適切な人材がやめていかない、社内に滞留してしまうという課題も生じかねません。
　このように人事制度はばらばらな目的で設定するのではなく、企業の経営目的の達成に向け一貫した人事ポリシーをもとに戦略的に構築し、整合性をとりながら運用することが重要だといえます。

組織の中における人事制度の位置づけ

　続いて、組織の中における人事制度の位置づけを見てみます。人事制度は組織体制や意思決定システムといった他のシステムとならぶ組織ルールの中の一つです。また、組織ルールは従業員の日常の行動・コミュニケーションや組織文化とも、相互に影響を及ぼし合っています。各システムが一人歩きしているのでは従業員への経営メッセージも不明確となり、一体感のない組織となってしまう可能性もあります。これらを意識して、今一度企業内における人事制度を含めた組織ルール全般をご確認いただきたいと思います。その際、外部環境の変化や内部労働環境を再確認すること、そして個々人のモチベーションや多様な価値観を考慮する必要があるでしょう。

人事制度はボディブロー

　人事制度は「重要だけれど緊急ではない」と考えられ、制度構築や見直しは後回しになりがちです。ただし、ボディブローのように後から組織の成長や発展に効いてきます。人事制度の構築や見直しが現時点で保留にしておいてよい課題なのか、一度じっくりと整理し、考えるだけでもその後の組織の成長や発展に有効だと考えます。
　次号では、人事制度の中でも評価や評価フィードバックに焦点をあててご案内していきたいと思います。